キャンピングカーが休憩所 スタートアップが医療支援

日経ビジネス
2020/5/14 2:00
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キャンピングカーを過酷な環境で働き続ける医療従事者の休憩スペースに活用

キャンピングカーを過酷な環境で働き続ける医療従事者の休憩スペースに活用

日経ビジネス電子版

モビリティー系のスタートアップ企業による医療施設支援の取り組みが活発になっている。オフィスビルの隙間などで弁当を売る移動販売車「フードトラック」の事業を手掛けるMellow(メロウ、東京・千代田)は医療従事者向けに食事を提供するほか、車中泊事業を運営するCarstay(カーステイ、東京・新宿)は医療施設に休憩や診察目的で使用可能なキャンピングカーを派遣する。

これらの支援活動を支えるのがトヨタ自動車だ。トヨタグループで金融事業を統括するトヨタファイナンシャルサービス(TFS)と、定額サービスを提供するKINTO(名古屋市)が5月1日、両社への協賛を発表。活動資金の一部を拠出する。資金面でのサポートを足掛かりに、2社は活動をさらに加速させたい考えだ。

通常はオフィス街などで展開するフードトラックを医療施設に派遣する

通常はオフィス街などで展開するフードトラックを医療施設に派遣する

「フードトラック」や「キッチンカー」と呼ばれる移動販売車を、空きスペースを保有するビルオーナーとマッチングさせるサービスを手掛けるメロウ。全国850社の飲食事業者と提携しており、以前から「緊急時に食事提供のボランティアをしたいがどうすればいいか」という相談が一部の事業者から寄せられていたという。

そこで個別の事業者を組織し自治体などと連携するため、2019年9月に「フードトラック駆けつけ隊」を発足。現在、首都圏を中心に約190社が登録する。19年、台風15号による停電被害が深刻だった千葉県に事業者を派遣し、およそ4000食を提供した実績もある。

今回の支援活動では要望のあった医療施設1カ所につき、3~4台のフードトラックを派遣し、医療従事者に温かい食事を無償で提供する。昨年の停電時は提供期間が8日間だったのに比べ、今回は3カ月程度を想定。事業者のボランティア費用捻出が現実的な課題となるなか、食材費や移動費などの活動資金をTFSやKINTOが拠出することに決まった。

■医療従事者にパーソナル空間を

もう一方の、キャンピングカーのシェアリングサービスなどを手掛けるカーステイ。法人や個人からキャンピングカーを借り受け、医療施設に一定期間無償で貸し出す「バンシェルター」という取り組みを、4月23日から始めていた。宮下晃樹社長が、友人の研修医から「少しでもいいから病院と離れて休む場所が欲しい」「人員を増やしているためソファで寝ているスタッフもいる」といった現場の話を聞き、パーソナルな空間を提供しようと考えたのがきっかけだ。

川崎市立井田病院では、医師や看護師の休憩場所としてキャンピングカーが使われている

川崎市立井田病院では、医師や看護師の休憩場所としてキャンピングカーが使われている

4月10日から川崎市立井田病院の駐車場で、医療従事者の休憩場所として3台のキャンピングカーが活用されており、茨城県や埼玉県の医療施設にも提供済み。その後も医療機関から40~50件ほど問い合わせがあったものの、さらに多くの要望に応えていくには搬出搬入の費用や借り受ける際のレンタル費で1台当たり2万円が必要になる。

そのため、ほかのキャンピングカー事業者とクラウドファンディング上で資金を集めていた。約340万円集まったが、目標の1000万円にはまだ届いていない。不足分の一部をトヨタグループが捻出するほか、トヨタグループのネットワークを活用して医療機関に呼びかけられるPR効果も大きいという。

TFSは今年2月にメロウに出資している。KINTO社長も務めるTFSの小寺信也上級副社長がメロウの社外取締役に就任するなどつながりを強めていた。今回の協賛も、メロウとカーステイの2社がトヨタグループ側に話を持ち掛けたことがきっかけだ。

トヨタグループは、かねて医療現場支援を表明しており、防護マスクや医療衛生用品の生産、軽症の感染者移送などの支援に動いている。グループを挙げて支援に取り組みたいトヨタ側と、資金提供を受けて活動を活発化させたいスタートアップの思惑がピタリとはまり、支援活動が回りだした。

かゆいところに手が届くような細やかなサービスは、機動力と実行性のあるスタートアップの得意とするところ。今後、コロナ禍の対応に限らず、メロウとKINTOはサービスなどの連携を強めていく計画だという。スタートアップと大企業のこうしたコラボレーションは、モビリティーをサービス分野で活用するMaaS(マース)の実現に拍車を掛けていくことになるだろう。

(日経ビジネス 橋本真実)

[日経ビジネス電子版 2020年5月12日の記事を再構成]

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