高リスク資産、世界で900兆円 IMF「コロナで損失」

経済
2020/5/22 21:00
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【ワシントン=河浪武史】国際通貨基金(IMF)は22日公表した国際金融安定性報告書(GFSR)で、低格付け債など世界の高リスク資産が9兆ドル(約960兆円)に達したと分析した。金融危機後の10年で倍増した。投資家は当局の監視が緩い資産運用業者が多く、損失への備えが不十分だ。新型コロナウイルスによる収益悪化が長引けば金融システム全体へのリスクも大きくなる。

IMFは半期ごとにまとめるGFSRで「新型コロナによって金融システムは劇的な影響を受けている」と強い警戒感を示した。とりわけ不安視したのは、低格付け債など高リスク資産の損失リスクだ。

2019年末時点の世界市場を分析したところ、レバレッジド・ローンという信用力の低い企業への融資は残高が5兆ドル強に及んだ。低格付け債も2.5兆ドル、私募債も1兆ドル弱あった。残高は08年の金融危機後に急増し、10年間でほぼ倍増した。日米欧など主要国の低金利政策が長引き、利回りの高い低格付け商品に投資マネーが集中したためだ。

ただ、新型コロナの影響で「レバレッジド・ローンの価格は急落し、下落幅は一時、金融危機時の下落幅の半分に達した」(IMF)。高リスクの金融資産は先進国に6.6兆ドルあるが、金融規制で守られた銀行部門が保有するのは1.9兆ドルにすぎない。残りは投資信託や年金基金で、高リスク債権とまとめたCLO(ローン担保証券)を通じた資金も8000億ドル強あるという。

CLOは金融危機時の「サブプライム・ローン」と似て商品の見極めが難しく、価格下落リスクに弱い。投融資先の企業が債務不履行に陥れば「クレジット市場は急停止する可能性がある」(IMF)。米連邦準備理事会(FRB)は社債を買い入れる緊急措置を発動したが、新型コロナで投資不適格級になった「堕天使債」も購入対象に加えた。今や高リスク資産が「大きすぎてつぶせない」状況となり、異例の救済策が必要になった。

日米欧など主要国の民間銀行は、金融危機後の規制強化で自己資本を積み上げてきた。ただIMFの試算では、新型コロナの危機で収益が悪化し、世界の大手銀行の5割は20年の自己資本利益率(ROE)が4%を切る。同4%を切る大手銀行は、18年時点で全体の1割にも満たなかった。

さらにコロナ禍が長引けば、5年後の25年には先進国の多くの銀行が「資本コストを上回る利益を上げられなくなる」という。足元の危機と1930年代の世界大恐慌の最大の違いは、金融システムへの影響が当時に比べて小さいことだ。銀行経営に不安が出れば、マネーまで滞って経済危機は深刻になりかねない。

同報告書をまとめたIMFのトビアス・エイドリアン金融資本市場局長は、日本経済新聞の取材に対して「足元では市場の不安が和らいでいる。主要国が8兆ドルもの財政出動に踏み切り、中銀も巨額の資金供給を続けているからだ」と述べた。ただ、政府や中銀の資金支援は「すべての企業に適用されるわけではない。債務不履行が増えるのはこれからで、金融システムの脅威となりかねない」と強い警戒感を示した。

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