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コロナ不況下の銘柄選び 財務にも注目

決算を投資に生かす(上)

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休日の午後、筧家のリビングでは、良男と幸子がお茶を飲みながらくつろいでいます。その傍らで満だけはタブレット端末を操作したり、メモを取ったりとせわしない様子です。良男が立ち上がって、画面をのぞき込みました。

筧(かけい)家の家族構成筧幸子(48)良男の妻。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。筧良男(52)機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。筧恵(25)娘。旅行会社に勤める社会人3年目。筧満(15)息子。投資を勉強しながらジュニアNISAで運用中。

良男 何を見ているんだい。

 気になっていた企業の決算だよ。

良男 次の投資先選びというわけか。しかし、満にはちょっと難しいんじゃないか。

幸子 以前に勉強していたから大丈夫。投資する前にはしっかり調べないと。

 決算は企業のもうけや財務の状態を明らかにすることで、言ってみれば「成績表」。今は3月期の決算がたくさん発表されているんだ。

幸子 日本は会計上の年度末を3月末とする、3月期決算の企業が多いからね。トヨタ自動車ソニーNTTなどの有名企業もそうで、5月半ばまでに決算を発表するのがルール。今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で遅れる会社もあるようだけど。ちなみに3月の次に多い決算期はキヤノン花王などの12月。今は12月期の企業が1~3月期決算を発表するシーズンでもあるわね。

良男 うちの会社の経理部も毎年、大型連休の前は忙しそうにしているな。その汗の結晶が決算書というわけか。どれどれ満が見ているのは……。

 損益計算書。会社がもうかっているかが分かるんだ。

幸子 そうね。株式投資を考えるなら、まずは投資先の候補となる企業の売上高や利益の大きさの動向を知らないとね。決算期間中に製品を売ったりサービスを提供したりした対価の総額が売上高で、かかった費用を引いた残りが利益。

良男 利益っていくつも種類があるよなあ。

幸子 分かりやすいのが営業利益ね。売上高から製品の原材料費や、働く人の人件費などを引いたもので、本業でのもうけ。さらに支払利息や為替の変動による利益や損失など、本業以外の影響を反映したのが経常利益ね。

良男 ややこしいな。

幸子 利益はそれぞれの意味があるけど、投資家は最終的な利益である「純利益」を重視することが多いかも。例えば、大規模なリストラや持っていた資産の価値が大きく下がったときの損失、土地や株を売却したときの利益など、一時的な利益や損失なども反映されているの。

 一時的な利益や損失は特別利益、特別損失というんだよね。JR東日本はこの間発表した決算で、台風の被害による特別損失を計上していたよ。

良男 よく知っているなあ。

 エヘヘ。投資をするなら売上高や利益を伸ばしている会社にしなくちゃ。損益計算書は過去との比較も大事なんだよね。ただ……。

良男 どうした?

 今回の決算は利益を減らしている会社ばかりでね。今期の業績予想も「未定」が多いんだ。

幸子 確かに今は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で企業の業績が悪化しやすいわね。人が集まらないように、お店を休んだり営業時間を縮めたりしている小売りや外食などは、売上高が減って当然ともいえる。世界的に物流も滞っていて、海外から部品が調達できなくなり、自動車などの生産が減っているケースもあるみたい。

 お姉ちゃんも勤め先の旅行会社でキャンセルの対応が大変だったって言ってた。僕が注目していた会社も最終赤字になっちゃった。保有株の評価損を計上したって書いてあるけど、大丈夫かなあ。

幸子 貸借対照表は見たの?

 それが、読み方がよく分からなくて。

幸子 貸借対照表は決算期末時点の企業の財務の状況を示しているの。一般的には左半分に会社が持っている現預金や土地といった「資産」の額がそれぞれ書かれている。右半分には借入金など将来返済する「負債」と、資本金などの「純資産」ね。左右の合計額が同じになるから「バランスシート」とも呼ばれるの。

 どこから見たらいい?

幸子 基本的な指標は「自己資本比率」ね。純資産を総資産で割った値のことで財務の健全性を表すの。数字が大きい方が健全とされるわ。あと、景気が悪化しているときは現預金が注目されるわね。会社を続けるには家賃や光熱費、社員の給料などを払わなければならないでしょう。手元にお金がたくさんあれば借金に頼る必要がないから、将来の心配は少なくなる。

 なるほど。今は赤字でも、財務が健全なら将来の復活を期待できるというわけだね。

幸子 もちろん本業が回復するのが前提だけど。どれどれ……。この会社は現金が多くて借入金は少ない。まだ余裕がありそうね。

良男 キャッシュフロー計算書というのもあったような。

幸子 決算期の間にキャッシュ、つまり現金がどのくらい出入りしたかを示しているわ。少し難しくなるけど、損益計算書で利益が出ていても、実際には会社の現金が増えていないといったケースがあるの。会社の経営では現金がちゃんと入ってきているかが重要。例えば営業キャッシュフローは本業で現金をどれだけ増やしたかを示していて、一般的には赤字が続くと心配な状態とされるわ。

会計基準の違いに注意


公認会計士 田中靖浩さん
 企業は「会計基準」というルールに沿って決算書を作成します。国内の上場企業が採用している会計基準には日本基準、米国会計基準、国際会計基準といった種類があります。それぞれ決算書に記載する手法や言葉の定義などが異なります。例えば同じ「営業利益」でも会計基準が異なると、単純に比較ができない場合があります。また、決算書と別に「決算説明資料」を作成し、サイトなどで公開する企業もあります。図表を多用するなど詳しいデータや解説を加えたり、中期的な経営方針などを記したりしています。
 一方で、最近では決算書に表れない企業の価値も注目されています。例えば企業が保有する特許や技術者のスキルは決算書の数字には表れませんが、競争力を大きく左右する可能性があるためです。

(聞き手は三好理穂)

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