ガーゼパジャマに京都の技 重ね縫う、ふわり眠りへ
匠と巧

関西タイムライン
2020/5/18 2:01
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重ねたガーゼ生地の間に空気の層ができ、通気と保温を両立する(京都府京丹後市)=目良友樹撮影

重ねたガーゼ生地の間に空気の層ができ、通気と保温を両立する(京都府京丹後市)=目良友樹撮影

新型コロナウイルスの影響で在宅時間が増えると、自宅での過ごし方に目が向く。通気性と保温性が両立し、良質な眠りを助けるという大東寝具工業(京都市)の「京和晒綿紗(きょうわざらしめんしゃ) ガーゼパジャマ」は、職人によって一枚一枚、手作業で作られる。その細やかな製作工程をのぞいてみた。

カタカタ、カタカタ。京都府京丹後市の縫製工場で、最大6枚を重ね合わせた純白のガーゼがミシンで縫い合わされていく。ここは大東寝具工業の協力会社、丸富産業(京都市)の工房。3人ほどの女性が工程ごとに役割を分担し、パジャマの縫製作業に取り組む。縫製業で40年以上のキャリアを持つ大木朋美さん(62)は、ガーゼの縁をやさしく引っ張りながら、ミシンを操作していく。

一般的なガーゼパジャマの工程では、重ねたガーゼ生地同士がずれないように織り合わせるが、大木さんらは切れ端がほつれない程度の縁止めにとどめる。生地と生地の間に空気が入り込むスペースを残すことで、パジャマそのものの保温性と透湿性が高まる。

ガーゼ1枚の厚さは約0.24ミリ。生地を織り合わせない分、2~6枚のガーゼが重なった生地は裏返すときにずれが生じやすくなる。大木さんは生地が立体的に組み上がった時に起こるずれを予測。時には重ね合わせたガーゼを1枚だけずらし縫い合わせていく。

ガーゼは伸縮性と通気性に優れているが、編み目が粗く形が崩れやすい。曲線状に縫い合わせていく襟部分の場合、ミシンのスピードを微調整しながらゆっくり作業を進める。繊細な作業ゆえ、大木さんらベテランの腕をもってしても1日2着の縫製が限界という。

袖を胴体部分に付ける作業やポケット付けの作業など、20パーツを30工程に分けて縫い合わせる。ガーゼに不純物が少ないパジャマは、洗濯するとガーゼに染み込んだのりが落ち、モコモコした風合いになる。実際に購入者に着てもらう時の形を予測しながら縫製するには、最低でも3~5年の修業が必要になる。

ガーゼパジャマを作る工房がある京丹後市は、1300年前から機織りの町として栄えてきた。後染め絹織物「丹後ちりめん」の産地で、その影響で縫製業に関わる世帯も多い。「昔は嫁入り道具がミシンだった」(大木さん)という土地柄が、熟練の裁縫職人「縫い子さん」を育てる。

1925年に創業した大東寝具工業は、長く京座布団や寝具を主力にしてきた。柔らかな綿を扱う独特の技術はガーゼパジャマにも息づき、ガーゼ綿を4日間、釜に入れて不純物を取り除く「和ざらし」という伝統工法が特徴。その繊細な生地を縫い上げる高度なミシンの技術を求め、京丹後市の工房と手を組んだ。

不純物が少なく、着心地の良いパジャマはデザインにもこだわり、特にコロナの感染が拡大した4月以降、外出自粛を続ける家族のために購入する人が増えた。「ストレスのかからないパジャマを体感してほしい」と同社の大東利幸社長。今後はハーフパンツや七分丈などの商品も増やしていく。

(高木雄一郎)

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