今日も走ろう(鏑木毅)

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家族と向き合うということ ともに学ぶ契機に

2020/5/21 3:00
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一斉休校となって早くも2カ月以上が過ぎた。当初は、仕事も減ったことだし、普段一緒に過ごせない娘との時間ができてむしろ良い機会だろうと安易に考えていた。実際、数週間は勉強に付き合ったり、盤上ゲームをしたりと順調に時が流れた。ただ最近は、娘からふと目を離しては家の中をさまよい、時間を無駄に費やす自分へのいら立ちを抑えきれずにいる。自宅で仕事をしていても、まとわりつかれると作業がはかどらずそれも悩みの種だ。

近所の散歩から娘と向き合うきっかけが生まれた

近所の散歩から娘と向き合うきっかけが生まれた

先生とも友達とも会えず、基本的に家でずっと過ごさざるを得ない環境の変化に戸惑い、苦しむ娘の気持ちも頭の中では理解しているつもりだけれど、こちらも先行きの見えない不安に焦りを覚え、ついついきつく当たってしまうことがある。そのたびに自己嫌悪に陥る。

こんな状況になると、安定した公務員から不安定なプロスポーツ選手という仕事を選んだ過去の自身の選択を悔やんだり、政府の体たらくを嘆き、世の中の流れ全てがかんに障ったりして、心はどんどんささくれだってしまう。

娘は学校が大好きで友達とのできごとや行事などを喜々として毎日語り、学校があれば生活のリズムも整っていた。性格的にも明るく、弱音などあまり吐かないのに、先日、寝る直前に「学校はいつ始まるの?」と妻にぼそりと尋ねていた。大きな声には出さないものの彼女なりに苦しんでいる。学校で友人や先生と会い、時間を共有する生活の大切さをあらためて感じる。

家族で近所を歩くことが唯一の楽しみだ。娘はナガミヒナゲシというポピーに似た花が好きで、よく道端で摘んでいる。この花はオレンジ色のかわいらしい花なのだが、外来種で繁殖力が極めて強いため自治体によっては駆除を推奨している。「この花は外来種だからあまり好まれていないんだよ」と教えると、こんなきれいな花がなぜ好かれないのか不思議そうだった。これをとっかかりに外来生物などを含めインターネットで調べて説明すると、それからは食物連鎖や生態系にも目が向き、自ら図鑑などを開いていろいろ調べ始めた。

島国日本において検疫がいかに大切であるか、ひいては現在の新型コロナウイルスも外国から入ってきたことなど、親子そろっての探求の時間はこれまでにない新鮮なものになった。日ごろはどうしてもドリルや計算といった教材ばかりに目が行ってしまう。やはり大切なのは限られた機会で娘が興味を持つ何かを提供することなのかもしれない。海外のレースで訪れた国の地理や名産、歴史などを思い出し、一緒に学ぶことでゆがみかけた娘との関係性を少しずつ修正できたような気がしている。

学校が再開したら、これまで当然のこととして通っていた学校での時間のありがたみを娘はもちろん、親である私も妻もあらためて深く感じることだろう。家族がそれぞれ互いに向き合い悪戦苦闘を続けているこの数カ月の時間が、いつか娘が成長した将来、苦くも懐かしい思い出の一つとして語られていくことを願ってやまない。

(プロトレイルランナー)

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