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ディープ産駒が春を席巻、父系発展へ明るい兆し

2020/5/16 3:00
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近年の日本の競馬界をけん引してきた種牡馬、ディープインパクトとキングカメハメハが2019年夏に相次いで死んでから1年近くが経過した。その時点でキングカメハメハの血脈は後継種牡馬のロードカナロアやルーラーシップを通じて広がりをみせていた一方、ディープインパクトの方は影が薄かった。だが、ようやくディープにも頼もしい後継が現れた。19年に初年度産駒をデビューさせたキズナが多くの活躍馬を送り出している。現役のディープ産駒からもコントレイル(牡3、栗東・矢作芳人厩舎)が強い内容で3歳三冠の第一関門、皐月賞(G1、中山芝2000メートル)に勝つなど、種牡馬入り後の活躍が見込める後継候補が登場した。父系の発展に向け、明るい兆しがみえてきた。

コントレイル(手前)は無敗で4月の皐月賞を勝った(中山競馬場)=共同

コントレイル(手前)は無敗で4月の皐月賞を勝った(中山競馬場)=共同

ディープインパクトは首の不調から19年春の交配を中断。けい養していた社台スタリオンステーション(北海道安平町)が回復を図るべく手術に踏み切ったが、その後、頸椎(けいつい)骨折が確認され、同年7月30日に安楽死処分となった。

当時のディープの後継種牡馬ではディープブリランテとトーセンホマレボシが重賞勝ち馬を出したのが目立つ程度。死後に有力な後継候補が現れるのかに注目が集まっていた。

大きな期待を寄せられたのが13年の日本ダービー馬で、今年の3歳世代が初年度産駒となるキズナだった。キズナの産駒は昨夏のデビュー以降、期待にたがわぬ活躍をみせ、すでに中央の重賞を5勝。3歳世代だけで中央の種牡馬ランキング(産駒の獲得賞金の順位)の11位(5月10日時点)に入る健闘ぶりだ。

種牡馬としてのキズナの長所は、様々な条件で産駒が活躍している点にある。昨夏以降、芝に出走したキズナ産駒の連対率(2着以内に入る割合)は19.1%だが、パワーが必要とされるダートでも20.4%と高い数値を記録している。5つの重賞勝利も芝1200、1600、1800、2000、2200メートルとすべて違う距離でのものだ。

こうした傾向は父のディープインパクトには見られなかった。ディープ産駒はダートより圧倒的に芝向きで、19年1月以降でみても連対率は芝25.7%、ダート17.9%。短距離戦も得意とはいえず、芝1200メートルの最初の重賞勝ちは産駒デビューから5年が経過した15年夏と遅かった。

現役時代、最も重い時でも体重が452キロだったディープと比べると、キズナは514キロとパワフルな体つきをしていた。芝2400メートルのダービーに勝ったが、現役時代にキズナを管理した佐々木晶三調教師(栗東)が同馬の引退後「安田記念(G1、芝1600メートル)に出走していたら、ベストパフォーマンスを見せられたと思う」と語るほどスピードもあった。こうした強みが産駒のオールマイティーな活躍につながっているようだ。

ほかにも、ディープ後継種牡馬であるリアルインパクトの初年度産駒、ラウダシオン(牡3、栗東・斉藤崇史厩舎)が5月10日のNHKマイルカップ(G1)を勝つなど、この春はディープに絡む明るい話題が多い。

コントレイルはディープ最晩年の傑作?

現役のディープ産駒、コントレイルは無傷の4連勝で4月19日の皐月賞を制した。同馬は2歳時にG1、ホープフルステークス(中山芝2000メートル)を勝ち、19年の最優秀2歳牡馬に選ばれた。過去、2歳時に国内のG1を勝ったディープ産駒は性別を問わず、コントレイルを含めて7頭いるが、同馬を除く6頭は3歳クラシックで一度も馬券に絡めなかった。1戦ごとの消耗が激しいのか、成長力に乏しいのか、若い時に活躍したディープ産駒はその後、振るわないという傾向が強かった。

だが、コントレイルがこうしたジンクスを払拭した。後方から馬群の外側を回って追い上げた内容も強く、2冠目の日本ダービーも最有力候補といえる。母系が短距離型でダービーの2400メートルは不安材料ではあるが、皐月賞の内容から「距離は延びても大丈夫」と主戦騎手の福永祐一は語る。

ディープインパクトの父サンデーサイレンスが最晩年にディープを送り出したように、コントレイルがディープ晩年の傑作である可能性は高い。引退後に種牡馬となるのは確実で、繁殖面での活躍も期待できそうだ。

5月3日の天皇賞・春(G1、京都芝3200メートル)でもディープ産駒初の記録が生まれた。フィエールマン(牡5、美浦・手塚貴久厩舎)が19年に続いてこのレースを勝ち、3つ目のG1勝利を挙げたのだ。G1で3勝以上したディープ産駒の牡馬は同馬が初めてである。

フィエールマン(14)は3日の天皇賞・春を勝ち、ディープインパクト産駒の牡馬で初めてG1を3勝した(京都競馬場)=共同

フィエールマン(14)は3日の天皇賞・春を勝ち、ディープインパクト産駒の牡馬で初めてG1を3勝した(京都競馬場)=共同

ディープ産駒はこれまで牝馬の活躍が目立った。G1を最も多く勝ったのは国内外で7勝を挙げた牝馬のジェンティルドンナ。フィエールマン以前は、サトノダイヤモンドなどの2勝が牡馬の最多記録だった。G1の3勝すべてが層の薄い3000メートル以上の長距離戦であるとはいえ、この壁を打ち破ったフィエールマンの功績は大きい。

いま生産界ではスピードのある馬の需要が高く、長距離馬の人気はない。だが、手塚調教師は天皇賞・春のレース後、「この距離がベストとは思っていない。もっと短い距離の方が(末脚の)切れ味が出ると思う」と語った。次戦は、阪神芝2200メートルの宝塚記念(6月28日、G1)に挑戦する予定。この中距離でも勝てれば、有力なディープの後継となる可能性がある。

(関根慶太郎)

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