大鳴門橋、下に自転車道? 「新幹線通るまで」地元検討
とことん調査隊

関西タイムライン
2020/5/12 2:01
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兵庫県の淡路島と徳島県鳴門市を結ぶ全長約1.6キロメートルの大鳴門橋。よく見ると、上部の高速道に加え、下部にも空間を持つ2層構造だ。両県はこの道路下空間に自転車道を整備できないか検討を始めた。大鳴門橋開通から今年で35年。そもそも、この空間は何のためにあるのか。なぜ活用案が浮上しているのか。

自転車道計画は兵庫県が2018年度から累計1億3千万円の予算を計上し、徳島県と一緒に検討してきた。橋を管理する本州四国連絡高速道路(神戸市)に委託した重量増加の影響調査を19年に公表。道路下の未利用空間に幅4メートル(厚さ3センチ)のアスファルト舗装を施し、両端に高さ2.5メートルの防護柵を設けるなどと仮定。すると橋全体の耐風安定性に問題はなかった。今後はニーズ調査を進める。

なぜ遊歩道でなく、自転車道で結ぶのか。淡路島南端の南あわじ市に聞くと「四国の2市と連携したサイクリングツーリズムがきっかけです」(商工観光課)という。鳴門海峡を隔てる徳島県鳴門市と香川県東かがわ市の計3市は「ASAトライアングルサイクリングツーリズム」を16年から推進。自転車による地域振興を県などに訴えた。淡路交通(兵庫県洲本市)も淡路島と四国を結ぶ自転車輸送の支援を19年に始めている。

そもそも大鳴門橋に不要な下部空間をなぜ設けたのか。兵庫県高速道路推進室の鵜池泰一班長に尋ねると「新幹線を通せる鉄道併用橋だからです」と教えてくれた。兵庫県と徳島県を結ぶ神戸淡路鳴門自動車道の開通記念誌「夢の架け橋」を開くと、1973年の年表には「神戸・鳴門ルートは道路鉄道併用橋として着工決定」と確かにある。大阪―淡路―四国―大分を結ぶ壮大な計画だった。

しかし98年開通の明石海峡大橋は道路単独の橋だ。鉄道は通せない。四国新幹線の構想はついえたのだろうか。鵜池班長は「別ルートも検討できる。自転車道はあくまでも暫定利用だ」と強調する。

では四国新幹線の実現性はどのくらいか。国土交通省幹線鉄道課に聞くと「四国新幹線の基本計画はあるが、構想にとどまっている」。国は全国の幹線鉄道ネットワークを検討する費用を4年連続で盛り込んでいるが、四国地域での具体的な進展はない。

検討できる鉄道代替ルートはあるのか。交通計画に詳しい大阪産業大学の波床正敏教授に聞くと「明石海峡か紀淡海峡に新幹線が通れるトンネルか橋を通す」方法があるという。ただ国などによる紀淡海峡のルート調査は10年以上も実施されていないようだ。

鉄道を通す可能性が少しでも残るなら自転車道整備は新幹線誘致の足かせにならないか。波床教授は「どんなに早くても計画に数年以上、工事に10年くらいかかる。暫定的な活用は問題ない」と話す。

四国側の反応はどうか。経済界などでつくる四国新幹線整備促進期成会(2017年発足)は四国新幹線の実現を国に要望している。しかし実現性の高いルートとして挙げるのは岡山―香川を結ぶ瀬戸大橋ルートだという。四国経済連合会の石原俊輔特任理事は「瀬戸大橋は新幹線仕様で設計され、運行試験も実施した。宝の持ち腐れになっている」。海底トンネルを設ける鳴門ルートと比べ現実的だとする民間試算もある。

大鳴門橋の鉄道空間が当面使われない――ならば、活用しない手はないのだろう。すでに徳島県は一部の鉄道空間(約450メートル)を遊歩道「渦の道」に整備。00年以来、渦潮観賞の場所として人気だ。

淡路島でも1周約150キロメートルを自転車で走る通称「アワイチ」が近年好評だ。南あわじ市は自転車道整備で「アワイチから淡路島と四国、本州を結ぶ『セトイチ』を目指す」と話す。現実的な考えだと納得した。(沖永翔也)

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