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楽天モバイルが契約数示さず まだ見えない事業の道筋

サービス開始早々、新型コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされた楽天モバイルの店舗。ウェブ経由での契約比率が9割を超え、獲得への影響は小さいというが……
日経ビジネス電子版

楽天の2020年12月期第1四半期(1~3月)の決算は営業損益が241億円の赤字となった。自前で回線を敷設する第4のキャリアとして4月に始めたモバイル通信事業の先行投資がかさみ、モバイルセグメントが318億円の営業赤字となったことが響いた。記者会見では契約実績の数字を示すことはなかった。コストの安い通信システムの輸出で稼ぐという絵を描くが、安定して動くことの証明に時間を要する。楽天モバイルのビジネスはまだ先が見えない状態だ。

13日の決算会見では報道陣とアナリストから、新たな携帯電話サービスの契約実績について質問が飛んだ。三木谷浩史会長兼社長は「予定通りの進捗」と述べるにとどめた。

同社は先着300万人を対象に月額料金を1年間無料にする大盤振る舞いを展開中だ。三木谷氏は「300万人は年内に獲得する一つの目標。それに対して、こんなものだろうという感じ」と話す。楽天がモバイル通信事業に参入したことは知られているが、まだテレビCMを全国的には放映していないため1年間無料であることなどの認知度が低い、とも語った。今後、第2、第3のキャンペーンを用意しているという。

契約数を巡って正面から答えることはなかったが、状況がうかがえる三木谷氏の発言が2つあった。1つは「既存のMVNO(仮想移動体通信事業者)からの移行を加速させる必要がある」というもの。楽天は約230万回線のMVNOユーザーを抱えており、そこからの切り替えを促したい考えだが、想定ほど進んでいないようだ。サイト上でワンクリックで切り替えの申し込みができるようにして、1年以内に70%くらいのユーザーを移行させたいとした。

もう1つの発言は「携帯電話サービスの申込者の大半は、楽天の他のサービスを使ったことがない」というものだ。楽天は携帯参入に際し、楽天会員IDが延べ1億件を超すという分厚い顧客基盤を強みに挙げていた。実際は、楽天市場などのヘビーユーザーに携帯サービスがあまり響いていないようだ。

この2つの発言から、楽天が持つ強みがまだ発揮できていない現状が浮かび上がる。JPモルガン証券の田辺純アナリストは「メイン利用が見込まれる他社からの乗り換えを獲得できていればポジティブだが、今のところ契約の1割に満たないと推察している。多くは2台目のお試し契約だろう」と見る。NTTドコモの吉澤和弘社長も「楽天の新規参入による影響は特に出ていない」と話す。1年間の無料キャンペーンが終わり、月2980円の課金が始まったときに「高い解約率になる可能性がある」(田辺氏)。

明確な契約実績を示さなかった三木谷氏だが、こんな数字を公言した。「損益分岐点となる契約数は700万人だ」

システム外販には1~2年必要

これについて、田辺氏は「自社回線エリアの基地局整備が不十分で、KDDIとのローミングが続く。その間は達成は難しいだろう」と見る。楽天がMVNO事業で獲得したユーザー数は4年間で約160万(残りの70万は競合他社の事業買収によるもの)。「単純計算では、ユーザーの獲得スピードをMVNO時代の3倍に引き上げる必要があるが、容易ではないだろう。MVNOの時からポイントサービスとの連携などには取り組んでおり、新サービスとの違いは通信速度が向上したことくらい」。収益化は長期戦になりそうだ。

それでも携帯事業を手掛けるメリットとして楽天が強調しているのが、世界初とうたう完全仮想化技術の優位性だ。通信システムを汎用サーバー上に構築したことで投資コストが抑えられているうえ、機能の拡充など柔軟性にも優れているとする。決算会見とその後の事業説明会では大半の時間がその説明に割かれた。海外の通信会社からの引き合いが強いといい、通信プラットフォームサービスとして売り込むために、米国のエンジニアリング会社を買収したことを発表した。

三木谷氏はプラットフォームを海外展開することでモバイル事業の将来性が変わるとし、「今はマイナス(損失)があるかもしれないが、大きな問題ではない。日本の事業者が通信分野で世界のメインプレーヤーになる可能性が出てきた」と話した。

ただ、海外の通信事業者に採用されるためには、日本で安定して運用できたという証明を示す必要がある。田辺氏は「最低でも1~2年はかかる」とみている。国内ユーザーの拡大にせよ、海外事業者への通信プラットフォーム輸出にせよ、進む道は険しい。強気を貫く楽天だが、裏付けとなる数字はまだ見えない。

(日経ビジネス 佐藤嘉彦)

[日経ビジネス電子版2020年5月14日の記事を再構成]

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