阪急阪神HD、苦難の鉄道・ホテル 不動産の重み増す
20年3月期純利益16%減 コロナ響く

阪急阪神ホールディングス(HD)が14日発表した2020年3月期の連結決算は、純利益が前の期比16%減の548億円だった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛で、鉄道などの都市交通やホテルが落ち込んだ。人口減少で鉄道事業の大きな伸びが期待しにくいなか、ブランドを生かした梅田周辺の大規模開発が今後のカギとなりそうだ。
売上高は4%減の7626億円、営業利益は17%減の951億円。競争激化に訪日客の急減が重なり、ホテル部門の営業損益は31億円の赤字(前の期は12億円の黒字)に転落した。都市交通の利益も400億円と8%減り、新型コロナは営業利益を154億円押し下げた。21年3月期の業績見通しは未定とした。

「梅田の魅力を高めることでオフィスや商業施設に新型コロナの影響がないようにしたい」。大塚順一執行役員が決算会見で期待を込めたのは不動産事業だ。グループの百貨店はエイチ・ツー・オーリテイリングの傘下であり、阪急阪神HDの稼ぎの主力は都市交通と不動産。いずれも営業利益の4割ほどを占める。
不動産の利益は20年3月期は前の期にあった用地売却の反動で16%減の415億円にとどまったが、それでも都市交通を上回る。不動産の売上高営業利益率は20%前後と、10%台の京阪電気鉄道や1~3割で振れ幅の大きい南海電気鉄道より安定的に稼ぐ。大手不動産7社による19年の「住んでみたい街ランキング」関西版で1~5位が阪急電鉄の駅となったように、高いブランド力が背景にある。
不動産部門の売上高はマンション分譲とオフィスや商業施設の賃貸が半分ずつで、ストックとフローのバランスを保つ。足元ではマンション販売を伸ばし、19年度の分譲戸数は前年度より4割増えた。今後は首都圏にも力を入れる。

オフィスや商業施設では、大阪梅田ツインタワーズ・サウス、JR大阪駅北側の「うめきた2期」など大規模開発が進行中だ。グループのお膝元とも言え、高いブランド力を持つ梅田の開発に期待をかける。
テレワークなど生活様式の変化でオフィス需要が減る可能性もある。それでも「工事が進んでいる開発は遅滞なく行う方針だ。中期経営計画も現時点で見直しは考えていない」と大塚執行役員。25年度に掲げる営業利益1200億円に向け、不動産事業の価値向上を急ぐ。(金岡弘記)

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