企業型DC、人に勧められた商品はNG コストに注目
Dr.マネーお悩み外来 Vol.2

Dr.マネーお悩み外来
コラム
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2020/5/26 2:00
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本日もお金の悩みを抱えた人が「白鳥FP事務所」にやってきました。年齢不詳、自称ある女優似のFP白鳥京香は、お金に関する悩みならばどんな相談にもお答えします。

Case1-2: 情報サービス会社にお勤めの新入社員の男性Aさん(22)が2度目の診断にやってきました。新入社員研修で企業型確定拠出年金(DC)の説明を受けたものの、Aさんは投資を始めることをためらっていました。前回の処方箋は、
・資産運用は、将来必要になるお金を、合理的に、長期にわたってゆっくり増やしていくこと。投資対象はグローバルに分散することが大切
・投資は納得してからスタートすることが肝心
でした。

白鳥 Aさん、心なしか今日は顔が少し怖いような……。どうかしました?

Aさん 白鳥さんに言われたように、投資は納得してからスタートしようと思いまして、とりあえずDCは元本確保型の定期預金100%としておきました。でも、金利は0.01%……。お金、増えませんよね。研修では、運用の結果次第で将来受け取れる給付金の額が違ってきます、うまく運用して着実にお金を増やしていきましょうと言われましたけど。私、お金を増やしたいんです! 長期でグローバルに分散投資することが大事なんですよね。で、結局、何を買えばいいのですか!?

白鳥 何を買えばいいか早く教えてくれないと困る。そういうことですね。でも落ち着いてください。みなさん、すぐに「何を買えばいいのか」と商品名を知りたがりますが、それが事故の元なのです。

Aさん 事故!?

白鳥 そうです事故です。人に聞くのではなく、自分で選ぶべきです。

Aさん そんな、無理です!

白鳥 難しくはありません。ポイントになるのはコストです。長い期間運用すると、運用コストの差によって運用成果に大きな差が生じます。グラフをご覧ください。仮に、100万円を年率5%で20年間運用できたとしましょう。もちろん、実際にこんな風に一直線の右肩上がりにはなりませんが、イメージはつかんでいただけると思います(いずれも税金等は考慮していません)。

(1)は運用成果からコスト(信託報酬)が0.5%引かれた場合。実質年率は4.5%です。

(2)はコストが1.5%だった場合。実質年率は3.5%になります。

(3)はコストが2.5%だった場合。実質年率は2.5%です。

Aさん 1年でみると最大1%にすぎない差なのに、20年積み重なっていくと運用結果に大きな差が生じるということですか……。

白鳥 投資をする私たちから見れば、手数料は確実にマイナスになります。幸い、確定拠出年金制度は購入の際にかかる「販売手数料」がゼロ(ノーロードといいます)で、信託報酬という運用時にかかる手数料が低く設定されているなど、事故を小さくするための仕組みが機能していることも多いのですが、中にはそうでないものも……。長期で運用していくのに何を選べばいいのか、の答えはずばり、「信託報酬の低いもの」ということです。言い換えれば、「なるべくお金を増やすのに効率がよいもの」を選ぶことです。

Aさん つまりは、グローバルに分散投資をするコストの安い投資信託を買えばいいんですね。なぜなら、信託報酬は、長期の運用成果に大きな影響があるからということ、ですか。これって、「借金が雪だる式に膨らむ」っていうのとなんか関係あります?

白鳥 いいところに気が付きましたね! そうです、「複利」ってことなのです。いまおっしゃった「借金が雪だるま式に」はマイナスの複利効果のことですね。「複利」とは、例えば、100万円を5%で1年間運用した場合の収益は5万円です。その5万円を使わないで、元本の100万円に加えてさらに1年間運用すると、105万円の5%で、収益は5万2500円になります。さらに、それも合わせて110万2500円を運用すると、3年目の利益は5万5125円です。これを20年間続けると、グラフの「5%で運用した場合」をごらんください。100万円は265万3298円になります。これが複利です。

Aさん 増えてますね。複利のパワーですね。

白鳥 そうです。利益を再投資することで、時間を味方につけて、「複利」で資産を増やしていくことができます。複利は、マイナスではなく、ぜひとも長期投資の武器としたいですね。

では、Aさんにクイズです。22歳のAさんが、100万円を7.2%で複利運用すると、32歳の時にいくらになっているでしょう?

Aさん え? 暗算ですか。……無理です。

白鳥 答えは200万円です。さらに42歳まで運用すると400万円になります。52歳まで運用すると800万円に、62歳には1600万円に、72歳には3200万円、82歳には6400万円。そして、92歳にはついに1億越え、1億2800万円です!

Aさん 早っ! でも、白鳥さんの暗算が早いわけではなさそうな……。

白鳥 するどい! 実は、元本が倍になるための年数がわかる「72の法則」です。「利率×期間(年数)= 72 」 の式に当てはめただけです。

「72÷7.2%=10」なので、資産は10年で倍になります。「72の法則」、便利でしょう。覚えておいてくださいね。さて、お昼休みもおしまいのようですね。今日の処方箋をお渡しします。

◇  ◇  ◇

・利益を引き出さずに運用を続けると複利効果が期待でき、複利効果は運用期間が長いほど大きくなる。

・複利は逆に働くこともあるので注意。低コストの商品を選びましょう。

◇  ◇  ◇

白鳥 私、時々、ちょっとしつこいって言われるのですが、もう一回来られますか? 長期投資でもう一つ大切なことをお伝えしたいのです。2週間後お待ちしています。

岩城みずほ(いわき・みずほ)

ファイナンシャルプランナー(CFP)。オフィスベネフィット代表。「金融商品を販売することによるコミッションを得ず、中立的な立場でコンサルティングする」をモットーに、NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長も務める。著書に『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)など。https://www.officebenefit.com/

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