中国、ロボットが採血 AI活用で精度向上

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コラム(テクノロジー)
2020/5/26 2:00
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病院の採血室はあまり長居はしたくない場所だ。患者にはもともと採血が苦手な人もいるし、医療スタッフにとって、採血は患者との距離が近いため感染リスクもあり、採血ミスは医療トラブルの原因になることもある。感染症の場合は医療スタッフが防護服を着用して穿刺を行うため、血管の選択が難しく採血の効率も大幅に下がる。患者がやけどや皮膚の疾患、血液の病気など特殊な体質である場合や重症の場合、血管を探して採血を行うのが難しく、それによって診断や治療が遅れることもある。

患者にとっても医療関係者にとっても、採血プロセスにはいくつかの課題がある。スマート採血ロボットはこれらの課題を解決し、頻度と難易度が高い採血作業から看護師を解放できるかもしれない。

磅客策の全自動採血ロボットのイメージ(同社提供)

磅客策の全自動採血ロボットのイメージ(同社提供)

「磅客策(Puncture Robotic)」は採血の際の穿刺を支援するロボットの研究開発を行う企業で、同社の研究開発チームは、ハイテク企業「哈工大機器人集団(Hit Robot Group)」の中央研究院出身だ。現在、小型かつ半自動式の携帯型採血ロボットのプロトタイプを開発するとともに、全自動の採血用穿刺ロボットの開発も手掛けている。このロボットは採血の際の穿刺から必要な消耗品の管理まで一連の作業をモジュール化して統合し、採血プロセス全体を自動で行える。

磅客策の謝雷CEOは、将来的には全自動採血ロボットに採血後の血液サンプルの選別と生化学検査モジュールを追加し、更にIoTを利用し、採血から血液サンプルの管理、生化学検査、診断、治療方針策定までをスマート化したワンストップの診療ソリューションを構築して医療機関に提案したいと語った。

完全な無人化、自動化、スマート化、標準化を実現し、安全性を確保するために、磅客策の全自動採血ロボットシリーズには、最新のAIによる超音波ガイド技術を採用しているという。

張兆東CTOによると、同社の採血ロボットには以下のような複数の革新的技術が含まれている。

まず、赤外線画像認識および分割技術により、血管の位置、血流の方向および太さを正確に識別し、静脈と動脈を明確に区別する。

次に3D画像ポジショニング技術によって、血管分布図のイメージングを行い、最適な血管を素早く特定し、さらに超音波による位置特定によって赤外線では収集できない情報を補足する。

最後は超音波画像に基づいて分割マークを識別し、腕の断面画像を生成し、動静脈の直径と位置をコンピューティングによって検出し、穿刺の位置を判断する。

病院の検査室、健診機関、薬物臨床試験センターにはいずれも採血の需要があり、2018年の中国全土での真空採血管の生産・販売数は50億本近くで、年平均成長率は15%以上にもなり、採血自体が巨大な市場となっている。

謝CEOによると、将来的に製品の研究開発が十分に進めば、患者に接触せずに全自動で血液サンプルを採取するほか、同じく穿刺方式で体液や組織サンプルを採取できるようになるという。

今後の事業化の見通しについては、ロボット技術の成熟と病院における認知度が高まるにつれ、採血ロボットの導入が増え、将来的に体液サンプルの採取可能になれば、採血ロボットが活躍する可能性はさらに広がると同氏は考えている。

採血は難易度が高いとされ、ロボットの導入によって看護師らの負担軽減も期待される(図虫提供)

採血は難易度が高いとされ、ロボットの導入によって看護師らの負担軽減も期待される(図虫提供)

「『2019年衛生健康統計年鑑』に基づいて、我々は中国国内のGDP上位15都市の採血ロボット市場規模を予測してみた。採血ロボットの購入台数が1つの病院あたり1~4台とすると、全体で2500台ぐらいの購買需要があると考えられる。1台あたり40万元(約600万円)の製品価格からすると、10億元(約150億円)程度の市場規模があるだろう」と同氏は語った。

採血ロボットの研究開発の主要目的は、医療スタッフが採血の際に感染することを防ぐほかに、患者の交差感染を防ぐことだという。製品の目標とする市場は、大病院の発熱外来と感染症専門病院の検査科だ。将来的に再び感染症がまん延した際には、今回の新型コロナウイルスと同様に一般外来とは隔離された発熱外来が設けられ、そこでは感染を避けるために採血ロボットの需要が必ずあると、同社のチームは確信している。

現在までに、磅客策の全自動採血ロボットは300例以上のサンプルデータを収集しており、効率性、正確さ、安全性はすでに証明されている。謝雷氏は今後2年半で製品登録証と生産許可証の申請を完了できると見込んでいる。

現在、採血ロボットの研究開発は盛んになっており、磅客策以外に米「Veebot」、「邁納士(MagicNurse)」、「BOE(京東方)」などが参入している。中国国内では邁納士だけが登録証を取得しており、採血ロボットの実用化はまだ初期段階にある。

謝雷氏によると、医療用ロボット全体の発展状況からみると、将来的に採血ロボットは応用分野が広がり市場規模も拡大し、業界の競争力も高まるだろうとのことだ。

磅客策は製品のアップグレードのために、現在資金調達を進めている。

「36Kr ジャパン」のサイトはこちら(https://36kr.jp/)

中国語原文はこちら(https://36kr.com/p/675871663961097)

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