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米、アフガン和平遅れに焦り コロナ下で異例の積極外交

【ワシントン=中村亮】トランプ米政権が新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、アフガニスタンの和平進展に向けて仲介外交を積極化させている。米軍は7月に駐留規模を3割減らすが、アフガン政府と反政府武装勢力タリバンの和平交渉開始は大幅に遅れている。トランプ大統領は11月の大統領選に向けて米軍の完全撤収に意欲を示しており、和平の遅れに焦燥感を募らせている。

アフガン和平担当特別代表のザルメイ・ハリルザド氏は17日、タリバンが事務所を置くカタールの首都ドーハに向けて出発した。米メディアによると19日時点でドーハに滞在しておりタリバン高官と会談したもようだ。ハリルザド氏はアフガンも訪れる。同国では17日にガニ大統領と前行政長官のアブドラ氏が権力を分け合うことで合意した。タリバンとの和平交渉に向けた体制が整い、今後の対応を話し合う。

米国では3月に新型コロナの感染拡大が確認されてから政府高官の外遊が停止したが、アフガン外交は例外となっている。ハリルザド氏は4月中旬と5月上旬にもカタールなどを訪れ、今春の外遊は今回で少なくても3回目。ポンペオ国務長官も3月下旬にアフガンとカタールを予告なしに訪問。2月に米国とタリバンが署名した和平合意に基づき、和平交渉を始めるようアフガン政府とタリバンに働きかけた。

米国の積極外交は和平停滞への焦りの表れだ。2月の和平合意では、将来的なアフガンの統治体制を議論するアフガン政府とタリバンの直接対話を3月10日に開くと明記したが先送りが続く。両者の捕虜交換が円滑に進まず、タリバンが反発してアフガン政府軍に対する攻撃を激化。アフガン政府軍も反撃して対話の機運に水を差す悪循環に陥っている。

一方で米軍撤収は着々と進む。米軍は7月中旬までに駐留規模を1万2000人程度から8600人に減らす方針を示し、5月中旬時点で「予定通りに履行している」(国防総省)。和平交渉に進展が乏しいにもかかわらず、米軍縮小が先行すればアフガンの治安が再び悪化し、同国が国際テロ組織の活動拠点として利用されるリスクが高まる。

ランド研究所のジェイソン・キャンベル氏は「米国は米軍撤収を正当化するために和平進展を急いでいるようだ」と指摘する。トランプ氏は11月の大統領選に向けて米軍撤収に強い意欲を示す。米メリーランド大などの2019年秋の調査ではアフガンでの米軍縮小を支持するとの回答は62%にのぼる。政権は撤収に関して和平交渉の進捗次第と説明するが、撤収計画を白紙に戻すのは政治的にハードルが高い。

さらに「トランプ氏はアフガンの和平進展とは無関係に米軍撤収を進めていく可能性がある」(元国防総省高官)との見方もある。NBCテレビによると、トランプ氏は4月下旬にコロナ感染を避けるためアフガン駐留米軍の完全撤収を周辺に訴えた。2月の和平合意は21年春までの米軍完全撤収も明記しており、7月中旬には駐留規模を8600人からさらに減らすか判断を迫られる。

和平を置き去りにする形での米軍撤収はアフガン政府にとって大きな打撃になりうる。アフガンでの米軍戦闘機の出動回数は19年に8773回とオバマ政権末期の16年に比べて7割増えた。上空からの米軍の支援を受けてアフガン政府軍がタリバン掃討作戦などを実行してきた経緯がある。

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