会計が分かるクイズ 「中食」企業対決
クイズで学ぶ会計知識(3)

ハードルが高い、難しいというイメージがある会計。しかし、実際のビジネスを念頭に入れて財務諸表を読むと、驚くほど企業の特徴が会計に反映されているのが分かる。SNS(交流サイト)で話題の「大手町のランダムウォーカー」こと福代和也さんが出題する会計クイズを解いて、ビジネスや投資に役立つ企業への理解を深めていこう。
今回のテーマは、
【稼ぎ方は損益計算書に出る(中食編)】
自宅で総菜や弁当を食べる「中食」が定着して久しい。ただ、同じ弁当メーカーでもそのビジネスモデルは大きく異なる。今回はそのビジネスモデルの違いがどう収益構造に出るかを学ぼう。

コンビニ向け弁当のわらべや日洋と、「ほっともっと」のプレナス。同じ弁当を扱う企業だが、その中身にはある大きな違いがある。下の損益計算書2つは、AとBそれぞれどちらのものだろう?



Point1 わらべや日洋HDのビジネスモデル

商品の価値の流れである「バリューチェーン」は3つに分けられる。商品の企画・開発(川上)、そして商品の販売やサービス(川下)は共に参入障壁が高く、利益率も良い部分だ。半面、製造(川中)はこの2つに比べると参入しやすいため付加価値も付けにくい。わらべや日洋HDはこの川中部分に特化したビジネスモデルと言えるだろう。
Point2 プレナスのビジネスモデル

プレナスはバリューチェーンで言えば川上から川下まで全てを自前で手掛けている。これはSPA(製造小売り)の特徴の一つで、利益率が高い川上と川下を押さえることで川中だけのメーカーよりも利益率を高くすることができる。同社の場合FC(フランチャイズ)店からのロイヤルティー収入もあるため、売上原価率はさらに低くなる。

中食は価格競争が激しいが、対応方法は各社とも異なる。利益率の低い川中(製造)に特化し、取引先としてコンビニ最大手のセブンイレブンと組むのがわらべや日洋HDだ。安定収益が期待できる上、コンビニでは価格競争がさほど激しくないのもポイントと言える。プレナスは川上から川下まで一貫して押さえることで利益率を高めている。フランチャイズ店の活用も価格競争を生き残るための戦略だ。

●わらべや日洋HDは利益率の低い製造部門に特化。純粋なメーカーのため売上原価は大きく、低営業利益率
●低利益率を補うため、わらべや日洋HDはコンビニ最大手のセブンイレブンとの結びつきを強め安定供給源を確保
●プレナスは商品の企画から製造、販売までを一貫して行うSPA(製造小売り)の側面が強く、利益率は比較的高め
●FC店からのロイヤルティー収入もプレナスの収益に貢献。単価下落に耐えやすい構造
福代和也さん

Funda 代表取締役。中央大学専門職大学院修了、PwCあらた有限責任監査法人を経て2018年から現職。会計およびマーケティングに関するコンサル業務をメインに行う。「大手町のランダムウォーカー」としてSNS上で会計クイズを出題中。
共同作成者:西尾奎亮
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