EC・物流テックに投資マネー コロナ下の注目分野

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コラム(テクノロジー)
2020/5/18 2:00
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新型コロナウイルスの感染拡大が響き、創業間もないスタートアップ企業の資金調達件数と調達額は減少している。ただし、特定のリテールテック(小売り向け先端技術)分野では投資家の関心はむしろ高まっている。例えば、対人距離を保つソーシャルディスタンス(社会的距離)規制を受けて、オンラインショッピングの改善やサプライチェーン(供給網)の迅速化、食品・料理配達を手がける企業は順調に資金を調達している。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

コロナ禍で投資家の関心はどの分野に移っているのだろうか。世界保健機関(WHO)が「パンデミック(世界的な大流行)宣言」を出した3月11日以降にベンチャーキャピタル(VC)が出資した初期段階(シード、シリーズA)の小売りスタートアップの資金調達に注目した。初期段階のラウンド(資金調達)に焦点を当てることで、今年活動が盛んになりそうな分野を予測できる。

それでは、どんな分野に注目が集まり、それが小売りの未来について何を示しているかを見ていこう。

■注目の分野

電子商取引(EC)やサプライチェーン・物流のテクノロジーを手がける初期段階のスタートアップへの関心は世界的に昨年の水準よりも高く、実店舗のテクノロジーを手がける企業を上回っている。食品・料理配達への注目度も増しているが、この分野は比較的規模が小さい。

分野別の初期段階の小売りスタートアップによる資金調達件数
(2019年3月11日~19年4月30日と20年同時期との比較)

分野別の初期段階の小売りスタートアップによる資金調達件数
(2019年3月11日~19年4月30日と20年同時期との比較)

伸びている小売り分野を見回すと、「デジタルを活用したつながり」と「自動化」が投資の2大テーマとして浮かび上がった。ライブ動画を通じて商品を販売する「ライブコマース」や食品卸売りプラットフォーム、自動配達ロボット、リアルタイムのデータ収集・分析ツールなどへの投資がこれに含まれる。

■消費者のオンライン移行でネット通販が活況

20年3月11日~4月30日の初期段階のECスタートアップによる資金調達では、消費者が求めるバリュー(お得感)やコミュニティー、使い勝手の良さに応える企業への関心が高かった。

初期段階のECスタートアップへの投資テーマ(20年3月11日~4月30日)

初期段階のECスタートアップへの投資テーマ(20年3月11日~4月30日)

この期間の中古品販売・レンタルサイト運営会社の資金調達件数は17件だった。仏セルティディール(Certideal)など修繕した電子機器を再販する企業や、洋服や書籍、小物類のフリーマーケットサイトを手がける企業などが資金を調達した。

レンタルサービスでは、スペインの女性用ドレスのレンタルプラットフォーム「La Mas Mona」やインドの伝統衣装を貸し出す米リヤ・コレクティブ(Riya Collective)など洋服のレンタルが大半を占めたが、絵画レンタル(日本のカシエ)やキャンピングカーのレンタル(スイスのマイキャンパー)なども出資を受けた。

双方向の接客コンテンツでコミュニティーをつなぐスタートアップも注目を集めた。中国のライブコマース「特抱抱(Tebaobao)」「構美(Goumee)」、韓国の同「Solo Monster」や、チャットでやり取りしながら買い物できる韓国のECサイト「d.code」などもこの期間に資金を調達した。

卸売業者や小規模企業による自社製品の法人・消費者向けネット販売を支援するプラットフォームも明るい分野だった。例えば、インドのショプティマイズ(Shoptimize)はブランドのECサイト構築を支援する。ミャンマーのEzayやパキスタンのTajirは農村部の商店と卸売業者をオンラインでつなぐ。

■サプライチェーン・物流の自動化と簡素化

初期段階のサプライチェーン・物流スタートアップによる資金調達では、物流の速さや透明性、柔軟性などのビジネスニーズに応える企業への関心が高かった。

初期段階のサプライチェーンスタートアップへの投資テーマ(20年3月11日~4月30日)

初期段階のサプライチェーンスタートアップへの投資テーマ(20年3月11日~4月30日)

速さについては、国境を越える配送を円滑化する企業などが含まれる。例えば、米ヌーボカーゴ(Nuvocargo)や中国の芥舟科技(Jiezhou Technology)は企業の国際物流や取引の管理を支援する。一方、ケニアのアミトラック(Amitruck)はアフリカ全土でのトラック配車サービスを手がける。

自動配達も迅速な配達を可能にしてくれる。医療物資を配達するドローン(小型無人機)を開発した米アビオン(Avion)など、ドローンを活用したラストワンマイルの配達を手がける企業や、自動配達ロボットを手がける中国の新石器(Neolix)などが出資を受けた。物流も注目度が高い。例えば、米エルロイ・エアー(Elroy Air)は重さ250~500ポンド(約110~約230キログラム)の荷物を配達できるドローンを開発している。

サプライチェーンのデータ可視化ツールも注目の分野だった。一例はブロックチェーン(分散型台帳)技術を使って農場から消費者までを追跡する仏コネクティング・フード(Connecting Food)だ。インドのロケール(Locale.ai)やスイスのデータプレド(Datapred)はアナリティクス(分析)を活用して影響を予測したり、様々な在庫計画の活動を勧めたりする。

■食品・料理の配達

食品・料理の配達では、新鮮で栄養価が高い食品、コミュニティーの支援、食事の利便性が注目されている。

初期段階の食品配達スタートアップへの投資テーマ(20年3月11日~4月30日)

初期段階の食品配達スタートアップへの投資テーマ(20年3月11日~4月30日)

生鮮食品では、インドのメラキサン(Mera Kisan)、インドネシアのチリベリ(Chilibeli)、ノルウェーのダーゲンス(Dagens)がそれぞれ農家や供給業者と家庭とを生鮮品の配達で結びつけ、地元の農家を支援している。

バーチャルキッチン(宅配専用レストラン)への出資状況から、利便性が注目点になっていることもわかる。インドのビッグスプーン(BigSpoon)、フィリピンのクラウドイーツ(CloudEats)、米ハイドアウト(Hideout)は様々なバーチャルキッチンサービスを手がける。一方、サウジアラビアのテーカー(Taker)などのプラットフォームは、レストランの注文サイト構築を支援している。

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