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一流馬が続々と国内G1出走 コロナ禍で海外遠征難しく

2020/5/30 3:00
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国内の競馬は5月31日の日本ダービーで1つの区切りを迎える。6月からは来年のクラシックに向けた2歳戦も幕を開けるが、当面の注目は6月7日の安田記念に登場するアーモンドアイである。5月17日にヴィクトリアマイル(G1・芝1600メートル)を圧勝し、国内外7つ目のG1を制覇。安田記念で勝つと、史上初の「芝G1で8勝」となる。また、中央のG1勝利数も7となり、シンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクト、ウオッカ、キタサンブラックの歴代級名馬に並ぶ。

ヴィクトリアマイルで優勝し、ガッツポーズするアーモンドアイ騎乗のクリストフ・ルメール=共同

ヴィクトリアマイルで優勝し、ガッツポーズするアーモンドアイ騎乗のクリストフ・ルメール=共同

記録以外で目を引く点は、アーモンドアイが3週のレース間隔で臨むことだ。同馬は5歳だがまだキャリア12戦。過去、最も短かった例は3歳時の桜花賞からオークス、秋華賞からジャパンカップで、各6週の間隔で出走した。「一戦の消耗が激しい」と言われた馬が"強行軍"で臨む背景には、コロナ禍が影を落としている。

連戦前提、あえて軽い舞台選んだか?

アーモンドアイは今春、3月末のドバイ・ターフ(G1)連覇に向けて、早々に現地入りした。だが、コロナ禍の影響で6日前に中止となり、無駄足となった。空港閉鎖の動きの中、辛うじて便を確保して帰国したのが3月29日。実戦抜きだったためにダメージは軽く、馬主のシルクレーシングは帰国1-2週で、「ヴィクトリアマイルに使えそう」(米本昌史代表)との感触を得た。

昨年はドバイ・ターフ優勝後に安田記念に進んだ。思わぬスタート後の不利で3着に敗れたが、コース適性や相手関係から、納得の行く選択だった。今年のヴィクトリアマイルも安田記念と同じ東京芝1600メートル。適性は十分で、むしろスーパースターの牝馬限定G1参戦に違和感を覚えたほど。実際、日本中央競馬会(JRA)が事前に発表したレーティングで同馬は124。2位のラヴズオンリーユーと10ポンドの大差だった。実戦も数字通りで、好スタートからスムーズに好位置を進み、直線は馬が勝手に先頭に立つ風情。クリストフ・ルメール騎手は直線で抜け出した後、集中力を保つために軽く肩を押しただけで、2位のサウンドキアラに4馬身差をつけた。

陣営はなぜ楽な舞台を選んだか?

あくまでも想像だが、(1)昨年末以来の悪い雰囲気を払拭する(2)楽に勝ち、安田記念で連勝を狙う――の2つだったと思われる。昨年暮れ、参戦予定の香港カップを、直前の発熱で回避して以来、不運が続いた。急きょ、矛先を向けた有馬記念は外寄りの9番枠もあって前半でスタミナをロス。初めて9着と惨敗を喫した。そしてドバイへの「無駄足」。流れを変える1勝が欲しかったはずだ。「連戦」に関しては、陣営の思惑と、国内競走体系のズレがのぞく。

ヴィクトリアマイルのアーモンドアイ(左端)は2位以下に4馬身以上の差をつけた=共同

ヴィクトリアマイルのアーモンドアイ(左端)は2位以下に4馬身以上の差をつけた=共同

賞金は海外に見劣りする国内G1

ドバイ・ターフの1着賞金は360万ドル(約3億8700万円)。国内最高の有馬記念やジャパンカップでも3億円だから、痛い中止だった。上半期にヴィクトリアマイル(1着1億500万円)を含めて2戦を消化する場合、6月は安田記念(同1億3000万円)か宝塚記念(同1億5000万円)が選択肢となるが、後者は暑い時期の調整の難しさや馬場悪化の懸念を伴う。少々、日程がきつくても安田記念の方が戦いやすいという判断は理解できる。前提はヴィクトリアマイルを楽勝することだったが、この点はクリアした。3歳時はレース後に何度か熱中症のような状態に陥ったが、今回は戻った後も元気いっぱい。「全然楽だった。馬がしっかりしたかな」と国枝栄調教師を喜ばせた。ただ、連勝でも2億3500万円である。

今回の安田記念は、ドバイや香港を断念した馬が目立つ。登録17頭中G1勝ち馬が11頭を数えるが、4頭はドバイ「無駄足」組。1600メートルG1を3勝したアドマイヤマーズもいる。昨年のJRA賞最優秀短距離馬インディチャンプは4月26日に香港のチャンピオンズマイルを走るはずだった。また、奇跡的に開催されたオーストラリアG1、クイーンエリザベスステークス(4月11日、芝1600メートル)で3着に敗れたダノンプレミアムは、帰国初戦となる。

この顔ぶれでも、勝つのは1頭である。安田記念に生産馬6頭が参戦するノーザンファーム(NF)や、関係の深い馬主にすれば、「分散すればもっと稼げる」と考えるのは当然だ。実際、大阪杯(1着1億3500万円)は今やドバイの「裏番組」。今年もフルゲート16頭に対して12頭立てで、ドバイの2競走に登録しながら遠征を見送ったラッキーライラックが、3つ目のG1勝利をあげた。近年はドバイだけでなく香港も主要G1の1着賞金がJRAの「標準G1」を上回る。JRAの3歳以上の21のG1は全て1着1億円以上だが、競走体系の中核である春秋の天皇賞や宝塚記念は、1億5000万円。芝の1600メートル以下は1億3000万円で、牝馬限定は1億500万円。突出して高いレースがない。

第64回大阪杯を制したラッキーライラック(手前)=共同

第64回大阪杯を制したラッキーライラック(手前)=共同

国内レースの質は上がる

見る分には面白いが、馬を送り出す側には「労多くして報い少ない」状況は、コロナ禍で海外遠征がままならない間は続くことになる。NFの吉田勝己代表は「いずれは行くけれど、今のところはだめだろう」と話す。日本馬の参戦が多い海外G1は、春のドバイと香港の後はしばらくない。関係者としては、この間に感染問題が沈静化してくれれば、という思いだろう。ただ、気になる点もある。帯同者のPCR検査である。既に中国は韓国のビジネス関係者に対し、入国3日前以降にPCR検査で陰性判定を受けた場合、一部地域に2週の入国後隔離抜きでの入国を認めた。今後、競馬を含めたスポーツ界でも、交流を再開する場合、こうした措置が取られる可能性は高い。だが、症状の出た人でさえなかなか検査を受けられず、診断まで数日かかる日本の現状を見ると、秋以降の交流再開も不安な状況と言わざるを得ない。

昨年、日本調教馬は海外G1を8勝。年間最多を記録したが、勝ったレースの質は玉石混交で、賞金が高い割にメンバーが手薄な例もあった。この先、海外で「G1馬」の看板に手が届いた馬の真価が、国内戦で問われる場面もありそうだ。予想だにしない形で、日本の競馬の質の高さ、厳しさが証明されていくのかもしれない。

(野元賢一)

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