中国、香港統制強化 財政出動拡大も、全人代で方針

【北京=原田逸策】中国の年に1度の重要会議、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が22日始まった。若者らのデモが続く香港の統制強化へ向けて香港国家安全法の整備を進める。中国への返還後も言論やデモの自由が保障されてきた香港にとって大きな転換点となる可能性がある。44年ぶり歳入減のなかでも経済下支えとして財政出動を前年より計3兆6千億元(約54兆円)拡大する。
全人代は例年3月5日に開幕するが、新型コロナで延期していた。李克強(リー・クォーチャン)首相が所信表明にあたる政府活動報告をした。報告は例年の半分の約1万字と78年の改革開放後で最も短かった。
昨夏からつづくデモを抑え込むため、香港国家安全法を制定する方針を示した。香港の民主派らは強く反発しており、大規模なデモなどが再燃する可能性が高まる。
注目された20年の国内総生産(GDP)の実質成長率の数値目標は設定しなかった。かつて計画経済だった中国で成長率目標の見送りは極めて異例。新型コロナが世界で広がり、経済の先行きが見通せないためだ。
新型コロナウイルスの経済対策で財政はGDP比の赤字率を19年の2.8%から20年は「3.6%以上」に高めた。さらに地方政府のインフラ債券(専項債)を3兆7500億元、13年ぶりに特別国債を1兆元発行する。国・地方の債券発行額は計8兆5千億元となる。
歳出が膨らむ一方、歳入は前年実績比5%減の18兆元を見込む。前年割れは文化大革命の時以来だ。経済減速にくわえ、新たに5千億元規模の減税、手数料削減が響く。健全性を誇ってきた中国財政の転換点になる。
李氏は「雇用安定と国民生活の維持を優先する」と述べ、雇用対策に全力を挙げる方針を示した。失業率の目標は6%前後と19年より0.5%高く、新規雇用の目標は900万人と13年以来7年ぶりの低水準だった。

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