三菱自、今期見通しは「未定」 日産との連携に活路

三菱自動車が19日発表した2020年3月期の連結最終損益は257億円の赤字と、1328億円の黒字だった前の期から急減した。国内販売を中心に苦戦が続くなかで、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要減がダブルパンチとなった。今期以降の立て直しの成否は、日産自動車・仏ルノーとの3社連合の協業をどこまで深化させられるかにかかっている。
「収益環境の悪化は想定以上だ」。電話形式の決算会見で、加藤隆雄最高経営責任者(CEO)は中国での景気減速や新型コロナウイルスによる需要減少を念頭にこう話した。
三菱自はコロナ禍以前から、特に国内販売で苦戦していた。昨年10月から連続で前年比マイナスが続き、そこに新型コロナによる販売不振が追い打ちをかけた格好だ。20年3月期の国内販売台数は9万4944台と前の期比9.1%減った。昨年5月時点で見込んでいた13万2千台には遠く及ばず、3年ぶりの前年割れとなった。
しかも三菱自の販売の落ち込みが本格化するのは今期になりそうだ。同社は21年3月期の業績予想を未定とした。池谷光司最高財務責任者(CFO)は「コロナの影響がいつまで続くのか全く不透明だ」と述べた。
部品の供給と生産調整を理由に、三菱自が国内工場で稼働停止に踏み切ったのは3月末だ。その後は断続的な再稼働を繰り返しているが、主力の多目的スポーツ車(SUV)「アウトランダー」を製造する岡崎製作所(愛知県岡崎市)などは現在も停止している。
この減産分は「販売減」として4~6月期以降に響いてくる公算が大きい。中長期的な影響を念頭に、三菱UFJ銀行などのメガ銀や日本政策投資銀行には計3000億円規模の融資を要請した。「現時点で手元資金に不安はないが、コロナ禍の長期化による資金繰り悪化に備えるため」(同社)だという。
先行きの不透明感が強まるなかで、立て直しのカギを握るのは主力地域の東南アジアだ。3月にはミニバン「エクスパンダー」の新型をタイとフィリピンに相次ぎ投入した。タイでは54億8000万バーツ(約180億円)を投じ、電気自動車(EV)を23年から生産する計画だ。
東南アジアを主軸とした成長を軌道に乗せられるかは、3社連合を組む日産・ルノーとの協業をどこまで深められるかが焦点となる。三菱自のインドネシア工場で日産の乗用車を委託生産し、日産は三菱自の基幹部品などを生産する。これ以外にもアジアで日産との協業を強めていく方針。
加藤CEOは今後の事業戦略を示す中期経営計画について「第1四半期(4~6月期)決算のタイミングをめどに発表したい」と述べた。今後2年間で、固定費を19年度比で2割以上削減するとも明らかにした。中期計画で構造改革や日産との協業で具体策をどこまで打ち出し、着実に進めていけるか。まもなく就任1年を迎える加藤CEOの実行力が問われる。
(寺井浩介)