WHO、米中対立激しく トランプ氏脱退示唆

2020/5/19 19:25 (2020/5/20 1:27更新)
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トランプ氏は対中批判を強める(18日、米ホワイトハウス)=AP

トランプ氏は対中批判を強める(18日、米ホワイトハウス)=AP

【台北=伊原健作、ジュネーブ=細川倫太郎】世界保健機関(WHO)の年次総会を舞台に、米中の応酬が一段と激化している。トランプ米大統領は18日、WHOが「中国寄り」の運営を改めなければ脱退すると示唆した。中国の反対で、台湾の総会へのオブザーバー参加が先送りされたことなどが火種になっている。米中対立の激化は新型コロナウイルス対策についての国際的な検証に影を落とす可能性がある。

「WHOが30日以内に実質的な改善策を約束しなければ拠出金の停止を無期限にし、加盟についても再考する」。トランプ氏は18日、WHOに宛てた同日付の書簡をツイッターで公表した。

4ページにわたる書簡には「WHOは中国の対応を『透明性が高い』と称賛した」「中国は1月の早い段階で新型コロナウイルスのサンプルの破壊を命じた」などと、WHOと中国の問題点が列挙されている。「WHOが過ちを繰り返し世界が極めて大きな代償を支払ったのは明らか。WHOが前進する唯一の方法は中国から独立していると示せるかどうかにかかる」と主張した。

WHOは1月下旬に緊急事態を宣言した際に「中国への渡航や貿易の制限は不要」と断言。米はこうした判断が感染拡大を引き起こしたなどと批判してきた。

台湾問題も「中国寄り」との批判の論拠の一つになっている。WHOは18、19日に開いた総会で、台湾のオブザーバー参加を認めず、年内にも開かれる次回会合に議論を持ち越すことを決めた。ポンペオ米国務長官はこれを受け「テドロス事務局長の独立性の欠如によって、台湾の(新型コロナに関する)科学的な知見を総会で共有できない」とした。

WHO非加盟の台湾は、「一つの中国」原則を認めない蔡英文(ツァイ・インウェン)政権発足の翌17年から中国の反対でオブザーバー参加ができていない。今回は日米豪などが参加を支持したが結局招待状は届かず、台湾の呉●(かねへんにりっとう)燮・外交部長(外相)は「WHOは中国の圧力に屈した」と失望をにじませた。

そもそも台湾の参加のハードルは高かった。今回の総会に向け台湾当局は29カ国の行政機関から参加支持を取り付けた。43カ国の政府要人や議員らが支持を表明したが、加盟194カ国からみると4分の1に届かない。

台湾の外交筋は「中国との摩擦を覚悟で台湾を支持する国はまだ多くない」と話す。仮に総会で台湾の参加を問う投票が行われれば、台湾側が圧倒的に不利で、中国の影響力の強さを見せつけられた可能性がある。

政争が激化するなか、WHOの試練は続く。総会では日本や欧州連合(EU)などが、国際社会の新型コロナ対応を検証する「公平、独立、包括的」な調査を求める決議を提案し、19日に採択された。ただ、実行の過程で米中対立が足かせになる可能性がある。

決議にはヒトに感染した経路などを含めて解明することが盛り込まれているが、中国がどこまで調査に協力するかは不透明だ。米国は中国にウイルスのサンプルの提供や発生源と疑う中国湖北省武漢市の研究所の調査を求めてきたが、中国はそうした要求をはねつけており、応じる見通しは全くない。元米政府高官は「真相究明には中国の積極的な協力が欠かせないが、全くあてにできないだろう」とみる。

18日に総会で演説した習近平(シー・ジンピン)国家主席は総会での演説で、「発生源と感染経路の研究をすることを支持する」と受け入れる姿勢を示したが、時期は流行の収束後とした。WHOは調査団の派遣を中国と協議している。情報開示要求などを通じて「中国寄り」との批判を払拭できるかも注目される。

「WHOは中国の操り人形だ」。トランプ氏は18日にWHOを激しく非難してみせた。強硬姿勢を強める背景には、11月に大統領選を控え、米国内での感染拡大に対する野党からの責任追及をかわす思惑がある。WHO総会は新型コロナ対策に向け国際社会が団結する機会だったが、逆に課題の多さを浮き彫りにした格好だ。

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