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難民キャンプや紛争地、感染爆発の懸念

国連安保理、機能不全に

新たに到着した難民を検査するギリシャ保健省の職員ら(13日、レスボス島)=ロイター

【イスタンブール=木寺もも子、ニューヨーク=吉田圭織】新型コロナウイルスの感染が難民キャンプや紛争地で広がり始めた。バングラデシュにあるロヒンギャの難民キャンプやシリア、アフガン難民らが欧州を目指して渡航するギリシャの島などで相次いで感染が確認された。実態把握は十分に進んでおらず、医療体制が不十分で劣悪な生活環境のため、爆発的な感染拡大につながる懸念が高まっている。

バングラデシュ南東部コックスバザールの難民キャンプで14日、新型コロナへの感染事例が初めて確認された。当局は感染者をキャンプ内で隔離したが、ロイター通信によると、地元住民1人も感染が確認された。

このキャンプには、隣国ミャンマーから逃れたイスラム教少数民族ロヒンギャ100万人が暮らす。非政府組織(NGO)の推計によると、人口密度は1平方キロメートルあたり4万人と、東京23区の2倍以上に上る。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は「世界で最も(感染)リスクが高い」と警告している。

医療関係者や援助関係者は以前から、人々が密集して生活する難民キャンプや紛争地は、新型コロナの感染拡大の土壌になると懸念してきた。

エーゲ海にあるギリシャのレスボス島では13~15日、新たに到着した難民4人の感染が確認された。同島には欧州を目指す難民が対岸のトルコを経由して渡航、約2万人がキャンプに収容されている。ギリシャ当局は、新たに到着した難民らをほかの難民と隔離する。

内戦が続くイエメンでは20日までに、サウジアラビアが支援する暫定政権側が180人以上の感染事例を報告した。南部の都市アデンでは、最近の死者が通常の5倍に膨らんだとの報道がある。

暫定政権と対立し、イスラム教シーア派武装勢力「フーシ」は、支配地域での感染事例を4件としている。ただフーシの後ろ盾のイランでは10万人以上が感染し、7千人以上が死亡するなど、中東で最も深刻な影響を受けている。世界保健機関(WHO)は水面下で感染が広がっている恐れがあると指摘している。

国連の安全保障理事会は、新型コロナに伴う紛争地の停戦を求める決議を採択できておらず、機能不全に陥っている。

「今のシリアの状況を考えると、もし感染爆発が起これば、国と周辺地域に壊滅的な被害をもたらす」。国連でシリア和平協議を仲介しているガイル・ペデルセン特使は18日、シリア情勢を話し合う安保理のビデオ会合でこう訴えた。

グテレス事務総長は新型コロナの感染拡大が深刻化した3月に「世界中に即時の停戦を求める」と呼び掛け、内戦状態が続くカメルーンやリビア、シリア、イエメンなど11カ国が一旦は停戦を受け入れた。だが、リビアでは数日後、対立している有力武装組織リビア国民軍(LNA)と国連が支持する暫定政権が軍事衝突し、戦闘が激化した。国連によると4月1日から今月19日の間に58人の民間人が死亡した。

紛争地の新型コロナ感染者は19日時点でシリアで58人、リビアは68人で、多くの地域ではまだ深刻な感染拡大は生じていない。国連は発展途上国で8~11月ごろに感染のピークを迎えると予測。紛争地では集中治療室(ICU)など医療体制が整備されておらず、医療崩壊を懸念している。

「安保理は恥じるべきだ」。世界で人道支援をつかさどる国際救済委員会(IRC)やセーブ・ザ・チルドレンなど複数の団体が19日、異例の非難声明を出した。紛争地を中心に新型コロナの感染が世界で10億人に上る恐れがあると警告。「安保理は世界の紛争を止め、支援を必要とされる人に支援することができるはずだ」と批判した。支援団体が求めているのが、安保理による紛争などの停戦決議だ。

安保理は世界の平和と安全に責任を持ち、加盟国に法的な強制力を持つ意思決定ができる唯一の国連機関だ。「全ての武装勢力に対し、最低90日間の停戦を求め、人道支援が行き届くようにする」。安保理の理事国は新型コロナに関する決議案を3月から用意し、採択に向けた調整を進めてきた。

だが、常任理事国の米国と中国が決議案の文言を巡って対立。米国は湖北省武漢市でウイルスが発生したことを明記するように主張し、中国はWHOへの支援を盛り込むよう求めた。決議案は4回作り直したが、現在も採択できないままだ。安保理外交筋は「採択される可能性は極めて低くなった」とあきらめ顔だ。

安保理は過去、感染症の拡大に伴う決議を迅速に採択してきた。14年のエボラ出血熱の流行時には、WHOが緊急事態を宣言した同年8月の1カ月後には、流行国への支援を強化する決議案を採択していた。

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