コロナ禍で評価を高める企業 IT投資に着目
広木隆のザ・相場道

日経マネー
2020/5/15 2:00
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新型コロナウイルスの影響で経済が壊滅的な打撃を受けている。米国の新規失業保険申請件数は、4月18日終了週までの5週間で2600万件を超えた。米国の労働者数は約1億6300万人だから、概算で7人に1人が失業(保険を申請)したことになる。

米議会予算局(CBO)は4~6月期のGDP(国内総生産)が年率換算で前期比40%減に落ち込むと予測した。四半期ベースでは戦後最大のマイナスで、失業率も14%に達すると予想している。

大変な事態だが、希望もある。あまりに急激に落ち込んだということは戻りも速い可能性がある。短期間にこれだけ大勢の人が職を失ったのは、逆に言えば米国の労働市場が柔軟で流動的なことの表れだから、再雇用もまた速いだろう。

■感染が収束すればV字回復に向かう

前回のコラムでコロナ禍は直下型地震のような災害と述べた。自然災害なのでリーマン危機のような人為的なショックとは違う。これも前回述べたが、リーマン危機の本質は、サブプライムローンのバブル崩壊だ。だから、元に戻るには時間がかかった。なぜなら崩壊する以前の経済はバブルの上に成り立っていたからであり、その状態に短期間で戻るにはもう一度バブルを起こすしかないからだ。

コロナ禍が意味するものは、新型ウイルスによって人々の「普通の暮らし」が奪われたということだ。だから感染が収束すれば非常事態から平常時に戻るのは比較的ハードルが高くない。需要は消えておらず、抑制されているだけだ。供給サイドも同じだ。行動制限などで、企業はモノやサービスを提供したくてもできない状態にある。

それが解除されれば需要も供給も比較的短期間で戻るだろう。実際、前出の米CBOは4~6月期の大幅な落ち込みの後の7~9月期以降は、V字型の景気回復を見込む。21年は3%近い経済成長に戻るとの予想だ。

果たしてV字形の回復となるか、より緩やかなU字形となるか、あるいは低迷がしばらく続くL字形となるか。それぞれのシナリオの実現確率は無論、誰にも分からない。ただ、時期は不明だが「いつかは戻る」というのはほぼ確実だ。半面、「戻らない」不可逆的なこともある。

■危機下でIT強化市場の評価の鍵に

「アフターコロナ」の世の中はどうなるだろう。まず人々の生活習慣が以前より衛生的になる。うがい、手洗い、マスク着用が習慣化される。働き方も変わる。テレワーク、時差出勤、フレックスなどだ。会議もリモートで行われることになる。これらは仕事の進め方を効率的にするだろう。今回のコロナ・ショックは、掛け声だけでなかなか進まなかった働き方改革を強制的に進め、生産性を高めるカタリスト(触媒)になるだろう。

ところがテレワークが定着している企業とそうでない企業の二極化が見られる。そもそも在宅ではできない仕事もあるが、多くの理由は制度、そしてシステムやテクノロジーの不備によるものだろう。それゆえに、これを機会に設備投資、特にIT(情報技術)投資を進めることが肝要である。

ここでは無形資産のうちのソフトウエアをIT投資の代理指標として、従業員1人当たりのソフトウエア額を集計した。上場企業のうちデータ取得可能なサンプルを従業員1人当たりのソフトウエア額の大きさで5つのグループに分けた。結果、ソフトウエア投資額の大きい企業ほど労働生産性が高くなっているのが分かる。ROE(自己資本利益率)も高い。

この従業員1人当たりのソフトウエア投資額と株価の関係を見ると、有意に正の関係が見られる。つまり、従業員1人当たりのソフトウエア投資額が大きい企業は株価も高くなるということである。

このコロナ禍を契機に一段とIT投資を進めた企業は生産性も向上し市場からも評価されるようになる。ここでのIT投資の踏み込み方で伸びる企業とそうでない企業の差がつくだろう。

確かにこれだけの危機を経験すると企業はお金の使い方に慎重になり投資には消極的になるかもしれない。しかし、アフターコロナの働き方の環境整備のための投資はワイズスペンディング(賢い支出)だ。そうした企業は市場の高評価で報われるだろう。投資家も、企業の姿勢を正しく評価するようにしたい。

年内の日経平均予想
1万9000~2万5000円
【ここに注目】経済が年後半V字回復するシナリオは十分考えられる。その場合、株価も年初来高値を抜ける。

広木 隆(ひろき・たかし)

国内外の運用機関でファンドマネジャーなどを歴任。株式・為替からマクロ経済まで幅広い知見を基に自らヘッジファンドも立ち上げた。2010年からマネックス証券で顧客向けに情報を発信。バイサイド時代の経験から斬る相場分析や展望に定評がある。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。

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