ロシア、感染拡大下の工場再開 経済悪化で政権に焦り

2020/5/12 19:00
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プーチン氏は閣議で3月下旬から続く「非労働期間」を11日に終了すると宣言した(11日、モスクワ郊外)=ロイター

プーチン氏は閣議で3月下旬から続く「非労働期間」を11日に終了すると宣言した(11日、モスクワ郊外)=ロイター

【モスクワ=小川知世】新型コロナウイルスの感染拡大が続くロシアのプーチン大統領は11日、3月下旬から続く全土での「非労働期間」の終了を宣言した。感染者の5割が集中する首都モスクワでは12日、建設業や製造業が再開した。経済悪化に焦る政権は早期の経済活動の正常化を探るが、人の移動が激しくなれば感染拡大に拍車を掛けかねない。

「感染症との闘いの次の段階に進むことができる」。プーチン氏は11日のテレビ会議で、医療体制の強化で感染抑止に成果を上げたと強調した。感染対策として6週間実施した非労働期間を同日で終え、段階的に基幹産業の活動を再開する必要性を指摘した。12日以降は各地方の首長が感染状況に応じて、外出や企業活動の制限措置の緩和を決定すると説明した。

ロシアでは3月下旬にプーチン氏が打ち出した非労働期間にあわせて、モスクワなど全国各地で外出禁止措置がとられた。食品小売りや医療、軍事など認められた企業を除き、工場の稼働や店の営業を停止している。

モスクワではプーチン氏の決定に先駆け、いち早く建設業や製造業の再開を12日から認めると決めた。マンション建設や自動車関連の工場などが対象となり、従業員は50万人を超える。職場での社会的距離の確保やマスクと手袋の着用を義務付け、10%以上の従業員に定期的に新型コロナ検査をすることも定めた。

建設大手ピクは12日朝からモスクワで建設作業を再開すると発表した。1日に数回、現場や関連施設を消毒し、建設工程の遅れを早期に取り戻すとしている。流通網の混乱や一部の取引先の破産で、建設業や製造業の回復に時間がかかると指摘するアナリストもいるが、工場が多いほかの自治体でもモスクワにならって事業再開を認める動きが広がるとみられる。

ロシアでは1日1万人超の感染者数の増加が続いている(11日、病床が仮設されたモスクワの展示場)=ロイター

ロシアでは1日1万人超の感染者数の増加が続いている(11日、病床が仮設されたモスクワの展示場)=ロイター

感染者数の増加は鈍っていない。10日連続で新規感染者が1万人を超え、12日までに23万人と世界で米国に次いで多い水準になった。1日17万件と積極的な検査が背景にあり、早期発見で死亡率を1%未満に抑えていると政府は主張しているが、死因が新型コロナと処理されていないなどとして統計を疑う見方も出ている。

制限緩和に踏み切った背景には経済の打撃への警戒がある。ロシア中央銀行は4月、制限措置や原油など輸出品の価格下落で、2020年の国内総生産(GDP)の実質成長率が前年比マイナス4~6%に落ち込むと予測した。プーチン氏も失業者が140万人と4月初めから倍増したと明かし、「みな直ちに経済が正常化することに関心を持っている」と語った。

経済の悪化は政権への不満に直結しかねない。独立系調査機関の世論調査で、プーチン氏の4月の支持率は59%と00年の就任以来で最低となった。同氏は11日、子供がいる家庭への補助増額や、新型コロナの影響を受けた150万以上の企業を対象に第2四半期の付加価値税(VAT)を除く納税を免除するなどの追加支援策を次々と打ち出してみせた。

こうした対策で市民の不満が抑えられるかは見通せない。モスクワでは建設業などを再開する一方で、外出制限やサービス業の営業停止は5月末まで延長した。交通機関や商店でのマスクと手袋の着用を義務付け、違反者に4000ルーブル(約5800円)以上の罰金を科す。12日以降に厳しい制限の違反が増える恐れも指摘されている。さらなる感染拡大を招けば政権はいっそう苦境に立たされることになる。

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