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モンゴルで行き場失うカシミヤ 新型コロナで需要減

Nikkei Asian Reviewから

【エメールト(モンゴル)=ハリウン・バヤルツォグト】モンゴル経済に重要な高級素材、カシミヤに関わる産業が危機にひんしている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で需要が急減している上、入国管理の強化で中国から買い付け業者も来られず取引額が大幅に下落した。国民の3分の1がカシミヤ生産に携わるとされる中、政府は対応を急いでいる。

モンゴルのカシミヤ加工業者も、キャンセルが相次ぎ工場の稼働を止めた(T.アナンダ撮影)

「新型コロナのパンデミック(世界的流行)が全てを奪ったようだ」モンゴルで牧畜を手掛ける男性はこう嘆く。200頭のヤギからカシミヤを採取するが、取引量は昨年の3分の1程度だ。

柔らかく繊細な生カシミヤの取引額も1キログラムあたり4万5千ツグリク(約1800円)で、昨年の同11万ツグリクの半値以下だ。それでも男性はトゥブ県にある自分たちの牧草地から車で4時間かけて首都ウランバートルに近いエメールトの市場へ出向き、2キロの生カシミヤを売って生活費を現金で得た。

ここ数年は中国の貿易商や欧米の買い物客のおかげでカシミヤ需要は拡大し、モンゴルの牧畜民もヤギを増やしてきた。特に中国はモンゴルのカシミヤの8割以上を買い付け、セーターやスカーフなどへと織ることができる糸に加工する。

牧畜民は過酷な冬に蓄えたヤギの毛を採取し、春先に年間の3分の2を占める収入を得る。そこで費用を捻出しており、非常に重要な時期だ。

ところが新型コロナの感染拡大で世界中の工場が閉鎖され、中国の業者がカシミヤを買い付けずにいる。ある中国貿易商は「カシミヤの需要はほとんどない。不確実性が高く取引額が提示できない」と話す。モンゴルの繊維加工大手ゴビカシミヤ社も販売低迷を理由に2550人の従業員の10%を削減した。

モンゴル経済にとってカシミヤ産業は重要だ。世界のカシミヤの40%を生産し、金や銅といった鉱物を除けば最大の輸出商材だ。同国の約300万人の人口のうち3分の1がカシミヤ産業に携わっている。

モンゴルでは6月24日に総選挙を控え、フレルスフ首相は牧畜民への助成を発表した。加工業者にも牧畜民からカシミヤを買い取る価格に条件を付けた低利の助成ローンを打ち出したが、市場ではより安い価格で取引されており関心は低い。カシミヤ産業関係者の多くが政府に期待するのは、中国の貿易商や観光客が入国できるよう規制を緩和することだ。

モンゴルは早期の入国管理強化で国内の新型コロナ感染を抑え込んでいる。一方でカシミヤを手に取り品質を自分の目で確認したい中国人は来なくなってしまった。ある貿易商は「もし中国人が来られないのであれば牧畜民にとっては恐ろしいことだ」と話した。

英文はNikkei Asian Reviewに掲載しています。
(https://s.nikkei.com/2X4h7UR)

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