レナウン破綻、従業員が告白「原因はコロナじゃない」

2020/5/19 12:13
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レナウンの社員証(出所:レナウン従業員である今村雅史氏=仮名の提供)

レナウンの社員証(出所:レナウン従業員である今村雅史氏=仮名の提供)

日経クロステック

「最悪の1日だった。結局、一睡もできずに朝を迎えた」――。技術系デジタルメディア「日経クロステック」の取材に応じた今村雅史氏(仮名、30代男性)は16日、うつむきながら現在の心境を明かした。表情に覇気はなく、声色からはいら立ちや悔しさがにじみ出ていた。

取材前日の15日、東証一部に上場する大手企業の1社が倒れた。社名はレナウン。同社は子会社を通し、法的整理の一つである民事再生法の適用を東京地裁に申請。15日までに受理され、事実上の経営破綻となった。負債総額は約138億円。新型コロナウイルスの感染拡大以降、国内の上場企業が経営破綻するのは初となる。

レナウンは1902年創業の老舗で、高度経済成長とバブルの追い風に乗って世界最大規模のアパレル企業まで成長した。衣類・雑貨の企画や製造、販売までを広く手掛け、「ダーバン」を筆頭に30以上のブランドを展開する。国内に数カ所の生産子会社を構えるブランド衣料メーカーの名門的な存在だ。

■頭が真っ白に…

そんな名門企業であるが、昨今のアパレル業界の競争激化には耐えられなかった。取材に応じた今村氏は、レナウンの物流部門に数年間勤める現役の従業員だ。同氏は、経営破綻当日のことを次のように振り返る。

「その日は夕方まで、所属部門で通常通りに勤務していた。直属の上司や他部署の管理職が打ち合わせに集まっていたが、その打ち合わせがなかなか始まらない様子だった」

「私は、担当する作業が終わったところで上司から『先に帰っても良いよ』と促されて退勤した。その帰り、報道で自社の経営破綻を知った。頭が真っ白になったが、すぐにこの状況をつくった親会社への怒りがこみ上げてきた」

経営破綻の原因は、本業であるアパレル関連の業績悪化に、新型コロナの感染拡大による世界的な需要の蒸発が追い打ちをかけたこと。ただ、今村氏は「世間は『コロナ倒産』として扱っているが、本質的な原因は別にある」と指摘する。

■中国親会社との対立

そもそも、新型コロナの影響を抜きにしても同社の業績は悪化していた。2019年12月期は67億円の当期純損失を計上し、前期に続いて2期連続での最終赤字に陥った。10年に中国繊維大手の山東如意科技集団から出資を受けたものの、ブランド力の低下を食い止められずに業績は低迷していった。

山東如意との関係は現在も色濃く、レナウンの株式を約5割保有する親会社となっている。「親会社の意向に反対できない風潮が社内にはあった」(今村氏)とし、抜本的な事業変革を実現できないまま、ずるずると経営破綻へと向かっていった。

20年2月には、同じく山東如意グループである香港企業からの売掛金の回収が滞り、レナウンは貸倒引当金を計53億円計上したと発表。同売掛金は回収のめどが立たず、レナウンと親会社の対立の溝をさらに深める結果となった。

■技術投資に遅れ

中国親会社との対立が続き、レナウンの競争力は徐々に落ちていく。販売戦略では、ファーストリテイリングの「ユニクロ」、しまむらのような製造小売り(SPA)に後れをとり、ビームスやサザビーリーグのようなセレクトショップ化も進まなかった。

百貨店やショッピングモールを通した代理店手法を使う旧来の販売戦略に固執していた。電子商取引(EC)の割合は売上比3%ほどしかなく、競合であるオンワードホールディングスの同13%に遠く及ばない。

製品開発では、50~60代の「ミセス世代」向けのブランドに注力し、若年層向けのブランドが育ちにくい環境にあった。加えて、新技術の導入にも遅れていた。一部の物流拠点では自動化が進まず、手作業での梱包や出荷に頼っていた。その結果、物流倉庫に人工知能(AI)やロボティクス技術の導入を進めるユニクロなどに効率性で劣っていた。

他の大手との競争に敗れて経営破綻という道を歩んだレナウンだが、今後は「スポンサー探しを行い、当社グループの事業の維持再生に取り組む」(同社)としている。ただ、経営破綻によるブランド力の低下は一層深刻なものとなり、事業活動の維持再生を担う人材確保の難易度は高い。

時代に合わせ、事業戦略を転換しなければ競争に負ける。かつての名門の凋落はそんな業界の厳しさを鮮明に映し出している。

(日経クロステック 窪野薫)

[日経クロステック 2020年5月18日掲載]

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