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J-REITの勝ち組を探す コロナショックで二極化進む

物流、住宅系に投資妙味あり

写真はイメージ=PIXTA

2~3月のコロナ・ショックでREIT(不動産投資信託)が大暴落したのは記憶に新しい。東証REIT指数は、一時、直近高値の半分の水準まで調整した。足元では1600ポイント台まで回復、落ち着きを取り戻したかのように見えるが、予断は許さない状況だ。投資する物件が何かによって減配リスクや価格下落リスクは異なる。また、今後はREITの中で二極化が進むという指摘もある。そこで投資対象に着目、「オフィス」「住宅」「物流」「商業」「ホテル」の5タイプ別に、プロの見通しと銘柄選別のポイントを紹介しよう。

【オフィス系】都心部主力の大型REITなら一定の安心感

市場の中核を担うオフィス系。過去最低水準の空室率を背景に、2019年前半の上昇局面では牽引役となっていたが、その先行きは急速に不透明になりつつある。

背景にあるのはコロナ禍だ。企業業績の悪化とともに、中小企業を中心としたオフィスの退去や縮小が見込まれるためだ。SMBC日興証券の鳥井裕史さんは、「東京都心の空室率が4~5%に上昇するのはやむを得ない。コロナ禍が長期化すれば一段の空室率上昇と賃料下落もあり得る」と指摘する。

コロナ禍を機に急速に広がるテレワーク化の流れもオフィス系には逆風だ。テレワークが進めばオフィスそのものの需要が縮小していきかねないためだ。大和証券の大村恒平さんは、「現在はこのリスクは相場に織り込まれていないが、長期的に見た場合には押し下げ要因にはなり得る」と話す。

全体的に環境が厳しいオフィス系だが、銘柄選別のポイントはどこにあるのか。まず、大企業が多く入る都心の大型優良物件を多く持つ銘柄は、比較的退去や賃料減額のリスクが小さいと言える。オフィス系の代表的な銘柄である日本ビルファンド投資法人(8951)やジャパンリアルエステイト投資法人(8952)はこの条件に合致する。

こうした大型銘柄は借入比率が概して小さく、新規物件の取得に動きやすいのもポイントだ。大型オフィス系の分配金利回りは、相場急変に伴い最大手でも3%台半ばまで上昇。コロナ禍前は2%台まで低下したものもあったことを考えると、投資妙味は出つつある。

逆に避けるべきなのは中小型オフィスビルを主力とするタイプだ。今後のオフィスの供給は少ないものの、テナントの多くが中小企業であるため、景気悪化の影響を強く受けやすく減配リスクも高い。アイビー総研の関大介さんは、「空室率は中規模以下のオフィスで先行して悪化するだろう」と指摘する。郊外の中小型オフィスビルを主力とする銘柄は、たとえ目先の利回りが高くても手を出さない方が無難だろう。

【住宅系】都市部の高級物件は底堅い 郊外のマンションは要警戒

住宅系REITは賃料下落リスクが比較的小さいとされている。個人が住居を移転する頻度は、企業のオフィス移転より低いためだ。減配リスクの小ささから、住宅系REITの投資口価格は底堅く推移しているものが多い。

ただ、その中にも優劣はある。オフィス系同様、底堅いのは都心の物件を多く保有するREITだ。単身や夫婦二人向けの高級物件の稼働率は高く、空室率の大幅な上昇は見込みにくい。「コロナ禍に伴い、利便性が高く通勤時間も減らせる都心物件の人気は高まりそうだ」(大和証券の大村さん)との見方も聞かれる。

逆に郊外物件を多く保有する銘柄では分配金減少のリスクがあり得る。都心物件の居住者は富裕層が中心であるのに対し、郊外物件は一般的なファミリー層が借りることが多い。

このため、「企業業績の悪化が進めば、郊外型では居住者はより安い賃料の物件を求める可能性がある」(アイビー総研の関さん)との指摘もある。住宅系では急速に業績が悪化する懸念は乏しいものの、中長期での保有を考えるならばポートフォリオの中身は精査した方がよさそうだ。

ポートフォリオの入れ替えの動きがあるかにも注目だ。入れ替えに伴って含み益のある物件を売却すれば、その売却益を分配金に充てることができるため増配の期待も出てくる。住宅系の一部ではこのような動きがある点には留意したい。

【物流系】巣ごもり消費で減配懸念薄い 分配金利回り低く割高感も

REITの中で成長性が高いと見なされているのが倉庫などを保有する物流系だ。巣ごもり消費を背景にインターネット通販の需要は拡大しており、それに伴い商品を保管する倉庫の需要も高まっている。多くの物流系REITの稼働率は100%近く、賃料の下落圧力もほとんど見られない。既に一部銘柄では、投資口価格がコロナ禍前を回復しているものもある。

巣ごもり消費の傾向は当面続くとみられるため、中長期で物流系は一般的に有望との見方が多い。特に有望なのは今後の新規物件取得が見込める銘柄だ。

大和証券の大村さんは、「株式のPBR(株価純資産倍率)に相当するNAV倍率が1倍以上の銘柄に着目したい」と話す。REITはNAV倍率が1倍以上だと増資して物件取得に動きやすいとされる。相場環境が荒れていることや、新規物件の供給が少ないことからこうした銘柄がすぐに増資を行う可能性は小さいが、「相場が落ち着いた段階で、物件取得による分配金の増額を狙う銘柄が出てくる可能性はある」(大村さん)。

気を付けたいのは分配金利回りの低さだ。安定性と成長性への評価から物流系REITへの買いが入った結果、最大手オフィス系より利回りが低い銘柄も出てきている。割安感が乏しくなっている点に加え、「コロナ禍が長期化した場合、借り手の企業体力が低下することに伴う賃料減額圧力が生じる場合もあり得る」(SMBC日興証券の鳥井さん)のも注意事項だ。

【商業系】国や自治体の要請内容次第で収益環境は大きく変わりそう

商業系REITは厳しい局面にある。コロナ禍における外出自粛要請で、商業施設の客数は激減。商業系ではオフィスや住宅に比べて入れ替わりが激しいだけに、テナントの経営状況の悪化は稼働率の悪化と賃料減額に直結しやすい。SMBC日興証券の鳥井さんは、「特に飲食店が主なテナントの物件は厳しいだろう」と指摘する。

ただ、収益悪化懸念が過度に警戒されている可能性もある。というのも、国や自治体がテナントオーナーに対して行う要請内容が現時点では不透明なためだ。

アイビー総研の関さんは、「要請内容が賃料の支払い猶予か、それとも減額・減免かでは大きな違いが出る」と話す。支払い猶予であれば賃料はいずれ振り込まれるため、収益の期ずれが生じる程度で済むが、減額か減免だと収益への影響は長期間に及ぶ可能性がある。この点を見極めた上で投資判断をした方がよさそうだ。

保有物件の中身も重要になる。大和証券の大村さんは、「コロナ禍でも需要がある生活必需品を売るスーパーを主力テナントに持つ銘柄の減配リスクは比較的小さいが、ブランドショップなども抱えるモール系銘柄は厳しくなる」と話す。外出自粛が長期化すれば、この差はさらに広がりそうだ。

株式での自社株買いに当たる自己投資口取得の動きもある。日本リテールファンド投資法人(8953)のような大型REITが行う傾向があり、投資口価格を下支えする要因にはなりそうだ。

【ホテル系】利回り10%超も登場 減配覚悟で長期保有も?

ホテル系REITには激しい逆風が吹き付けている。コロナ禍以前から都市部物件の過剰供給懸念があったところに、コロナ禍によるインバウンド(訪日外国人)の激減が直撃した。インバウンドの急回復が見込めない中、ホテル系では分配金予想を非開示にしたり、大幅減配に踏み切ったりする動きが相次いでいる。ホテル系の復活の目はあるのか。

市場関係者の見立ては意外にもそこまで悲観的ではない。まず、業績悪化と分配金の減額はかなり投資口価格に織り込まれたという点だ。「コロナ禍の収束が見えないため短期での本格的回復は望めないが、一度収束すれば大きなリバウンドはあり得る」(SMBC日興証券の鳥井さん)との指摘もある。

利回りが10%以上の銘柄も登場するなど、割安感も際立ってきた。アイビー総研の関さんは、「仮にその程度の利回り水準であれば、分配金が3割減っても利回りは7%と考えることも可能だ。減配を容認して長期保有する手はある」と話す。

インバウンドに対する期待も根強い。大和証券の大村さんは、「東京五輪が予定通り2021年に開催されるなら、インバウンドの回復はあり得る」と話す。この場合、東京都心部のビジネスホテルを多く保有する銘柄で戻りは大きくなるとの指摘もあった。

とはいえ、現状ではコロナ禍が早期に収束する兆しはない。投資するなら減配と値下がり覚悟の長期目線ということになりそうだ。

(川路洋助)

[日経マネー2020年7月号の記事を再構成]

日経マネー 2020年7月号 アフターコロナの勝ち組日本株

著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP
価格 : 750円 (税込み)

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