トランプ氏、政権監視の妨害一段と 監察官を解任・交代
与党・共和も懸念

2020/5/19 7:28
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米政権内ではトランプ氏のお目付役は不在となっている(18日、ホワイトハウス)=AP

米政権内ではトランプ氏のお目付役は不在となっている(18日、ホワイトハウス)=AP


【ワシントン=中村亮】トランプ米大統領が政権監視の妨害を加速させている。ポンペオ国務長官の調査に着手した国務省監察官を解任し、後任にペンス副大統領の元側近を起用。新型コロナウイルス対策での医療物資の不足を指摘した厚生省監察官も交代させる。政権運営にマイナスとなる内部調査への報復人事とみられ、与野党からトランプ氏の強権的な政権運営に懸念の声が相次ぐ。

ポンペオ国務長官は18日、米メディアのインタビューで国務省監察官のスティーブ・リニック氏の解任をトランプ氏に進言したと明らかにした。国務省の業務に支障を及ぼしていたと指摘し、政治的意図に基づく解任ではないと主張した。トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し「リニック氏について何も聞いていない」と説明。事情を深く把握せずにポンペオ氏の進言に従って解任を承認したという。

野党・民主党のエリオット・エンゲル下院外交委員長は18日、解任の理由の一つにサウジアラビアへの武器売却の調査をあげた。国務省は2019年5月にイランの脅威に対応するとして通常は義務の議会承認を省略して武器売却を進めた。リニック氏はこの判断が適切だったか調査していたようだ。これ以外にポンペオ夫妻が部下に犬の散歩やレストラン予約などの私的雑務をさせた疑いも調べたという。

トランプ氏はこれまでも「ウクライナ疑惑」などをめぐり議会への資料提出や政府当局者の議会証言を拒否。合衆国憲法が定める議会の政権監視の役割を軽視する言動が目立った。民主党は残された数少ない監視手段である監察官による内部調査も政権が妨げた恐れがあることに懸念を強める。エンゲル氏は22日までにリニック氏の解任に関わる資料を提出するようホワイトハウスに求めた。

懸念は共和党にも広がる。重鎮のチャック・グラスリー上院議員は16日の声明で「単純な信頼の欠如という解任の理由は議会を納得させるのに十分ではない」と苦言を呈し、政権に経緯の説明を求めていく考えを強調した。スーザン・コリンズ上院議員も「大統領は法律が求める解任の正当な理由を提示していない」と断じていた。

国務省以外でも監察官の排除が相次ぐ。トランプ氏は厚生省監察官室が新型コロナ対策で人工呼吸器や検査キットの不足を指摘したことに強い不満を示し、5月上旬に監察官を交代させる方針を示した。4月には情報機関の監察官の解任も議会に通告した。ウクライナ疑惑をめぐり政府当局者の告発を議会に伝え、自身の弾劾訴追のきっかけをつくったことへの報復との見方が大半だ。

3月下旬に成立した経済対策のうち企業救済にあてる5000億ドル(約54兆円)の使途などを監視する特別監察官にはホワイトハウスの弁護士ブライアン・ミラー氏を指名。トランプ氏の弾劾裁判で弁護団に加わった政権寄りの人物だ。民主党のウォーレン上院議員は「独立した立場で仕事ができない」と批判。民主党は政権に近い企業が優先的に救済される事態などを警戒している。

政権内ではトランプ氏のお目付け役の不在が深刻だ。今春にホワイトハウスの統括役である大統領首席補佐官に就任したメドウズ氏は下院議員のころにトランプ氏の政策を一貫して後押ししたことを評価されて要職で起用された。ホワイトハウス内の規律を重んじて是々非々で苦言を呈し、トランプ氏と対立したケリー元首席補佐官などとは対照的とみられている。

安全保障を巡っても、元国防総省高官は「トランプ氏は外交政策への自信を深めて周囲の助言に耳を傾けなくなっている」と指摘する。1月にはイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」の司令官の殺害を突然決断し、イランとの全面戦争の瀬戸際まで対立を深めたことがあった。

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