米政府系研究所長、経済再開急げば「制御不能リスク」
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【ワシントン=鳳山太成】トランプ米政権の新型コロナウイルス対策本部に加わる国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は12日、経済活動の再開を急げば「制御できない感染の急拡大を引き起こすリスクがある」と警告した。多くの州が感染者が多いまま行動制限の緩和に動くなか、連邦政府がまとめた経済再開の指針を順守するよう求めた。
議会上院の公聴会で中継映像を通じて証言した。行動制限を性急に緩めれば「回避できるはずの苦難や死につながるだけでなく、経済回復を遅らせる可能性もある」「とても深刻な結果が生じうる」と強調し、各州に慎重な判断を呼びかけた。
ファウチ氏は「チェックポイントを無視して経済再開を急ぎ、感染の急拡大につながることを懸念している」と語り、同氏らが4月中旬に策定した指針に従うよう地方政府に促した。「新規感染者が過去14日間で減少傾向にある」などの判断要件を満たさないまま、飲食店や小売店の営業を認める州が相次いでいる。
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楽観的な姿勢を貫くトランプ大統領と、医療政策の専門家らの温度差も際立った。ファウチ氏は「正しい方向に向かっているが、完全に制御できているわけではない」との認識を示し、検査体制のさらなる拡充を訴えた。共に証言した米疾病対策センター(CDC)のレッドフィールド所長も「まだ危機は脱していない」とクギを刺した。
ファウチ氏は新型コロナと確認されずに自宅で死亡する事例を挙げ米国の死者数は統計よりも「ほぼ確実に多いだろう」と指摘した。また2020年秋と見込まれる学校の再開までにワクチンや治療法を確立させるのは難しいと見通した。