「緩和ちゅうちょせず」日銀総裁、FT主催対談で強調 - 日本経済新聞
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「緩和ちゅうちょせず」日銀総裁、FT主催対談で強調

(更新)

日銀の黒田東彦総裁は14日、英フィナンシャル・タイムズ(FT)主催のイベントに参加し、新型コロナウイルスの招く経済悪化の長期化をにらんで「必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」と重ねて強調した。緩和手段については「資産購入の拡大や資金供給の拡充、利下げなどができる」と述べ、なお政策発動余地があるとの考えを示した。

黒田氏はFTチーフ・エコノミクス・コメンテーターのマーティン・ウルフ氏とインターネット上で対談した。

景気動向については「日本経済はパンデミック(コロナの世界的な流行)の深刻な影響を受けている」と指摘した。新型コロナの感染拡大が和らげば「今年後半には世界と日本の経済は回復に向かいうる」と話す一方、それまでの間に「企業倒産を回避できなければパンデミックの終了後も経済は回復できない」とした。

日銀は3月と4月の金融政策決定会合で、上場投資信託(ETF)や社債など金融資産の購入枠を大幅に引き上げたり、金融機関に企業向け融資の原資となる資金を有利な条件で供給するオペ(公開市場操作)を新設・拡充したりと、追加の金融緩和策を立て続けに決めた。その目的について「企業などへの必要な資金供給と金融市場の安定維持だ」と説明した。

国債の購入については、政府の大型経済対策と国債の増発による金利上昇圧力を見据え、年80兆円としていた残高増の「めど」をなくして制限なく買えるようにした。日銀が長期金利を0%程度に誘導するため必要な国債を買うことで、「ほとんど自動的に財政と金融政策の協調が行われる」と語った。

中央銀行が財政赤字を穴埋めする財政ファイナンスという見方については「国債を制限なく購入することは一時的な措置だ」として否定的な考えを示した。

物価上昇率については政策委員会のメンバーの見通しとして2020年度はマイナスに沈み、21年度以降にはプラス圏に復帰するものの伸びは鈍くなると説明した。「2%目標を達成するにはかなりの時間がかかる」とも語った。ただ、コロナの影響が一巡した後に経済は再び成長に向かうため、「現時点で日本がデフレに舞い戻るとは想定していない」と強調した。

日本の金融システムについては、銀行による貸し出しの拡大などを理由に「現時点では安定している」との見方を示した。だが、新型コロナの世界的な流行が続き、経済の落ち込みも続けば、不良債権の増加などを通じて「金融システムの安定にも影響が出るかもしれない」とも指摘した。マイナス金利の深掘りについては実施する余地があるとしつつ、「現時点では必要ない」との考えを示した。

新型コロナへの政策対応を巡っては、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長も13日の講演で「経済の長期停滞を回避するために追加の政策手段が求められるだろう」と語った。世界の中銀は3月以降、大規模な資産購入や資金供給、利下げといった政策手段を駆使してきた。だが、コロナの終息や経済回復の道筋はなお不透明で、さらなる対応を求められる可能性が高まっている。

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