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藍染めブルーで涼やかに テレビ会議でも視線引き込む

宮田理江のおしゃれレッスン

NIKKEI STYLE

蒸し暑くなる時期に、涼やかなムードを呼び込める色がブルーです。なかでも天然藍染めの青は化学染料とは異なるナチュラルな色合い。愛着を持って服とじっくりつきあう「スローファッション」の流れにもなじみます。徳島県の伝統的な藍染めを取り入れた、日本の有力ブランド「matohu(まとふ)」の2020年春夏コレクションから、夏にうれしいさわやかイメージを寄り添わせる藍染め服の魅力を紹介します。

リモートワークでも好印象 涼しげでりりしいジャケット姿

藍染めならではのクールな色味のジャケットは、顔周りにもさわやかな印象を添えてくれます。見るだけで体感温度を下げてくれそうなブルートーンは、夏のお仕事ルックにもぴったり。上半身にブルーを迎えると、テレビ会議での見え具合もクールに。オーガニックコットンのガーゼ素材を使っているので、通気性に優れ、肌触りも快適。

グラフィカルな不ぞろい柄がボディーをシャープに演出。ボトムスは藍色と好対照の白でコントラストを引き出しました。トップスの程よいコンパクト感は、ボリュームのあるボトムスと合わせてもスマートな着映えに落ち着かせてくれます。ワイドパンツで伸びやかに、フレアやプリーツスカートで優美にといったコンビネーションを選べます。

軽さや風合いなどが認められ、和紙が服の素材として評価されつつあります。こちらは和紙糸で織り上げたジャケット。和紙ならではの自然なしわが穏やかな質感を寄り添わせています。色が均一の無地ジャケットに比べ、ひじから先と裾の部分に淡い色があしらわれたツートーンが印象的な着映え。近ごろ増えてきたテレビ会議でも視線を引き込んでくれそうです。

藍の液で染める回数を変えることによって、濃淡を出す「段染め」技法を使っています。工業的ではない、手仕事ならではの微妙な色味が上質感を漂わせました。胸元を隠す襟形だから、Tシャツの上にサッと羽織るだけで、お仕事ルックに早変わり。ラフなパンツやフェミニンなスカートなどのムードにも、無理なくなじみます。

スーツほどには堅苦しく見えにくいから、セットアップは一段と支持が広がってきました。オンとオフをまたいで着回しやすいのも、セットアップの強み。こちらのように、さわやかな色・柄のタイプなら、これからの季節に、涼しげな雰囲気とりんとしたキャラクターを演出するうえで重宝します。ふくらはぎがのぞくクロップド丈のパンツは足さばきが楽。スーツライクな統一感があるのに、型にはまって見えにくいという一石二鳥の着映えです。

涼しげで軽やか 風通しと品格兼ね備えた装い

英国の王室カラーになっていることからも分かる通り、ブルーは気品を印象づける色。夏は薄着になるシーズンですが、ブルーを上手に使えば、節度を保った装いに整えやすくなります。

体を締め付けない「サックドレス」形のワンピースは、ストレスフリー。ふんわりと広がった袖口は風が通るうえ、ロマンチックな印象。二の腕をカバーしつつ、きゃしゃ感も引き出してくれます。膝丈のワンピースは、1枚で着るほかに、パンツやレギンスに重ねて、着こなしのバリエーションを広げられるのも大きな魅力です。

左右が不ぞろいの「アシンメトリー」はトレンドが続いています。ワンピースで取り入れると、流れ落ちるようなシルエットが印象的な見え具合に。藍色には濃いインディゴカラーのイメージがありますが、淡いトーンの水色は、軽やかさが引き立ちます。

川のせせらぎを思わせる模様は、自然体ムードが漂い、気持ちを落ち着かせてくれそう。シャープなイメージをキープしつつも、素肌に付かず離れずのシルエットが楽な着心地に導いてくれます。

裾広がりのフレアスカートは、風通しがよいので、蒸し暑い日でも快適に過ごせます。裾にほのかな透け感を帯びたタイプは、さらに涼やかな見栄えに。おしゃれの基本色であるネイビーを軸に据えれば、トレンドに流されないタイムレスな品格ルックにまとまります。オーガニックコットンのガーゼに、濃淡をつけて染めてあるので、味わい深いカラートーンに仕上がりました。スカートはウエストがゴムだから、着心地がイージーなのはもちろんのこと、気負わない「抜け感」のある表情を生みました。

藍が導く「スローファッション」 複雑な色合いで上品な華やぎ

パーツごとに藍色の濃さが異なっていて、色に深みが加わったロングアウター。「まとふ」の代名詞なロングアウターが「長着(ながぎ)」です。着物風でありながら、ワンピースのようにも着こなせます。和でも洋でもない、オンリーワンの独創的ウエアはムードを変えられるマルチウェイ服でもあります。

打ち合わせ部分の内側に配したボタンの留め方次第で、何パターンにも着方をアレンジできるという工夫が施されています。ロングカーディガン感覚でラフに羽織っても上品に見えるので、様々なシーンで活用できそう。裏地にあたるライナーをのぞかせたり、ライナーを上にして着たりと、自由なレイヤードが楽しめます。

透明感を帯びたシルクショールは、藍染めの表現力を物語ります。徳島県の藍染作家「Saai」の田村美奈子さんが丁寧に手染めしました。淡いグラデーションが気品を薫らせています。まるで服のように白シャツに乗せて、藍と白の好相性を証明。Tシャツやノースリーブの上からふわりと重ねても、上品な華やぎをまとわせることができます。

サステナビリティーへの共感を着る 技術を受け継ぐ丁寧な営み

「まとふ」は日本の伝統的美意識を現代的に表現するクリエーションに取り組んでいるデザイナー2人(堀畑裕之、関口真希子)です。全国各地で受け継がれてきた技術や素材の紹介にも熱心で、徳島県の藍染めや、和紙の糸で仕立てる服などはサステナブル(持続可能)な取り組みとしても関心を集めています。

天然の植物を原料に、丁寧な手仕事から生まれる藍染めは、日本の風土に由来する服飾文化でもある点が再評価されています。技術を継承してきた匠(たくみ)へのリスペクトを示せる点でも、日本文化に根差した装いは、誇らしい気分をまとえそう。大量生産・消費からの卒業が求められる今、「ジャパニーズ・スローファッション」の魅力は一段と高まっているようです。

(画像協力)
matohu
https://www.matohu.com/
宮田理江
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートからトレンド情報、スタイリング指南などを発信。バイヤー、プレスなど業界経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした解説が好評。自らのテレビ通販ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。 著書に「おしゃれの近道」「もっとおしゃれの近道」(ともに、学研パブリッシング)がある。

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