空き家にかかる意外な費用 公共料金も保険も必要
空き家とお金(上)

不動産
2020/5/28 2:00
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夜、夕食を終えた筧家のリビングで携帯電話が鳴りました。どうやら良男の会社の同僚からのようです。電話で話を終えた良男に恵が「何かあったの?」と話しかけます。「困りごとの相談を受けたんだけど、お母さんの知恵が必要そうだ」と良男が答えます。

筧(かけい)家の家族構成
筧幸子(48)良男の妻。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。
筧良男(52)機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。
筧恵(25)娘。旅行会社に勤める社会人3年目。
筧満(15)息子。投資を勉強しながらジュニアNISAで運用中。

 何の相談だったの?

良男 親から相続した空き家で困っているそうなんだ。普段なら会社で聞かれるけれど、今は新型コロナウイルスの影響であまり顔を合わさないから、電話で恐縮してたよ。

 空き家はさすがのママも専門外じゃないの。

幸子 最近、関連する相談が増えたから勉強しているわ。今、空き家は全国で増加しているの。国の調査では2018年10月1日時点で約849万戸あって、住宅全体の7戸に1戸に当たる計算になるわ。

 そんなにあるんだ。パパ、相談はどんな内容だったの?

良男 新型コロナの感染が広がり空き家へ出向くことが難しくなってきて、管理が不安になったと言うんだ。今後どんなお金が必要かも心配していたな。

幸子 確かに空き家を抱えると手間はもちろん、お金もかかるのが悩ましいわね。

 空き家にお金がかかる?

幸子 例えば、空き家にも固定資産税などはかかり続けるし、光熱費や水道代、火災保険料も考えないといけないわね。

良男 税はわかるが、空き家に電気や水道は要らないだろう。

幸子 電気も水道も止めてしまうと、空き家を片付けたり、掃除したりするのが難しくなるわ。真っ暗だし、トイレも使えないのよ。

 なるほど。でも保険は?

幸子 空き家は放火被害に遭うことが多いの。その場合、後片付けにお金がかかるわ。特に燃え残った物の処分や解体の費用は高額な例も多いの。無保険だと、それを全額自己負担しなければならないわ。ただ、空き家は住んでいる家より火災保険料が高くなるのが普通なので、可能なら建物の補償額を低めに抑えるといった工夫も考えたいわね。

良男 同僚に教えるよ。ほかにも必要経費はあるのかい?

幸子 庭付きの戸建て住宅なら植木の剪定(せんてい)費用などが必要ね。植木を放置して近所から苦情が来ることは多いそうよ。マンションなら管理費や修繕積立金は払い続けることになるわ。もし払わないと適切な管理や修繕が難しくなり、長い目で見れば資産価値が下がることにつながるわ。最悪の場合、そのマンションの管理組合から支払いを求める訴訟を起こされるリスクもあるの。

良男 遠くて頻繁に行けないときもありそうだが。

幸子 もし自分で管理に行けないなら、管理会社などにお金を払って委託することになるわ。費用は建物の種類や管理内容でバラバラだけど、月5000~1万円程度のケースが多いようだわ。

 空き家にそんなにお金をかけるのはつらいわね。

幸子 でも、放置は絶対にダメよ。近所や地域に迷惑をかけるし、そうした苦情が地方自治体に寄せられれば最悪の場合、状態の悪い「特定空き家」に指定されるわ。15年に全面施行された法律で決められたルールよ。この指定の後、一定の手続きを経ると、固定資産税などが数倍になってしまう恐れもあるわ。住宅用地に用意されている税を軽減する特例が適用されなくなるからよ。

良男 結局、同僚にはどう助言したらいいかなぁ。

幸子 まず、その空き家に今後、自分か家族が住む可能性があるか話し合ってみることね。もし、誰か移り住む予定があるなら、それまでの間はしっかりと管理すること。お金はかかるけど、移住までとゴールが見えれば取り組みやすいはずよ。

 移住予定がないときは?

幸子 できるだけ早く処分することね。売却のほか、他人に貸す手段もあるわ。ただ、賃貸の場合は固定資産税などに加え、建物の修繕費用などの負担は続くし、空室リスクもあるわ。ある程度、高い賃料が入らないと、コスト倒れになりかねないわ。地域差もあるけれど、月10万円以上の賃料が見込めるかが賃貸を考えられる1つの目安ね。

良男 売却時に注意するのは税金かな?

幸子 確かに譲渡所得への課税はあり得るけど、一定条件を満たす戸建ての空き家なら譲渡所得から最高3000万円の特別控除が現在はあるわ。むしろ注意したいのは、簡単には売れない場合よ。立地が良くない空き家は買い手がなかなか見つからないらしいわ。

 そんな時はどうするの?

幸子 家の解体費用を所有者が払って更地にしたうえで、近所の人に駐車場などとして無償譲渡するのが最後の手段だと聞いたわ。その意味でも空き家はしっかり管理し、近隣の家から迷惑がられないことが大切ね。近所と関係がこじれると、本当に引き取る人がいなくなってしまうわ。今、国が土地の所有権放棄を認める新しい制度の検討を始めているのだけど、まだ確かな実現時期は見えていないし、放棄を認める要件も今のところ厳しくなる可能性が高いわ。安易な放棄を認めてしまうと、引き受ける国の負担が大きくなってしまうからよ。まずは自力で処分できないか、早めに検討を始める方が現実的ね。

■近所との信頼関係、大切に
NPO法人空家・空地管理センター代表理事 上田真一さん
 新型コロナの感染が続くなか、空き家管理のために外出していいのかは悩みどころです。私たちも管理を受託していますが、管理員のリスク抑制のため「公共交通を利用しない」「人と接触がない」などの要件を満たすか点検しています。所有者自身が管理する場合も徒歩やマイカーで行け、他人と会わずに済む場合以外は、空き家に出向くべきか慎重に検討した方がいいと考えます。
 非常時こそ大切なのが、近隣住民との関係です。連絡先がわかる人がいて電話などで事情が説明できれば、何か異変があった時は連絡をもらえる可能性がありますし、少なくとも関係がこじれるのを防げます。空き家を所有したらまず近所へあいさつに行くのが原則です。コロナの影響が残るうちは難しいですが、事態収束後は是非検討して下さい。

(聞き手は堀大介)

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