観光地偏る大阪、回遊促せ 嘉名光市さん
関西のミカタ 大阪市立大学大学院教授

関西タイムライン
2020/5/27 2:01
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 かな・こういち 1968年大阪府生まれ。東京工業大学大学院博士課程修了。2017年4月から大阪市立大学大学院工学研究科教授。大阪市都市景観委員会の委員長職務代理者を務め、京阪神を中心に多くの都市再生プロジェクトにも携わる。

かな・こういち 1968年大阪府生まれ。東京工業大学大学院博士課程修了。2017年4月から大阪市立大学大学院工学研究科教授。大阪市都市景観委員会の委員長職務代理者を務め、京阪神を中心に多くの都市再生プロジェクトにも携わる。

■新型コロナウイルスの影響で大阪からインバウンド(訪日外国人)の姿が消えた。大阪市都市景観委員会の委員長職務代理者、大阪市立大学大学院の嘉名光市教授(52)はいずれ観光客が戻ってくることを想定し、歩いて楽しめる街づくりを提案する。

特に感染拡大前の道頓堀や新世界では、観光スポットが特定の場所に集中しており、街の中を人が巡る回遊性が乏しいことが課題だった。外国人観光客が増えてにぎわっていたものの、逆に人が多すぎて「歩いていて楽しい」という状況からは程遠い。

大阪とニューヨーク、ロンドンの3都市を対象に、SNS(交流サイト)に投稿される写真を比較しても明白だ。ロンドンの場合、テムズ川沿いのロンドン・アイを例にとっても、遠近様々な位置から撮影した写真が投稿されている。巡っておもしろいと感じる街の構造になっている。一方で、大阪は特定の観光スポットの特定の位置からの投稿が多く広がりに欠ける。

ミナミなど中心部の観光スポットだけを回ってもらっても大阪のリピーターにはなってもらえない。「また来たい」と思ってもらえるような都市の編集をしなければならない。府内には百舌鳥・古市古墳群など歴史的文化遺産もたくさんあり、観光客を広域にうまく誘導できるような仕掛けが大事だ。

■ウイルスとの共存を前提に、2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)で「感染症への備えと街の魅力」を両立させるモデルを示すべきと話す。

都市計画という分野は、もともと人の命を守るというところが原点だ。大地震など災害への対処から公衆衛生や日照などテーマは多岐にわたる。都市の衛生環境はおおむね完成したという認識で、パンデミック(世界的な大流行)への備えが十分でなかった点は否めない。

これからは新たな都市のあり方を構想する必要がある。ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の確保など感染症への備えに対処しながら、人が訪れたい、住みたいと思う魅力的な都市を実現することは不可能ではない。そのためには、ビッグデータに基づいた人の動きをうまくコントロールする技術や集客を制御するマネジメントが重要になる。そのモデルとなるように、万博会場の夢洲やJR大阪駅北側の再開発エリア「うめきた2期」などの街づくりを進めていく必要がある。

■万博の成果をレガシー(遺産)としつつ、都市間競争で存在感を発揮していくには万博後の歩みが重要になる。

夢洲は環境との共生や、国際会議や見本市といった「MICE」を誘致できるインフラの整備などを先端技術を駆使して進め、人々が訪れたいと思う世界最先端の都市モデルの一角を担うべきだ。大阪は様々なことをおもしろがる人が生き生きと暮らす街を目指して、ポスト万博期の街の絵姿を考えておきたい。今から万博後の10年間を見据えたロードマップをしっかりと考えなければならない。スペイン・バルセロナや豪メルボルンなど世界の都市を見ると、政治の中心や首都でなくても住みやすい街は産業がさらに発達してきている。大阪はライフサイエンスや創薬など強みとなる産業は既にあるが、2番手、3番手と続く産業が成長することが重要だ。

研究室の学生らと大阪の街を歩く嘉名教授(右端)=同教授提供

研究室の学生らと大阪の街を歩く嘉名教授(右端)=同教授提供

かつての工場等制限法による規制で大きな面積が必要な大学キャンパスは郊外に造らなければならなかった。大阪市内に大学が少なくなり学生が住みやすさを実感することなく、東京に就職する若者が多くなった。京都では人口の10%が大学生で、住んでみてその街の良さを知って定住する人が多い。大阪に定住したいと思える若者を増やすため、市中心部の大学キャンパスを増やすべきだ。(聞き手は丸山景子)

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