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CASEだけでは生き残れない 自動車産業のコロナ後

アクセンチュアに聞く(上)

日経クロステック

新型コロナウイルスの感染拡大が自動車メーカーの業績に大打撃を与えている。苦しい状況の中、各社は「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」への開発投資を継続している。その「本気度」がコロナ収束後の競争力を左右すると考えているからだ。ところが、製造業の事業変革に詳しいコンサルティング大手のアクセンチュアの太田陽介マネジング・ディレクターは「CASEだけでは競争に勝てない」と指摘する。太田氏にコロナ後の自動車産業について聞いた。

アクセンチュアの太田陽介マネジング・ディレクター(出所:アクセンチュア)

自動車メーカーが都市を再デザイン

──自動車メーカー各社は引き続きCASEに注力していくようだ。

「競争力の確保のためにCASEは重要だ。だが今後、技術開発がCASEだけでとどまっているような自動車メーカーは、熾烈(しれつ)な競争下で打つ手がなくなるだろう」

「アフターコロナの世界でみえてくるのは、人がどのように街で暮らすべきか。すなわち、都市の再デザインだ。そうなると、CASEは都市を構成する技術のほんの一部でしかなく、単体ではビジネスが成り立たない」

「新型コロナウイルス感染症流行は、都市への一極集中という人間の動態シナリオを抜本的に変える。人口の過半数が都市に住むことの危険性を認識させ、従来型の都市デザインの弱さを浮き彫りにした」

「『このままの都市づくりではまずい』という意見が多数出てくることは当然だ。ソーシャルディスタンス(社会的距離)を厳守しつつ、モビリティーによる移動をうまく制御しながら暮らすことになる。アフターコロナの移動を担うつもりなら、自動車メーカーこそ都市デザインに向かうべきだ」

──トヨタ自動車がまさに都市デザインに乗り出している。

「実際、その動きはある。国内の自動車メーカーでいえば、トヨタは相当有利なポジションにいる。静岡県裾野市に『Woven City(ウーブン・シティ)』と名付けた(あらゆるモノやサービスがつながる実証都市)コネクテッドシティーを建設し、まさにアフターコロナの世界観をつくり出そうとしている」

「ただ、コンセプトだけで万事うまくいくものではなく、都市デザインには莫大な資金が必要だ。そのための資本提携を進め、『大同団結』という形で各社協力のエコシステム(生態系)を形成しようと、トヨタ社長の豊田章男氏が明確に宣言した」

「都市の再デザインを実現しようと意気込むトヨタと、CASEという世界観の中で単独で動いている企業とでは競争の次元が違い過ぎる。大多数の自動車メーカーは、どうしても車両の製造販売が軸の事業態勢になっている。確かに、一歩進んだ技術トレンドとしてCASEがあるが、やはり自動車という枠組みの中でユースケースをつくろうとする」

「トヨタのように、自動車メーカーが街づくりを担うという発想を持たないと勝負にならない。提携先も、自動車にまつわる企業だけではなく、街づくりを得意とする建設企業と組むなど、これまでとは異なる発想や業界を取り込んだ議論を進めるべきだ」

業界再編、新たな動き

──アフターコロナに向けて業界再編が加速しそうだ。

「業界再編というキーワードはこれまでも自動車産業にあった。だが、アフターコロナの世界では再編という言葉のニュアンスが変化していく。部品メーカーやサービス企業といった自動車産業を構成する企業間のグループ再編ではなく、もっと広い範囲で、全く別の産業との関わりが強くなるはずだ」

「現段階では、自動車をはじめ航空などの移動系産業に対しては、新型コロナウイルス感染症の影響が特に大きい。アフターコロナの世界では、グローバルの人の流れが以前の状態に戻るとは限らない。恐らく活発さは失われる。そのため、これまで全く縁のなかったテクノロジー企業が、業績が低迷した航空業界の企業をM&A(合併・買収)の対象にするなど、新たな動きが出てきそうだ」

「移動系の産業以外では、建設業界の動きに注目したい。新型コロナ騒動の収束後、各国は公共投資を増大させて雇用を下支えするはずだ。需要が蒸発する可能性がある移動系の産業に比べて、業績への影響は抑えられる。その分、新たな事業へのチャレンジも早い段階で可能だ」

「各企業とも、今はとにかくコスト構造をスリム化して耐えることが優先だろう。では、いつまで耐えればよいのか。アフターコロナの世界がいつ来るかは現時点では不透明だ。当社の顧客である企業の経営層とも議論を交わしているが、明確な答えは出ていない」

中国離れ対応も必須に

──世界で製造業が停滞する中、中国はいち早くアフターコロナに向かおうとしている。

「中国では早い段階で工場生産が再開したが、他国の製造業の中国離れは進む方向だろう。中国のカントリーリスクというのは、これまでも頻繁に議論されてきたが、新型コロナの一件でさらに明確になったように思う」

「何かリスクが発生したとき、中国は政府の判断で全てが決まる。その過程がどのようなものか、外部からは見通せないのがこの国の特徴だ。考え方はシンプル。中国に頼り過ぎては危険だという意識が高まり、『リ・グローバライゼーション(反グローバル化)』の流れが加速する」

「ただ、単に中国から離れればよいというものではない。製造業が考えるべきは、『冗長化』というキーワードだ」

「部品はできる限り多くの国から調達できる態勢を整えておく。そしていざとなったら、日本のマザー工場で『鍵』となる部品を代替生産し、サプライチェーンが分断した地域に送り込む。今、製造業に必要なのは、マザー工場の能力を再強化するための投資である」(下につづく)

太田陽介(おおた・ようすけ)
慶応義塾大学卒業後、2000年にアクセンチュア入社。テクノロジー部門を経て11年より戦略部門に異動。製造業やハイテク産業、国内外のサプライチェーンにおける企画・設計を歴任。現在、同社ビジネスコンサルティング本部サプライチェーン&オペレーションプラクティス日本統括マネジング・ディレクター

(聞き手は日経クロステック 窪野薫)

[日経クロステック 2020年5月22日掲載]

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