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厚底の次は「ピンなし」 短距離向け、桐生も愛用

2020/5/13 20:30
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陸上のシューズを巡って技術革新が起こっている。長距離界ではナイキの「厚底シューズ」が世界を席巻しているが、短距離界でも従来の概念を変えるスパイクが登場した。アシックスは靴底に金属製のピンを配置しない「メタスプリント」を開発。新型コロナウイルスの影響で4月中旬の国内発売を延期したが、中国や欧州では既に販売が始まっている。1年延期された東京五輪に向けて「ピンなし」が新たな常識として定着するかもしれない。

アシックスの次世代スプリントシューズは靴底に金属製のピンがない=同社提供

アシックスの次世代スプリントシューズは靴底に金属製のピンがない=同社提供

「ピンなし」シューズは「スパイクピンが地面に刺さる感覚がある」という大学生やトップ選手の声が契機となり、2015年に開発がスタートした。地面にピンが刺さってから抜けるまでの時間を短縮できれば速く走れるのではないか。開発チームの小塚祐也さんは「なぜピンがあるのか、という視点に立ち返った。機能はグリップするため。それができればピンもなくせるのではないかと考えた」と語る。

「メタスプリント」は強度が高いカーボンプレートを採用し、ピンの代わりに複雑な立体構造をしている。軽量化を実現し、直線やカーブ、スタート時や最高速度時で接地の仕方が変わっても対応できるように突起の高さや角度を工夫。エネルギーロスを減らし、推進力を高めた。

同社スポーツ工学研究所の実験では、従来の短距離用スパイクと比較して1秒あたり6.7センチ前に進めることが分かった。100メートル換算で0秒048優位に走れる計算だという。この次世代シューズを愛用しているのが、男子100メートルで9秒98の記録を持つ桐生祥秀(日本生命)だ。これまで改良を重ね、30~40足の試作を提供してきた。

つま先で蹴り出す動作をせず、足裏全体で地面を捉える桐生の走り方は「ピンなし」の効果を得やすく、19年のドーハ世界選手権でも着用した。現在のモデルは、よりフラットな形状にカスタマイズされていて「素早く路面に力を伝えることができるようになった」(小塚さん)。課題だった右脚が外側に流れる癖もなくなったという。

桐生もピンなしシューズを愛用する(昨年9月)

桐生もピンなしシューズを愛用する(昨年9月)

東京五輪が1年延期になったことで改良の余地が生まれた。桐生のモデルも「まだ完成形ではない」と小塚さん。今季用意したシューズは試合の中止で試せていないが、突起の形を微修正しているという。

桐生以外にも男子400メートルのウォルシュ・ジュリアン(富士通)や海外選手に提供、コンマ数秒を争うスプリンターの足元を支えている。今回の新技術を他の競技へ応用する考えもある。

国内での一般向けモデルの販売時期は新型コロナの状況を見ながらの判断になるが、「トップ選手から大学生まで普及させたい。ワクワクを多くの人に届けたい」(広報担当者)と準備を進める。開発当時から量産化を視野に入れていたという次世代の短距離シューズが選手たちに受け入れられるのか、注目される。

(渡辺岳史)

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