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「タイミング最悪」法務・検察当局に衝撃 黒川氏辞意

東京高等検察庁が入る合同庁舎(21日午前、東京・霞が関)

法務・検察当局で検事総長に次ぐナンバー2の黒川弘務・東京高検検事長(63)が21日、賭けマージャンをした疑いが原因で辞任する見通しとなった。検察幹部の定年を延長できる検察庁法改正案を巡る議論が続くさなかの辞任劇。「まさかこんな形で」「日本全体が我慢しているのに」。将来の総長候補ともされた実力者の突然の退場に、法務・検察当局内で驚きと怒りが広がった。

「まさかこうした形で辞めることになるとは」。黒川検事長が辞意を固めたとする一報を受け、ある法務省職員は絶句した。

週刊文春は20日、電子版で黒川氏による賭けマージャンの疑惑を報道。同省では同日中に黒川氏への聞き取りを含む内部調査が始まった。国会では黒川氏を含めた検察官の定年延長の問題が紛糾したこともあり、検察関係者は「タイミングが最悪」と漏らした。21日にかけ省内では職員らが慌ただしく動き、異例の事態をうかがわせた。

検察内部では憤りが広がる。関東地方の検事は「日本全体が『3密』を避けて我慢している中、国民感情を逆なでする行為だ」と話す。東京都は政府の4月7日の緊急事態宣言の発令を受け、外出自粛を要請していたが、記事によると黒川氏は5月に2回、都内の記者宅でマージャンをしていた。東京地検関係者は「処分をした上で、辞任しなければ国民への示しがつかない」と語った。

捜査への影響を懸念する声も出ている。西日本の検察幹部は「国民の信頼がなければ捜査はできない。これだけ騒がれれば、いろんな影響が出てくるだろう」とみる。別の検事は賭けマージャン疑惑について「事実関係をきちんと調査しなければ、検察庁に批判が寄せられ、国民からの信頼を失いかねない」と話した。

1月に政府が閣議決定した黒川氏の定年延長は前例がなかった。検察内でも職務を続けることを疑問視する声が少なくなかった。ある検察幹部経験者は「結果的に黒川検事長は政権に近いという印象を持たれてしまった。賭けマージャン問題がなくても、検察組織が公正で中立であるというイメージを保つためには自ら退くほかなかった」と話した。

定年延長で波紋

 黒川検事長の定年を巡る一連の問題の発端は1月だ。政府は2月に迎えるはずだった黒川氏の定年を8月まで延長する人事を閣議決定。森雅子法相は記者会見で「業務遂行の必要性に基づき引き続き勤務させる」と説明したが、検察官の定年延長は前例がない。首相官邸の信任が厚いとされる黒川氏を留任し、定年が65歳の検事総長への道を開く人事と受け止められた。

ある検察OBは「検事長の定年延長というこれまでにない措置をなぜ法務・検察当局が受け入れたのか。政権の意向が検察人事に反映されたという印象が広がり、この時点から歯車がおかしくなった」と指摘する。

検察庁は行政組織でありながら公訴権をほぼ独占する準司法機関で、強い独立性を保ってきた。検事総長や各高検の検事長ら上層部の10人は内閣の任命と天皇の認証で就任する「認証官」だが、幹部候補は検察内部で決められ、内閣も追認してきた歴史がある。別の検察OBは「政権と距離があるからこそ、真相解明のため政界捜査に踏み込めた」と強調する。

黒川氏の定年延長に加え、政府の判断で検察幹部の定年を延長できる検察庁法改正案が国会提出されたことを受け、野党は「政権の検察人事への介入が強まる」と反発した。反対の声はSNS(交流サイト)などにも広がり、法務省幹部が「これほど問題が大きくなるとは予想外だった」と話す事態に陥った。

検察OBも動いた。松尾邦弘元検事総長らが相次いで改正案に反対する意見書を法務省に提出。松尾元総長らの意見書では「人事権まで政権側に握られ起訴・不起訴の決定まで干渉を受けるようになったら、検察は国民の信託に応えられない」とした。

政府・与党は野党や世論の反対を受けて改正案の今国会での成立を断念した。

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