自動ブレーキ作動せず事故 責任はだれに?

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2020/5/24 2:00
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事故原因はドライバーの居眠りか自動ブレーキの故障か――。自動運転機能がある車が絡んだ死亡事故を巡り、こうした点が争われた裁判が3月、横浜地裁であった。高度な自動運転が普及すれば、車のシステムと、ドライバーの操作のどちらに事故原因があるかを争う裁判が増える可能性がある。今回はドライバーに有罪判決が出ている。

神奈川県綾瀬市の東名高速。渋滞の中を米テスラの多目的スポーツ車(SUV)がゆっくり走行していた。車間距離や速度の調整、衝撃を和らげる自動ブレーキがある「運転支援システム」は作動状態。ドライバーが眠気に襲われ目を閉じた約1分後、車は加速し、別の事故で路上に止まっていたバイクに衝突した。

2018年4月に起きたこの事故は多重事故に発展し、1人が死亡、2人が重軽傷を負った。検察は男の居眠りが事故原因として自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪で起訴。男の弁護側は居眠りや事故状況について認める一方「運転支援システムの故障によって事故が起きた」と主張し、ドライバーと車の運転支援システムのどちらに責任があるかが争点になった。

検察側は車のメーカー側の技術者の証言をもとに「システムは故障しておらず、自動ブレーキも全ての物体を確実に検知できるものではない。機能の限界だ」と主張した。注目された今年3月の判決は故障の有無について「判然としない」と判断を避けつつ、「前方を注視していれば衝突を回避できた」と指摘。禁錮3年、執行猶予5年とした有罪判決が確定した。

事故のケースのような加速・減速やハンドル操作を担うシステムは、業界団体の基準で自動運転の「レベル2」に当たる。既に多くの車で導入されているが、警察庁によると、自動ブレーキを過信・誤用したことで起きた事故は最初に事例が確認された15年12月以降で21件あった。警察幹部は「自動運転が絡む事故は今後も増えていく恐れがある」とみる。

4月には改正道路交通法が施行され、一定の条件下でシステムが運転する「レベル3」の公道での走行が認められた。居眠りや飲酒は許されないが、走行中にスマートフォンを操作したりカーナビでテレビを見られたりするようになる。ホンダが20年中の販売を目指すなど各メーカーが開発を競い、実用化は目前だ。

レベル3の自動運転中に事故が起きた場合も、一般的な事故と同様に警察が捜査してドライバーの過失などを調べる。国の保安基準では自動運転中の様子を事後に検証しやすいように、走行時のデータを記録したり、ドライバーが居眠りなどをしていないかを監視したりする機能の搭載を義務付けている。

システムの故障で人身事故が発生し、ドライバーに全く過失が無い場合、車のメーカーが業務上過失致傷罪に問われる可能性もあるが線引きは難しい。捜査幹部は「責任の所在を調べるため、走行中の状況を慎重に見極める必要がある。システムの解析には知識や技術も不可欠で、捜査員の育成も急務だ」と語る。

自動運転に詳しい明治大の中山幸二教授は「レベル3に進化しても自動運転は万能ではなく、正しく作動した結果事故が起こる恐れはある。ドライバーが機能の限界を認識することが重要で、自動運転車に対応した講習制度などを導入するべきだ。システムが正常に機能するように車の整備の重要性も増す」と指摘した。

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