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三菱重工のロケットH2B、成功率100%で有終の美

三菱重工業は21日未明、基幹ロケット「H2B」最終機の打ち上げに成功した。今回で主力ロケット2機種のうち1つが引退し、コストを下げて幅広い需要を取り込む次世代機「H3」に役目を引き継ぐ。ロケット打ち上げは海外勢との競争が激化している。オンタイム(定時)の打ち上げなど信頼性とコストの両立が競争力を左右する。

同日の午前2時31分。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の無人補給機「こうのとり」を搭載したロケットがカウントダウンのアナウンスとともに煙を噴き出し、ゆっくりと発射した。長さ60メートルあまりの大型ロケットは太陽が昇るように上昇し、星のように消えた。

ロケットはこうのとりを無事に分離し、国際宇宙ステーション(ISS)の軌道にのせるまでの任務を着々とこなす。09年から今回の9号機まで「打ち上げ成功率100%」の記録を維持した。

いつもなら現地で歓声が上がるところだが、この日は違った。新型コロナウイルスの感染拡大で見学自体も自粛となったためだ。それでもJAXAのリアルタイム配信では発射を迎えるピークに深夜にもかかわらず約3万人超がオンラインで発射を見守り、チャットで盛り上がりを見せた。

「H2Bで打ち上げ成功率100%を達成でき、ほっとしている。次世代ロケット『H3』にノウハウを引き継いでいきたい」。打ち上げ後の記者会見で、三菱重工の阿部直彦防衛・宇宙セグメント長はこう話した。

ロケットは顧客の人工衛星を搭載し、宇宙に送る輸送サービスだ。三菱重工はH2BとH2Aの2機種を運用し、H2Bは約8トンの衛星打ち上げ能力を持つ日本最大のロケットだ。09年からISSに物資を運ぶ「こうのとり」の専用ロケットとして運用され、9号機が最後の打ち上げとなった。同じく最終号機となるこうのとりもラストフライトを終えれば、後継機の「HTV-X」に月や火星などの国際探索も視野に任務を引き継ぐ。

今回でH2BとH2Aを合わせた打ち上げ成功率は98%となり、95%の世界水準を上回る。H2Aも数年内に退役となり、この2機種の役割はH3に集約する方針だ。

H3は運搬する物資の量に応じてエンジン数などを調整できる柔軟性を持つ一方、汎用部品を使ってコストを下げる。通信衛星など幅広い民間需要を取り込む狙いだ。

従来は2機種で年間3~5機程度だった打ち上げ回数を2倍に増やし、打ち上げコストはH2Aの半減にあたる50億円前後に抑える。民間向けでは22年以降に打ち上げる英衛星通信サービス大手、インマルサットからの受注が決まっている。

見据えるのは世界との競争だ。ロケットの低価格化を進めてきたスペースXの「ファルコン9」などは月1回ほどの頻度で打ち上げ、1回の打ち上げ費用は4900万~6200万ドル(約53億~67億円)にとどまる。

商業衛星の打ち上げで世界最大手の仏アリアンスペースも従来よりコストが約4割安い次世代機「アリアン6」の初号機を20年に打ち上げる方針だ。さらには19年に世界最多のロケットを飛ばした中国や小型ロケットで精度を高めるインドなど、ライバルは多い。

三菱重工の阿部氏は「世界の宇宙産業は非常に速いスピードでハードルが下がっており、H3もさらにコストを下げ続けなければ取り残される」と危機感を示す。

H2AとH2Bは「国からの受注が基本のため、民間需要に対応するマーケティングの意識が薄かった」(重工関係者)との反省もある。考えてみれば鉄道の定時運行や100円ショップは、ともに日本企業の得意技だ。莫大な予算を宇宙産業につぎ込む米国や諸外国と対抗するには「オンタイム(定時)打ち上げ」とコスト感覚をバランスよく磨く必要がある。

一方で、国との「二人三脚」はまだ必要だ。H3は20年度後半の初号機打ち上げを目指すが、50年以上の歴史を持つ種子島宇宙センターは老朽化が激しい。JAXAの山川宏理事長は「設備更新の計画もブラッシュアップする。宇宙システム以外の産業の考え方も取り入れたい」と変革を示唆した。日本が宇宙産業で後れを取らないため、官民の最適な連携バランスを模索し続ける努力が求められる。

(西岡杏)

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