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「元の生活には戻れない」緊急事態解除、期待と不安と

開店前にテーブルを消毒する居酒屋の店主(14日、名古屋市東区)

愛知や福岡、茨城などを含む39県で、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言の解除が決まった。政府が対象を全国に広げてから約1カ月。苦境の老舗居酒屋が客足の回復に期待する一方で、感染リスクを恐れてなお休業を続ける経営者も。「元の生活に戻すことはできない」。緊張感をにじませたまま、新たな日常が始まる。

「街に人が出るきっかけになってくれれば」。名古屋市東区のオフィス街にある老舗居酒屋の男性店主(56)は14日、緊急事態宣言の解除を知り、常連客らが店に戻ってくることを期待した。

愛知県が緊急事態宣言の対象地域に含まれたのは4月16日。同店も長く休業していたが、大型連休明けの5月7日、営業再開に踏み切った。

ランチの売り上げは休業前より少し伸びたが、夜はコロナ以前の4分の1。県の要請で午後7時に酒類の提供を止めており「居酒屋にとっては痛い」。開店前の消毒など感染防止に気を配りながら、時短要請が解かれ、深夜までの通常営業に戻せることを心待ちにしている。

もともと企業の接待利用が多く、売り上げの回復は「だいぶ先になるだろう」と楽観はしていない。悩みは宣言解除でどれだけ街に人が増えるか見通せず、日持ちしない鮮魚の仕入れが難しいことだ。旬のカツオやマダイを無駄にしないよう、卸業者と交渉し、1尾ずつではなく切り身で仕入れることにした。

感染リスクを恐れて休業を続ける経営者も。名古屋市中区で居酒屋を営む女性(48)は「感染者が出たら店はつぶれてしまう。愛知の感染が完全に収まるまでは我慢する」。月30万円の家賃負担が重いが、金融機関からの融資でしのぐ予定だ。

愛知県では5月に入り、新規感染者の数は減っているが、宣言が解除されても「感染の第2波」に不安を抱く人は多い。

「きのうから大きな公園でのお散歩を解禁しました」。育児休業中の名古屋市の女性(31)は14日、5歳と2歳の息子を連れて市内の名城公園を訪れていた。

長男の通う幼稚園は休園中で、友だちと遊べないストレスが心配だ。少しずつ行動範囲を広げるつもりだが、宣言解除後もスーパーの買い物は客が少ない時間帯を狙い、子連れの友人と会うのも控える。「まるっきり以前の生活に戻すことはできない」と話す。

福岡市では、中洲の屋台や中心部の商店街が営業再開の準備に入った。店主らは店舗の掃除や料理の仕込みに加え、新型コロナウイルスの感染防止対策を急いだ。

中洲で串焼きなどを提供する屋台を営む田中博臣さんは「いきなり感染拡大前と同じ状態は難しいが、15日から営業したい」と意気込む。休業前に保存が難しい食材を廃棄したので野菜など調達の間に合わない材料もあるが、冷凍品を使うなどして、提供可能なメニューで再開する予定だ。

同市中洲などの約40店が加盟する博多移動飲食業組合は、各店舗に5月末までの休業を求めていたが、県の休業要請解除が公表され次第、営業再開を容認する方針。

「気を緩めるわけにはいかない」。愛知県や福岡県などと同じく、緊急事態宣言の解除が決まった茨城県で、特別養護老人ホームなどを運営する女性は表情を引き締める。

女性が運営する常総市の特養には約70人の高齢者がおり、重度の介護を要する人もいる。海外の介護施設でのクラスター(感染者の集団)発生を受け、2月末から家族との面会を中止。高齢者と密着する入浴支援の際は職員にマスクの交換を徹底させるなど、細心の注意を払ってきた。

今後、気がかりなのは東京都など緊急事態宣言が解除されていない地域との人の往来だ。同施設は県南に位置し、家族が都内の職場に通っている職員もいる。女性は「今まで通り感染対策を続けていく」と話す。

県は今後の感染状況を見極めながら、段階的に外出自粛や学校活動の緩和を進める方針。当面は週末・夜間の外出や大規模イベントなどの自粛要請を続ける考えという。

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