中世音楽研究の皆川達夫氏 古楽の普及・伝道に尽くす

文化往来
2020/5/22 2:00
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2012年、国際音楽学会大会のためイタリアを訪れた皆川氏=中世音楽合唱団・脇屋緑氏提供

2012年、国際音楽学会大会のためイタリアを訪れた皆川氏=中世音楽合唱団・脇屋緑氏提供

4月19日に92歳で死去した中世・ルネサンス音楽研究の皆川達夫氏は16世紀後半、キリスト教布教のため日本に伝わった聖歌や、長崎の隠れキリシタンに歌い継がれた「オラショ」の研究で大きな成果を残した。指揮者として合唱団を率い、ラジオ番組ではクラシック音楽、とりわけバッハ以前の音楽の魅力を柔和な語り口で解説していた。古楽の伝道師だった。

水戸藩士の流れをくむ家に生まれ、少年時代は能楽や歌舞伎に熱中しつつ、レコードで聴いたグレゴリオ聖歌やルネサンス期の宗教曲に衝撃を受ける。戦時中は学徒出陣を逃れるため音楽研究を諦めて医学の道を目指したが、終戦後の1948年に東京大文学部に入学。米国や欧州留学を経て68年、立教大教授に就任した。

実演にも熱心で、52年には「中世音楽合唱団」を結成し自ら指揮した。皆川氏と同じ時代の音楽を研究し、50年以上の交流があった国際基督教大の金沢正剛名誉教授は「研究した結果を現代譜の形で出版し、自らの合唱団や全国の合唱団を指導した。研究成果を音楽ファンに還元した功績は大きい」と振り返る。

その功績の最たるものが長年にわたるラジオ解説だ。65~85年には「バロック音楽のたのしみ」、88年からは「音楽の泉」とNHKの番組に出演。「武家出身らしく、優しいけど句読点がはっきりとした話し方」(金沢氏)でクラシック音楽ファンの耳を楽しませた。

古楽への意欲は晩年になっても衰えなかった。箏曲「六段」のルーツがグレゴリオ聖歌の「クレド」にあるとする説を提唱。2012年にローマで開催された国際音楽学会大会で、同合唱団と箏の同時演奏で披露した。「音楽の泉」の最後の放送は今年3月。「ごきげんよう、さようなら」というおなじみの言葉で締めくくった。

(西原幹喜)

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