「戦後最大の危機」で始動したヘリコプターマネー
テレビ東京アナウンサー・佐々木明子のモーサテ日記

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2020/5/16 2:00
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国内外の経済の動きを毎朝いち早く伝えるテレビ東京「Newsモーニングサテライト」。そのメインキャスターを務める佐々木明子さんが、金融・経済の最前線の動きや番組制作の裏話などをつづる。

佐々木明子(ささき・あきこ)1992年、テレビ東京入社。アナウンス部に配属されスポーツ担当に。2006年にニューヨーク支局勤務となり「Newsモーニングサテライト」(月~金、5時45分~7時5分)を担当。帰国後、2014年から同番組のメインキャスターを務める

佐々木明子(ささき・あきこ)1992年、テレビ東京入社。アナウンス部に配属されスポーツ担当に。2006年にニューヨーク支局勤務となり「Newsモーニングサテライト」(月~金、5時45分~7時5分)を担当。帰国後、2014年から同番組のメインキャスターを務める

■コロナで一変した近隣の風景

新型コロナウイルス対策で在宅勤務が増え、通勤時間が削られた。新たに生まれた時間をどう使うか。せっかくなので、夫婦でジョギングをすることにした。老後に備えて健康寿命を延ばさねばならない。

ところが夕方のランニングコースは、平常時の渋谷かと思うほどの混雑ぶり。これは感染リスクが高いと判断し、早朝6時に変更した。澄み切った空気に、鮮やかな緑。コロナ禍がウソのように全てが輝いている。しかし町中を走るうち、厳しい現実が見えてきた。

「ここもあそこも休みだね」。至る所にしばらく休業、との張り紙が。家族経営の居酒屋、豆腐店、おなじみの青果店。こうした小規模企業は、売り上げが「蒸発」すればひとたまりもないはずだ。走りながら不安感が押し寄せてきた。

入りくんだ細い道に入ると、そこからは木造の古い小さな家が連なる一角で、ふと思い浮かんだことを口にした。「もし火事が起きたら、ここは狭くて消防車が入れないね」「そうしたらヘリコプターから水をまくしかないだろうな」。そうか、いつも番組で議論してきた「ヘリマネ」はつまりそういうことなのだ。

■必要なところに十分届くか

「ヘリコプターマネー」の意味は、その名の通りだ。ヘリコプターから町中に現金をばらまくかのように、消費者や企業に対し、中央銀行と政府がお金を供給すること。究極の経済政策といえる。

経済指標の絶望的な落ち込みを前に、各国は景気を支えようと巨額のお金を市中にばらまく。日本は全国民に10万円を配るのだから、まさに現金が空から降ってくる「ヘリマネ」だ。だが、ヘリコプターは本当に必要な場所に飛んでいくだろうか。燃え盛る火事が起こっているのは、中小零細企業。日本政府の中小企業対策は欧米に比べスピードが遅い。急がないと火事は延焼してしまう。

政府は今回、地銀や信用金庫を通じた無利子・無担保での融資に踏み切った。このような措置は異例中の異例。すぐに信金を取材したが、「無利子融資など想定していなかったため、システム変更に時間がかかる」とのこと。結局、人海戦術で対応せざるを得ない。しかし信金自身も、多くの人員が在宅勤務だ。殺到する電話相談にリモートで対応している。経済活動を強制的に止めるのだから、サポートする金融機関も100%の力がない。これが感染症相手の闘いの難しさだ。

いくらお金をばらまいても、外出は自粛で使いようがない。しかし景気のために活動再開を早めればコロナ第2波のリスクが生じる。ワクチンができるまで「ヘリマネ」で時間を稼ぐしかないのだろうか。

日経マネー 2020年6月号 乱気流相場で好機をつかむ日本株

著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP
価格 : 750円 (税込み)

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