米国「内製半導体つぶし」、ファーウェイ耐えられるか

日経ビジネス
コラム(ビジネス)
2020/5/22 2:00
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アナリスト向けイベントに登壇した華為技術(ファーウェイ)輪番会長の郭平氏

アナリスト向けイベントに登壇した華為技術(ファーウェイ)輪番会長の郭平氏

日経ビジネス電子版

「生き残りが我々のキーワードだ」「我々のビジネスが巨大な影響を受けることは避けられない」

中国の華為技術(ファーウェイ)副会長兼輪番会長の郭平(グォ・ピン)氏は18日、広東省深圳市で開催したアナリスト向けイベントに登壇し、こう胸中を吐露した。米商務省は15日、米国製の製造装置や技術を使って海外で生産・開発された半導体製品を、ファーウェイに販売することを規制すると発表した。郭氏の発言はこれを受けたものだ。ファーウェイに輸出する場合には、米商務省の許可が必要になるが認められる可能性は小さい。

「一部の国が門戸を閉ざすならそれでも構わない」。昨秋、日経ビジネスが単独インタビューをした際、郭氏はこう述べていた。一部の国とは当然、米国を指したものだ。強気の姿勢の背景にはファーウェイの企業戦略に組み込まれた「プランB」の存在があった。

ファーウェイは2003年に米モトローラに身売りする基本合意を結んでいたが、モトローラの最高経営責任者(CEO)交代で破談となった過去がある。ファーウェイ創業者の任正非CEOはその時からいずれ米国と通信分野の競争で衝突することは免れないと考え、その対策を積み上げてきたという。

多くのスマートフォンメーカーはクアルコムやスカイワークスなど米国企業製の半導体や、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を使わずに製品を作ることができない。だが、ファーウェイは子会社、海思半導体(ハイシリコン)を擁しており、自社開発の半導体の搭載比率を引き上げ、米国製部品を減らしてきた。アンドロイドの代替となるOS「ハーモニー」も自ら開発している。

その戦略が、これまで一定の効果を発揮してきたことは間違いない。18年、中国の通信機器メーカー、中興通訊(ZTE)は米政府が禁輸措置を課したことで経営破綻の瀬戸際まで追い込まれ、罰金支払いや経営陣刷新など米国の要求を受け入れることで制裁解除にこぎ着けた。

郭氏は「米国の禁輸措置により19年は事業計画を達成できず、年初の事業計画を約120億ドル下回った」と規制の影響を指摘する。実際、ファーウェイは増収増益を続けてきたが、その成長率は鈍化傾向にあった。それでも、ZTEほどのダメージは受けていない。

ファーウェイがなお成長を続ける状況が、米政府にとって面白いはずがない。米国のロス商務長官は15日に発表した規制強化について「ファーウェイは規制逃れを図ってきた。規則を修正し、米国の安全保障と外交政策に反する事業を阻止する」と表明している。ここでいう「規制逃れ」はまさに、ハイシリコンを通じた開発内製化の取り組みを指したものだ。

今回、米商務省が逃れようのない弱点を的確に突いたことを、冒頭の郭氏の発言は示している。それは、ファーウェイだけでなく、先端的な半導体に関わるすべての企業に当てはまるものだ。

■TSMCへの7億ドル緊急発注と受注停止報道

現在の半導体産業は、開発と製造を分離するという国際分業体制の下で成り立っている。半導体の開発は世界各国の企業が実施し、台湾積体電路製造(TSMC)などファウンドリーとよばれる製造ラインを備えた企業が受託生産する。その製造ラインにはアプライドマテリアルズなど米国企業製の高性能な半導体製造装置が欠かせない。

米国の規制強化の動きは、昨年末ごろから一部報道で取り沙汰されていた。ファーウェイは一部半導体の生産をTSMCから中国国内のファウンドリー、中芯国際集成電路製造(SMIC)に切り替えてきたのも、こうした動きに備えるためだったとみられる。

SMICは半導体自給率引き上げを目指す中国にとって重要な国策企業で、国家ファンドによる投資も受けて成長してきた企業だ。だが、TSMCとSMICでは、いまだに製造技術に大きな隔たりがあるのが現実だ。最先端の半導体の製造は現在、TSMC抜きでは考えられない。

日経新聞は18日、TSMCがファーウェイからの新規受注を停止したと報じた。それと前後して、台湾経済日報などはハイシリコンがTSMCに7億ドル(約750億円)分の製品を緊急発注したようだと伝えている。

ファーウェイは「米国は自国の技術における優位性を濫用し、他国の企業を徹底的に排除しようとしている。これは、海外企業の米国の技術とサプライチェーンにおける信頼を揺るがすことにとどまらず、最終的に米国自身の利益を損なうことになるだろう」と米国政府に反発している。中国共産党系英字紙は中国政府が報復措置としてクアルコムや米アップル、米シスコシステムズ、米ボーイングなどを貿易規制の対象にする検討に入ったと報じた。ファーウェイは、19年に米国から調達した金額を187億ドル(約2兆円)としており、世界有数の通信機器メーカーへの規制強化は米国経済に跳ね返る部分もある。

今回の規制強化について米商務省は15日の時点で既にファーウェイ(ハイシリコン)の設計に基づき生産を始めている場合、120日以内は許可を取る必要がないとしている。ファーウェイは昨年以来、部品在庫を積み増しながら経営しているとされる。

新型コロナウイルスへの対策や11月に予定される米大統領選挙など、現在進行形で動いている様々な要因が絡み合う中、この120日間でファーウェイがどのような経営判断を下すのか。同社が「生き残れるか」の分水嶺となりそうだ。

(日経BP上海支局長 広岡延隆)

[日経ビジネス電子版 2020年5月20日の記事を再構成]

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