倒産ゆるやかに拡大 4月15%増、非集計の廃業に懸念

サービス業や小売業を中心に倒産が緩やかに拡大している。東京商工リサーチが13日発表した全国企業倒産速報によると4月は743件と前年同月比15%増えた。2ケタ増は5カ月連続で、リーマン危機時の4カ月連続を上回った。新型コロナウイルス関連倒産は71件で5月13日時点で累計142件になった。倒産扱いにならない廃業を選ぶ事業者も多く、事業継続をあきらめる「隠れ倒産」はより多いとみられる。
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業種別にみると、4月に倒産が最も多かったのは外出自粛の直撃を受けた宿泊や飲食を含む「サービス業」で253件。2019年10月の消費増税や暖冬の影響でコロナ以前から販売不振だったアパレルなどの「小売業」の114件が続く。倒産した企業で雇用されていた従業員数は6990人で、約5年ぶりに6000人を超えた。
1月に2%だった負債10億円以上の件数の構成比は4月には3.4%と徐々に上がっており、倒産が中小零細から中堅規模の企業に広がっていることを映している。新型コロナの感染拡大に伴う経済活動の急停止は、業種や規模を問わず企業経営に打撃を与えており、それが5カ月連続の2ケタ増につながっている。

ただし倒産件数そのものは700件程度で、1500件を超える月もあったリーマン危機後の半分程度にとどまる。金融緩和の長期化で、景気動向と倒産件数の相関が薄れているという構造要因もあるが、最も大きいのは金融支援の手立てが増えていることだ。
金融庁はリーマン危機後につくった中小企業金融円滑化法のしくみを復活させ、返済条件変更の依頼にできるだけ応じるよう金融機関に求めている。対応の報告を義務づけた結果、3月10日から同月末までに返済猶予など条件変更の申し込みがあった2万6592件のうち、審査を終えた約1万件の99.7%で条件を変更した。
全国銀行協会も中小企業が決済手段として使っている手形について、約束した期日に資金を用意できなくても「不渡り」の処分を猶予する特例措置を始めた。北洋銀行の安田光春頭取は「企業は資金繰りに詰まると倒産するが赤字だけでは倒れない」と指摘。「今は民間や政府系金融機関が懸命に資金を出しており、倒産が急増するとは考えていない」と話す。
外出自粛で思うように集客できない中でも倒産の増加が緩やかな背景には、破産申請を受け付ける裁判所の業務縮小という面に加え、倒産集計に載らない廃業を選ぶ事業者が増えている可能性もある。昨年の倒産件数は8383件で11年ぶりに前年を上回ったが、「休業・廃業」は5倍の4万3000件だった。
コロナの収束が見通せないうえに、緊急事態宣言の解除後も行動様式が元通りには戻らないとの懸念が根強い。「新たな借り入れよりも、事業継続をあきらめて廃業する経営者が増える」(東京商工リサーチ)との見方が多い。影響が長引けば、金融支援では持ちこたえられずに息切れしてしまう企業が増える公算が大きい。

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