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コロナで1年延期 混迷の「五輪ロード」を行く

Tokyo2020
2020/5/21 5:30
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新型コロナウイルスの感染拡大や東京五輪・パラリンピックの延期は大会施設が集積する東京臨海部の街づくりに暗い影を落とす。東京都は都心と臨海部を結ぶバス高速輸送システム「東京BRT」の運行開始を延期し、民間の商業施設も開業日の変更に追い込まれた。今夏、東京五輪の注目スポットになるはずだった臨海部はどうなっているのか。

■車両基地・選手村・競技会場を結ぶ

大会関係者が使うバスなど約2400台が発着する車両基地ができる築地市場跡地。「旧青果門前」の交差点では工事用の仮囲いに描かれた大会マスコットの大きなイラストが目に飛び込んでくる。交差点から臨海部につながる「環二通り」は、輸送拠点となる車両基地と選手村や競技会場を結んでおり、今夏「オリンピックロード(道路)」になるはずだった。

工事の仮囲いには東京五輪・パラリンピックのイラストが描かれ、大会をPRする(東京都中央区の築地市場跡地)

工事の仮囲いには東京五輪・パラリンピックのイラストが描かれ、大会をPRする(東京都中央区の築地市場跡地)

「環二」とは、都道の環状2号線のこと。東京五輪をめぐって、都は環状2号線を「晴海の選手村とオリンピックスタジアムを結ぶ重要な道路」(建設局)と位置づけてきた。ただ都心の虎ノ門から築地や晴海を抜け、競技会場が集まる有明までをつなぐ延長約6キロの環二通りは、小池百合子都知事が豊洲市場の土壌汚染対策の不備を問題視し、市場の移転延期を決めたあたりから雲行きが変わってきた。

市場の移転が約2年ずれ込んだことに伴い、移転後に本格化する予定だった環二通りの地下トンネル工事も遅れた。現在、暫定的に使われているのは、3月28日に完成したばかりの「地上部道路」。上下2車線を確保しているが、上下4車線を備えるトンネルを含む全線開通は2022年度になる予定だ。大会の輸送を担う大動脈となるオリンピック道路という触れ込みは尻すぼみだ。

■東京BRT、運行延期に

築地から隅田川を渡ると、勝どきの超高層マンション群が見えてくる。いわゆる「湾岸タワマン」が集積する人気エリアだ。

マンションの前には東京BRTの停留所が設置されているが、看板はビニールシートに覆われたまま。都心と臨海部を結ぶ東京BRTは新型の連節バスを導入し、五輪前にプレ運行する計画だったが、5月24日に予定されていたデビューは無期延期になった。

東京BRTの停留所「勝どきBRT」では運行開始延期が告知されている(東京都中央区)

東京BRTの停留所「勝どきBRT」では運行開始延期が告知されている(東京都中央区)

「ベイエリアが持つポテンシャルを最大限に引き出して東京の成長に結びつける」(小池知事)と期待される東京BRTは出だしからつまずいた格好だ。近隣住民は「地下鉄の勝どき駅は混み合うからBRTを楽しみにしていたのに」と残念がる。

勝どきのタワマン群を抜けると、晴海の選手村予定地に着く。大会の司令塔である組織委員会が入居する高層ビル「晴海トリトンスクエア」からも近い。

選手村はほとんど完成している。ただ、大会後に選手村が賃貸・分譲マンションに生まれ変わり、23年春に住民の入居が始まるというスケジュールには遅れが生じる懸念が出ている。選手村跡地には約1万人が暮らすことになり、小中学校も整備される予定だが、23年春の開校がずれ込む可能性もある。

中央区の晴海と江東区の豊洲を結ぶ豊洲大橋。選手村を後にして、橋から東京湾を望めば、豊洲市場が視界に入ってくる。現在、市場はコロナ禍の影響で一般見学者の入場を制限しており、外国人観光客の姿もほとんどない。街は閑散としているものの、市場の隣ではホテルやオフィスビルの建設が進む。

感染拡大防止のため、工事も一時中断していたが、現在は再開しており、ビル建設を進める清水建設は「完成予定に変更はない」と強調する。この施設は環二通りに面した交通広場も備え、21年秋に開業予定。東京BRTや高速バスも乗り入れる都市型の「道の駅」になるという。

■有明、商業施設のオープン一部のみ

豊洲からさらに足を進めれば、いよいよ環二通りの終着点である有明に。ここは競技会場の密集エリア。有明体操競技場、有明アリーナ、有明テニスの森、有明アーバンスポーツパークが立地し、体操、バレーボール、テニスなどの熱戦が繰り広げられる。

住友不動産が開発した大型複合施設「有明ガーデン」。コロナ禍のため開業が延期された

住友不動産が開発した大型複合施設「有明ガーデン」。コロナ禍のため開業が延期された

この注目エリアに誕生するのが、住友不動産が開発する複合施設「有明ガーデン」。約200店舗の商業施設のほか、総戸数1539戸の高層マンション3棟、ホテル、劇団四季の劇場などで構成する大型プロジェクトだ。臨海部のにぎわい創出拠点をめざすが、コロナ禍のため当初、4月24日にオープンする予定だった商業施設は一部を除き開業できていない。

今回、訪れたのはオリンピック道路のうち、築地から有明までの3.5キロほどだが、五輪開催を前提に推進されていたプロジェクトが混迷の様相をみせていることがわかる。

「この道ずっとゆけば、最後は笑える日がくるのさ」。オリンピック道路を歩きながら、昨年、頻繁に耳にした歌の一節を思い出した。ラグビーワールドカップ日本大会で大活躍を見せた日本代表が士気を高めるために歌った「ビクトリーロード」。東京大会はコロナ禍を乗り越え、最後には成功を収められるのか。史上初の延期という道なき道を行く挑戦は続く。

(文 山根昭 映像 近藤康介)

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