EUが条件付き緩和、移動制限
観光も再開

2020/5/14 17:26
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【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)が新型コロナウイルス対策でとっていた域内の移動制限の緩和に動き出した。移動の増加は感染が再び広がるリスクと背中合わせだ。夏のバカンス期を前に観光業の活動再開も認めるが、制限の緩和は条件付きで緩やかに進める構えだ。

新型コロナウイルスは観光業に大きな影響を与えた(ベルギーの海岸、4月)=AP

新型コロナウイルスは観光業に大きな影響を与えた(ベルギーの海岸、4月)=AP

13日、EUの欧州委員会が域内の移動再開に向けた戦略を公表した記者会見で、ベステアー上級副委員長は「観光で生計を立てる人や今夏に旅行したい人に、よりよい季節を送るチャンスを与える」と力説した。もちろん、制限なく移動を認めるわけではない。

欧州委は感染拡大防止の具体例を例示した。旅行者に航空券をオンラインで買い、旅行中はマスクを着用するよう強く推奨。バスの乗客が降車ボタンに触れずに済むよう全バス停に停車させたり、乗客に症状が出た場合の対策を事前にまとめたりするよう事業者に促した。空港や駅での殺菌用ジェルの設置や、バスや列車の定員減の検討も求めている。

グループ旅行の人数に上限を設け、多数の集会を禁じる。美術館や文化遺跡は予約制にし、機内では食事や飲み物の提供を取りやめ乗務員との接触を減らす。旅行と同様、出張も認められるが、感染者が増えるなどした場合は旅行禁止を含む対応を視野に入れる。

欧州委は移動制限を緩める基準として(1)感染状況(2)移動先での封じ込め措置の実施(3)経済とのバランス――の3つを提示した。こうした基準を満たすか次第で国境を徐々に開くよう促している。

部分的な解除の例として、国全体でなく一部地域への移動を認めたり、感染を封じ込めている特定の国からの移動を受け入れたりすることを挙げた。そのうえで人やモノの自由な移動は欧州統合の重要な柱だとして、最終的には完全な解除をめざす方針を明示した。

EUが観光の解禁を急ぐのは、特に南欧諸国の観光産業への依存度が高いからだ。4月下旬、フランスやギリシャなど9カ国の観光相は欧州委に「対応をとらなければ経済が崩壊してしまう」などと記した書簡を送り、夏季休暇をとれる環境づくりを要望した。

観光業はEUの域内総生産(GDP)の1割を占める。世界旅行ツーリズム協議会によるとクロアチアではGDPの25%で、ギリシャは20%を超える。イタリアやスペインは15%弱だ。経済への影響も比例する。欧州委の経済見通しでは2020年の実質成長率がイタリアやスペイン、ギリシャが10%近いマイナスなのに対し、ドイツやオランダは6%台の下げ幅にとどまる。

関連分野も含め域内で2300万人の雇用を抱える観光業が危機に陥れば景気低迷が長引き、社会不安にもつながりかねない。感染者数が落ち着いてきたこともあり、欧州委は緩やかな移動制限の解除を提案した。

ただ欧州で死者数が15万人を超えるなか、見切り発車の面は否めない。ベステアー氏は「我々はリスクをとる」と感染の再増加と背中合わせであることを認めた。欧州委の提案に強制力はなく、最終的に制限を緩めるかは加盟国が決める。

独政府は13日、国境封鎖を段階的に緩和し、6月に撤廃すると発表。チェコもオーストリアとスロバキアとの国境を6月上旬に開放する方針だ。バルト3国は5月15日に相互に国境を開く。

一方、スペイン当局者はロイター通信に「7月まで国境閉鎖を維持する」と語った。3月中ごろには各国は事前調整なく独断で国境検問の導入に踏み切り、物流停滞など混乱を招いた。今回も同様の恐れがある。加えて欧州委は、感染が多い国との国境封鎖を続けるなど差別的な措置が横行することを懸念している。

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