元徴用工法案が廃案 韓国国会、審議せず閉会へ
解決策振り出しに

日韓対立
2020/5/20 19:05
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【ソウル=恩地洋介】韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長が2019年末に提出した元徴用工問題の解決法案が20日、事実上の廃案となった。日韓の企業と個人の寄付金で日本企業の賠償を肩代わりする内容で、日本側にも評価する声があった。原告や市民団体の反対で審議にも至らぬまま、日韓対立の発端である元徴用工問題の解決策は振り出しに戻った。

法案を提出した韓国の文喜相議長は引退する=共同

韓国国会は20日、現国会議員の任期中で最後となる本会議を開き、事実上閉会した。文議長が昨年12月に提出した「記憶・和解・未来財団法案」など2つの関連法案は、憲法の規定により国会会期末の29日で廃案となる。

法案は日韓の企業と個人から寄付金を募って基金を設け、裁判所や韓国政府が認めた元徴用工らに慰謝料を支給する内容だ。企業や個人に寄付を強要しない方針を明記したほか、受給者は企業への請求権を放棄したとみなす規定を盛り込んだ。

18年に韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金(現日本製鉄)に賠償を命じて以降、日本政府は「国際法違反の是正」を韓国に求めてきた。文議長の法案は、韓国側が1965年の日韓請求権協定に反しない形で解決を模索する初めての動きといえた。

法案の提出と前後して、日韓両政府は対立状況の緩和に動いた。日本は韓国が撤回を要求する輸出規制の厳格化措置を一部緩めた。19年12月下旬には安倍晋三首相と文在寅(ムン・ジェイン)大統領が中国の成都で1年3カ月ぶりとなる日韓首脳会談に臨み、問題解決に向けた協議を続ける方針を確認した。

文議長は1月、訪韓した自民党の河村建夫元官房長官(日韓議員連盟幹事長)に、4月の総選挙後の法案成立を期すと説明した。しかし、法案は委員会にも上程されず棚ざらしにされた。補償に期待する被害者団体は賛意を示したが、肝心の原告らが「加害者の事実認定と謝罪が必要だ」として強く反対したためだ。

法案が次期国会で再提出される可能性は低い。提出を主導した文議長をはじめ、14人の共同提出者のうち9人が今国会を最後に引退する。

元徴用工問題を巡って想定される次の展開は、原告が差し押さえた日本企業の資産売却に関する韓国裁判所の判断だ。資産査定を経て売却命令が出れば、原告が現金化を進める環境が整う。解決をめざす政治や外交の動きが止まると、先送りの理由はなくなる。

日韓の外交当局は定期的に局長が電話で協議をしているが、目立った進展はない。新型コロナウイルスの影響で、首脳会談などの外交日程は見通せない状況だ。

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