中国企業、検査拒否なら米上場廃止 上院が法案可決
対中強硬姿勢一段と

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2020/5/21 7:23 (2020/5/21 9:41更新)
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アリババなど米国に上場する中国企業に圧力=ロイター

アリババなど米国に上場する中国企業に圧力=ロイター

【ニューヨーク=宮本岳則】米上院本会議は20日、米国に上場する外国企業に経営の透明性を求める法案を可決した。外国政府の支配下にないことを証明するよう求めるほか、米規制当局による会計監査状況の検査を義務付ける。3年間、検査を拒否した場合は上場廃止となる。中国企業の「締め出し」につながりかねない内容で、米国の対中強硬姿勢が一段と強まる。

このほど上院で可決した法案「外国企業説明責任法」は2019年に共和党と民主党の議員が超党派で提出したもので、20日に全会一致で可決した。下院が可決しトランプ大統領が署名すれば成立する。

法案は名指しはしていないものの、事実上、中国を念頭に置いたものだ。提案者の1人、民主党のクリス・ヴァン・ホレン上院議員は声明で「中国企業は長年、米国の開示ルールを無視し、投資家を誤解させる情報を出してきた」と批判した。 法案によると、米国に上場する外国企業は政府の支配下にないことを証明しなければならない。米株式市場には電子商取引(EC)大手のアリババ集団やインターネット検索最大手の百度(バイドゥ)、中国のネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)系の音楽配信サービス会社など中国の有力民間企業が多数上場する。こうした企業は中国・共産党の影響下にないことを米証券取引委員会(SEC)に説明する必要がある。

法案は懸案だった中国企業の財務の透明性にもメスを入れようとしている。米国では上場企業会計監査委員会(PCAOB)が上場企業の会計監査を担当する監査法人を定期的に調べ、財務諸表の質を担保している。米国に上場する企業がPCAOBによる監査状況の点検を3年連続で拒んだ場合、株式の売買は禁止となる。米当局の要請にもかかわらず、中国政府が長らく自国監査法人の監査を拒否してきた経緯がある。

中国側が自国監査法人の検査を認めるか不透明だ。拒否の理由は明らかになっていないが、米規制当局による「主権の侵害」を気にしているとの見方がある。監査法人の持つ自国企業の財務諸表に共産党に関連する内容が含まれ、検査を通じた情報の漏洩を懸念しているとの指摘もある。実際に法律が執行された場合、中国企業の上場維持は難しくなる可能性がある。20日の米株市場では法案可決が伝わると、アリババ株など中国株に売りが広がった。

米議会の動きはトランプ米政権の対中強硬姿勢と呼応している。

トランプ大統領は14日放映のテレビインタビューで米上場の中国企業への監視強化を求め、その結果、中国勢がロンドンや香港の証券取引所にくら替えしても構わないとも述べた。米取引所ナスダックは中国企業の新規上場を事実上制限する新ルールを公表した。中国企業は米国で資金調達するハードルが上がる。

ポンペオ米国務長官も20日、対中批判の度合いを一段と強めた。国務省の会見場に現れ、冒頭から「今日は中国について話したい。メディアは新型コロナウイルスにばかり注目しているが、まず中国が1949年から独裁的な共産党に支配されているという事実を認識すべきだ」と訴えた。

中国が18日の世界保健機関(WHO)の年次総会でアフリカなどの途上国を中心とした新型コロナウイルス対策に今後2年間で20億ドル(2100億円超)を拠出すると表明したことに、コロナ感染による被害や死者数などを考えると「微々たるものだ」と指摘。「習近平国家主席は中国が(コロナ対応に)透明性と責任感をもって対応していると語ったが、そうであってほしかった」と改めて批判した。

そのうえで「この疫病は約9万人もの米国人の命を奪い、3月以降は3600万人以上の米国人が職を失った。我々の試算では、中国共産党の失敗によって最大9兆ドルものコストが押しつけられている」と語った。

ただ、資本市場の分断は米中双方にとって痛手だ。米国の投資家は中国の成長企業に投資しにくくなり、高いリターンの機会を失いかねない。ウォール街の金融機関は中国企業の資金調達支援で収益を上げていたが、今後は規制リスクを一段と考慮せざるをえない。中国勢も成長資金の調達に支障がでる可能性がある。

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