欧州でEV販売快走、1~3月6割増 コロナ禍でも勢い

2020/5/16 16:30
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テスラ「モデル3」が欧州のEV販売をけん引(独フランクフルト市内のショールーム)

テスラ「モデル3」が欧州のEV販売をけん引(独フランクフルト市内のショールーム)

【フランクフルト=深尾幸生】新型コロナウイルスの影響で世界の新車市場が壊滅的な状況に陥るなか、欧州で電気自動車(EV)が健闘している。2020年1~3月の欧州18カ国のEV販売台数は前年同期から6割増え、販売台数に占めるシェアは5%に近づいた。4月は英国で米テスラが販売台数首位となるなど原油安でも勢いは衰えない。域内で始まった環境規制もあり、EVが浸透する「新常態」が生まれる可能性がある。

「(EVなどの投入計画は)予定通り。妥協は一切しない」。独BMWのオリバー・ツィプセ社長は5月上旬の記者会見で訴えた。同社はコロナ対策でハンガリー工場の新設を延期するなどコロナ禍で緊縮に動くが、23年までに25車種のEVとプラグインハイブリッド車(PHV)を投入する方針は堅持し、投資にメリハリをつける方針だ。

背景にあるのは好調な販売だ。BMWの1~3月のドイツでのEV・PHVの販売は前年同期から5割伸びた。これは全体の傾向でもいえる。

欧州自動車工業会(ACEA)が12日に発表した欧州主要18カ国の1~3月のEV販売台数は12万7331台と前年同期比で57%増えた。欧州連合(EU)が20年から段階的に導入した新しい二酸化炭素(CO2)排出規制も影響しているが、新型コロナの影響で新車市場全体が27%減となるなか好調さが際立つ。

EVの域内販売に占めるシェアは2.5ポイント上昇し4.6%に達した。PHVは2.3倍に増え9万6073台。EVとPHVなどを合わせたプラグをさし充電する車両のシェアは4.8ポイント上がり8.1%になった。

店舗の営業禁止などで新車販売が歴史的低水準となった4月も粘りをみせた。域内最大市場のドイツでは全体の販売台数が前年同月比61%減と、1990年の東西ドイツ統一以来で最低水準となるなか、EVは3%減にとどまった。市場全体が97%減で46年2月以来の最低となった英国でもEVは10%減どまりだ。

英調査会社LMCオートモーティブのアナリスト、ジョナサン・ポスキット氏はEVが粘った背景について「最大の理由はテスラ。(オンラインで完結し店舗に行く必要がない)非接触販売が奏功した」と分析する。英国の4月はテスラ「モデル3」が首位、英ジャガー・ランドローバー(JLR)の「Iペース」が2位とEVが上位を占めた。4月は全体が縮んだ影響が大きいが、4月の同国のEVのシェアは31.8%と前月の4.6%から大幅に上昇した。

欧州ではノルウェーが19年からEVのシェアが5割前後になっている。他国でも普及が加速する可能性は十分にある。追い風は各国が検討する新型コロナからの経済復興をにらんだ販売奨励策だ。

ドイツでは「イノベーションプレミアム」と呼ばれる奨励金の導入が政府や自動車メーカーの間で議論されている。消費者は環境性能の悪い車両を最新のEVなどに乗り換える際、価格面などでの優遇が受けられる。

ディーゼル車などの内燃機関車も優遇対象とするかの議論や、19年まで多額の利益をあげていた自動車業界の救済に反対する声もあるが、独政府は6月にも方針を示す見通しだ。

各社はEVを低迷する市場の光明として期待する。独フォルクスワーゲン(VW)は戦略EV「ID.3」を生産する独東部のツウィカウ工場をコロナによる休止から最初に再開する完成車工場の1つに選んだ。8月の出荷開始予定が遅れないよう挽回する構えだ。

背景にはメーカー、利用者それぞれの思惑がある。

メーカーにとっては現状のEVはガソリン車などと比べ製造コストが高く、利益貢献は低い。電池価格が下がりコストで同等になるのは25年ごろの見通しだ。それでも各社はEUのCO2規制を満たせなかった場合の罰金を考慮し、今はコスト高でもEVシフトを進めた方が得策とみているようだ。

利用者には足元の原油安で維持費で比べたEVの魅力は薄れているが、英独などでは購入時の補助金や社有車向けの税制優遇が拡充された。さらに新型コロナで交通量が減り、大気汚染に直面していたパリなどの空がきれいになった。欧州の有力な環境団体、T&E(輸送と環境)は「コロナからの回復は汚い内燃機関に戻らずクリーンな明日のモビリティを作るチャンス」と訴えている。

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