台湾、「脱・中国依存」加速 蔡政権2期目始動

米中衝突
2020/5/20 19:24
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2期目の就任式で演説する台湾の蔡総統(20日、台北)=AP

2期目の就任式で演説する台湾の蔡総統(20日、台北)=AP

【台北=伊原健作、北京=羽田野主】台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統(63)は20日、2期目の就任式で演説し、中国から距離を置く姿勢を鮮明にした。「一国二制度」による統一を拒否すると明言し、日米欧との貿易協定の実現など経済の「脱・中国依存」を加速すると表明した。台湾独立志向は封印し対話を呼びかけるなど中国に配慮も示したが、中台の溝が一段と深まるのは避けられない。

就任演説で蔡氏は統一の際に高度な自治を認める「一国二制度」の拒絶を明言した。独立志向を封印し、中国側に「平和で民主的な、対等の対話」を呼びかけるなど一定の配慮は示したが、2016年の1期目就任時から中国関連の記述自体が減少した。台湾・成功大学の蒙志成准教授は「対中関係は当面展望が開けず、分量を割く必要性が低かった」と話す。

台湾では昨年6月以降の香港の政情混乱で、中台統一への拒否感が強まった。蔡氏は対中強硬姿勢を鮮明にして支持を広げ、20年1月の総統選で史上最多得票で再選した。

さらに新型コロナウイルス対策の奏功で国際社会からの評価も高まる。20日まで13日連続で新規感染者はゼロで、累計感染者数も440人どまりだ。蔡氏の足元の施政満足度は61%(民放TVBS調べ)と5カ月弱で20ポイント上昇し、就任後最高水準にある。

蔡氏は演説で人々の感染対策への取り組みを称賛し、「共同体として生死をともにし、国家を誇りに感じる記憶が心に刻まれた。これが団結だ」と強調した。新型コロナで「台湾ナショナリズム」の追い風が強まるなか、展望の見えない対中政策の比重が今回は高くなかった面がある。

演説を受け、中国で対台湾政策を所管する国務院(政府)台湾事務弁公室の馬暁光・報道官は「新型コロナを利用して台湾独立を推進している」などと批判した。

現実には中国の圧力で台湾の苦境は深まっている。1期目では計7カ国と断交し、台湾と外交関係を持つ国は残り15カ国まで減った。直近の世界保健機関(WHO)年次総会へのオブザーバー参加もできず、中国は蔡政権を孤立させる戦略を着々と進める。

蔡政権は1期目から経済の脱・中国依存を掲げる。中国に渡った台湾企業の回帰を促す政策は成果を上げつつあるが、19年の対中輸出依存度は約4割と就任時とほぼ変わらない。新型コロナで経済への悪影響が広がるなか、中国の重要度が見直され蔡政権の求心力が揺らぐ展開もあり得るだけに、今後は成果を問われる。

蔡氏は演説で「米国や日本、欧州など(民主主義の)価値観を共有するパートナーとの関係を深める」と述べ、日米欧と「貿易や投資保障の協定を結ぶ」方針を表明した。台湾では特に親台湾の姿勢を強めるトランプ米政権との自由貿易協定(FTA)締結に期待する向きがある。

ポンペオ米国務長官は就任式に際し蔡総統に祝福の声明を出した。台湾メディアによると、総統就任式で米国務長官が正式に祝意を示すのは初めて。中国国防省はこれに対し、「強烈な不満と断固とした反対を表明する」と声明を出した。「台湾の問題は中国の内政で、中国の核心的利益にかかわる」と強調。「国家主権と領土を完全に守るため必要な措置はすべてとる」と主張した。

蔡氏は新型コロナなどがもたらす国際情勢の変動は「試練と同時にチャンスにもなる」と強調した。トランプ米大統領は11月に大統領選を控え、対中批判を強めることで感染対策に関する野党の批判をかわす狙いが透ける。台湾は中国をけん制する「カード」として使われている面もあるが、蔡氏はそれを承知で米に接近し、国際社会で生き残りを目指す構えだが、波乱を招くリスクと隣り合わせだ。

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