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「神戸牛」という品種は無い? 兵庫県産、肉質厳しく検査

とことん調査隊

日本3大和牛のひとつと言われる「神戸牛」。神戸観光に来たなら一度は食べてみたいと思う最高級品質の牛肉だ。人気の高さ故に「神戸牛」と称した他の産地の肉も出回っているという。食べるなら本物を食べたい。その名の通り神戸市内で育った牛を指すのだろうか。どこで、どのように育った牛なのか調べてみた。

黒い毛並みの牛たちが昼寝をしたり、エサを食べたり――。神戸市内の人里離れた山あいにある「中西牧場」は、約180頭の但馬牛を飼育する。年間に出荷する70~80頭のほとんどが神戸牛に認定される。牧場を経営する中西仁さん(39)は約20年にわたって神戸牛を育てている。「霜が細かく、食べても胃もたれしにくい」と話す。

ただ、近親交配が多く体が弱い。そのため生後10カ月から牧場で飼育を始め、3~4カ月間は毎日体温を測る。牛が風邪をひいても余計な薬を与えないよう、ささいな体調の変化を見逃さない。

神戸牛は、兵庫県内で生まれ育った但馬牛のなかでも、一定の基準を満たした牛が認定される。その起源は古く約1200年前には北部の但馬地方で農耕などの労役に使う牛として飼われていた。

「神戸肉流通推進協議会」に指定登録する肥育生産者は2019年7月時点で349人。県内の農業協同組合(JA)でみると、但馬地域のJAたじまが最も多く、神戸市などのJA兵庫六甲、姫路市などのJA兵庫西が続く。

兵庫では他にも「淡路牛」など産地を冠した和牛が有名だ。こうした地域では、食肉センターの格付けなどで「神戸牛」か、それ以外に分けられる。神戸牛は神戸以外でも広く飼育されるのに、なぜ「神戸」の名称がついたのだろうか。

名前の由来は諸説ある。畜産の歴史を紹介する書籍『新但馬牛物語』によると、日米修好通商条約を締結した1858年以降、外国人が貿易港を開いた横浜で、神戸から輸送された但馬牛を食べたことがきっかけという。おいしさが評判になり「KOBE BEEF」の名が海外に広まった。国内でも「神戸牛」として親しまれるようになった。神戸牛という品種は存在せず、和牛のブランドだ。

明治以降、但馬牛の遺伝子が良質な血統であることが分かり、改良が進んだ。協議会の谷元哲則事務局長は「農耕用としても肉用牛としても優れており、他の遺伝子を交配させる必要がなかった」と話す。滋賀県の「近江牛」や三重県の「松阪牛」のなかには、但馬牛がもとになっている牛もいる。育った地域の気候やエサで味に違いが出る。

なかでも神戸牛の認定基準は「日本で最も厳しい」(谷元氏)。兵庫県で生まれ育った但馬牛のうち、生後28カ月から60カ月以下の出産経験のない雌牛か去勢された雄牛が対象だ。霜降りの度合いや肉質の細かさ、枝肉重量などを厳しく審査し、合格した牛肉が神戸牛として認定される。

近年、但馬牛の改良が進み、神戸牛に認定される割合が上昇している。18年度の神戸牛の生産量は5383頭と、08年度の1.8倍に増えた。但馬牛は微増にとどまり、認定率は約80%になった。

協議会には生産者のほか、神戸牛を取り扱う飲食店なども加盟する。協議会が1頭ごとに発行した「神戸肉之証」により、飲食店や小売店で提示されている個体識別番号から生産履歴や血統情報を確認できる。「会員以外でも食肉市場で購買できるので名乗れないものではないが、神戸肉之証がないと神戸牛として証明できない」(谷元氏)

神戸牛は日本でと畜された牛肉(頭数ベース)のわずか0.5%(18年度)と希少だ。兵庫の生産者の手で日本古来の牛の血統に改良を加え、守り継いできた伝統ある牛だった。

(丸山景子)

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