経済再開相場の死角 景気悪化にも「第2波」
証券部 山下晃

2020/5/12 18:15

新型コロナウイルス収束後の経済再開をにらんだ相場が続くなか、さらにその後の「死角」を指摘する声が市場で出ている。各国の財政・金融政策と外出規制の解除により、目先の景況感は改善しそう。ただ痛んだ雇用や所得が回復して購買力が元通りになるまでには時間がかかり、ウイルスではなく景気悪化の「第2波」が訪れかねない。

12日の日経平均株価は4営業日ぶりに小幅反落したものの、前日終値を上回る場面もあり2万円台を維持した。2カ月間の上昇率は2割に達する。「二番底を警戒し、1万9000円前後でヘッジしてきた国内勢が急な上昇についていけず買い戻しを迫られている」(大手証券トレーダー)

投資家が戸惑うのは、普段とは違う今回の景気の谷の異質さだ。通常は「景気の底」を即座に見極めるのは難しく、株価も数年かけて下落基調を描く。今回はコロナまん延や、都市封鎖という政策が株価下落や経済指標悪化のきっかけ。封鎖解除が進むいま、「景気は4~6月が底」との見方から「先行きの改善に目線が移りやすい」(SMBC日興証券の圷正嗣氏)。

戸惑いは米エコノミックサプライズ指数からもみえる。同指数はエコノミストらによるマクロ統計の事前予想と実際の数値のかいりから算出する。足元はマイナス54程度と4月下旬の同144.6から急反発。実体は予想ほど悪くなっておらず、4月の米雇用統計も事前予想を上回るなど、市場予想比では景気指数は「改善」方向だ。

圷氏が注目するのは購買担当者景気指数(PMI)。封鎖が解除されれば事業心理を測るPMIが一気に改善する可能性があるとみる。経済再開のサインと捉え、投資先を探すマネーが株などリスク資産に流れ込む局面もあると指摘する。

このまま株価の上昇基調を描くシナリオには落とし穴もある。「今は少し日米株への投資を増やしたが、日経平均でみて200日移動平均線の少し下、2万0700円あたりで売るつもりだ」とマクロ系ヘッジファンドは明かす。目先で改善しても「景気悪化の第2波が訪れる」と予想する。

4月に米国の就業者は2050万人減り、うち4割弱は飲食や宿泊など外出規制が響いた業種に偏る。外出規制の緩和でこうした業種が被った痛みが最悪期から和らいでも、全体の購買力が元通りになるとは限らないという。米シカゴ・オプション取引所が算出し、極端な株安への「保険」を買うと上昇するスキュー指数も3月中旬の113付近から足元で130近くに上昇。投資家が急落への備えを固めていることを示す。

中小企業の苦境も市場に映し出されている。日経平均が年初来安値をつけた3月19日を100として指数化すると日経平均や米ダウ工業株30種平均の改善に比べ、銀行株は出遅れている。主に米国で展開するウェルズ・ファーゴは融資先の破綻リスクを拭えず、11日に3月の安値を下回る年初来安値をつけた。

岡三証券の高田創氏は「以前の危機にはマクロ環境の転換に伴い、大企業が直面した。今回は身近な中小が中心の生活・サービス産業を直撃する」と指摘する。株高と底をはう景況感の二極化が定着し「景況感が株式相場の調整を促す局面もある」という。ウイルスの感染再拡大の有無やその規模にかかわらず、投資家は経済再開後の景気の谷という「第2波」にも警戒すべきだ。

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