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ゴルフ再開へ バッグと責任背負ったマキロイ
編集委員 串田孝義

2020/5/20 3:00
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ゴルフの男子世界ランキング1位のロリー・マキロイ(英国)、同5位のダスティン・ジョンソン(米国)ら米ツアーの有力4選手が参加して行われた慈善大会が17日、米フロリダ州で行われた。2人一組で対戦し、ホールごとに賞金がかかるスキンズゲーム。現・元世界1位ランカーのマキロイとD・ジョンソン組が、オクラホマ州立大OBコンビのリッキー・ファウラー、マシュー・ウルフ(ともに米国)組に勝利した。

4選手全員がキャディーなし、バッグを自ら背負ってプレーした(左からマキロイ、D・ジョンソン、ファウラー、ウルフ)=USA TODAY

4選手全員がキャディーなし、バッグを自ら背負ってプレーした(左からマキロイ、D・ジョンソン、ファウラー、ウルフ)=USA TODAY

名だたるトッププロが学生時代よろしく軽量バッグを自ら担ぎ、一定の距離を保ってプレーするちょっと不思議な試合風景となった。ショット後のクラブを拭いてバッグに収めるのも、バンカーの砂を靴でならすのもすべて選手個人の役割。キャディーの弟、オースティン不在での戦いの感想をD・ジョンソンはこう語った。「これからはキャディーにもっと敬意を払うことにするよ。ただ散歩するんじゃなく、普段はきょうよりはるかに大きなバッグを持ち運んでいるんだからね」

無観客、テレビ中継の関係者も最小限に絞り込んで行われた4人だけのゲーム。ゴルフの米ツアーが中断に入った3月中旬以降、初めてテレビで生中継された試合とあって、展開は終盤一気に白熱し、6ホール分のお金がかかったプレーオフで勝負は決した。

ゴルフが社会に受け入れられるために

マキロイ組は米看護師基金のため、ファウラー組は米疾病対策センター基金への支援をめざしてプレーした。このほかバーディー、イーグルにも賞金がかけられ、テレビ視聴者の寄付と合わせて総額550万ドル(約6億円)が新型コロナウイルス救済基金に贈られることになった。

「大事なパットを打つ瞬間に感じた一種の興奮。これはこれまで毎週繰り返してきた日常に戻るための入り口だ。6月(再開予定)のツアーに戻り、プレーすることに興奮している」(マキロイ)。米国では他の主要プロスポーツに先駆けて、6月11日開幕のチャールズシュワブ・チャレンジ(米テキサス州)を開催する準備を進めている。

全米で235万人の視聴者がテレビ観戦した今回の慈善大会は、命を守ることが最優先されるコロナ禍にあって、プロスポーツが本業に戻ることを社会に受け入れてもらうための通過儀礼であり、コロナとの共生を図る「ニューノーマル(新常態)」なゴルフのあり方をトップ選手が率先してみせる、いろいろな意味で大きな挑戦だった。

レーキは触れないように撤去され、バンカーショット後のマキロイは靴で砂をならした=USA TODAY

レーキは触れないように撤去され、バンカーショット後のマキロイは靴で砂をならした=USA TODAY

ツアー再開に向けて、米ツアーはシニア、下部ツアーを含めた試合の移動用に最大170人を運ぶチャーター便を確保、宿舎も指定ホテルを押さえて利用を推奨するという。これらは試合会場から宿舎に至るまで選手と外部の隔離を徹底した上で、開催州に新たな感染を持ち込まないことを保証し、開催の理解を得る狙いだ。

ツアー内で行動する選手はまず開催地に到着時、鼻腔(びくう)検査などを義務づける。第1回はツアー再開週の月曜、テキサス州フォートワースで実施予定。それらはツアーの責任で行われ、「試合が開催される地域から検査機器や医療資材を奪うものではない」と、計画をまとめ上げたPGAツアーのタイラー・デニス運営委員長は強調する。会場に入る前に毎回必ず検温や問診を受け、コースでは握手やハイタッチの禁止、キャディーとの距離を保つためにクラブのバッグからの出し入れは選手自ら行うこととする。

首すくめて時を待つ国内ツアー

計画通り再開したとしても4試合は無観客が決まっている。プロアマ戦も行われない。かねて無観客でのプロスポーツ興行には否定的なトランプ米大統領はマキロイらの慈善大会のテレビ中継に登場、「以前のように何千、何万というファンがマスクなどせず観戦できる状態に戻ることをのぞんでいる」とコメント。ただ、そこに到達する道は険しそうだ。コロナ以前に戻るより、観客動員を興行の成否と結びつけるビジネスモデルの転換を進める方が早いかもしれない。

感染に限れば米国よりはるかに封じ込めに成功している日本だが、ツアー開催への社会的な理解は必ずしも進んでいない。社会的距離を保ちやすい屋外競技のゴルフがプロスポーツ再開の先陣を切ろうとしている米国と違い、日本ではゴルフの優先順位はプロ野球、サッカー(Jリーグ)の下にとどまっているようにみえる。

屋外へと飛び出した日本のゴルファーは「我慢できない大人たち」という風評にさらされた=共同

屋外へと飛び出した日本のゴルファーは「我慢できない大人たち」という風評にさらされた=共同

なかでも緊急事態宣言が出て世の中が外出自粛ムード一色のなか、パチンコ店の開店前の行列と、打席が満席のゴルフ練習場の風景を「我慢できない大人たち」の象徴としてテレビで盛んに流されたマイナスイメージは簡単に拭えそうにない。緊急事態宣言が全国で解除され、自粛で我慢を強いられてきた子どもたちの学校生活がまず元通りにならないことにはツアー開始をめざす宣言さえはばかられ、ただ首をすくめて感染流行の落ち着くのを待っている、というのが実情ではないだろうか。

県境越えの移動が問題視される現状において、開催自治体に容認される選手の移動方法はあるのか。米ツアーのように試合会場に入る選手、キャディーら限定された人だけでも検査できればよいが、日本では検査能力が追い付かない可能性が高く、検査を実施するにしても大会を主催するスポンサーに責任を委ねるだけとすればなおさら実現は至難。もっとも、米国と日本では感染流行の深刻さに差があり、全員検査の必要性の有無については専門家の判断次第だろう。

いったんは感染流行が収まっても、夏以降はリーマン・ショックを上回るといわれる経済不況が襲いかかる。企業の存続をかけて経費削減などあらゆる手を尽くそうと必死のスポンサーをどうつなぎ留めるのかが次なる難問だ。

パーティーの規模縮小、それに代わるイベントの工夫、参加者の適正規模の再設定など「コロナ共生」時代に開催可能なプロアマの新常態をいまから練っておく必要があるだろう。このままスポンサーにおんぶに抱っこの体制を続けるにしても、企業側に寄り添ったツアーの価値向上策を提案できなければ大会中止の荒波の第2波、3波にあっけなくのみ込まれることになりかねない。

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