豪メディア捜索の合法性、司法判断分かれる 報道の自由に影

2020/5/11 16:55
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【シドニー=松本史】オーストラリアで2019年、連邦警察が公共放送ABC本部と新聞記者の自宅を相次ぎ家宅捜索した問題で、それぞれの捜索令状の有効性を巡り、司法の判断が分かれている。共に機密情報の漏洩を巡る捜査だったが、令状は公共放送に対しては有効、記者宅へは無効とされた。豪主要メディアはいずれの家宅捜索も報道の自由の侵害にあたると批判している。

2019年6月、ABC本部を出る連邦警察の捜査官=AAP

豪連邦最高裁は4月中旬、警察がニューズ・コープ・オーストラリアの記者宅を捜索したことについて、捜索令状は無効だと判断した。報道によると、記者の違法行為の内容を具体的に示していなかったことが理由だ。

ニューズ社が発行するサンデー・テレグラフ紙は18年4月、豪政府が情報機関に市民監視の権限拡大を認める方向で検討していると報じた。警察は19年6月になって、キャンベラの記者宅でスマホに保存されていた情報をUSBにコピーし、押収した。

一方、同じ時期にシドニーの本部を捜索されたABCが提訴した裁判では2月、連邦裁が令状の発付経緯に問題はなく「令状は有効」との判断を下した。ABCのデビッド・アンダーソン社長は「裁判で争って悪法を抜本的に改革できるとは思えない」と述べ、上訴断念を発表。情報提供者の保護などのため法改正を求める考えを表明した。

ABCは17年、アフガニスタンに派遣された豪特殊部隊が子どもを含む非武装の民間人を違法に殺害した疑いがあると報じた。報道は国防関係者から入手した機密情報に基づき、情報提供者はすでに起訴された。

豪メディアの多くはいずれの捜索も報道の自由の侵害だと批判。19年10月には有力紙「オーストラリアン」をはじめ主要紙が一斉に1面の大半を黒塗りにした新聞を発行し、抗議を表明した。

国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」による世界各国の報道自由度ランキング(20年)で豪州は26位と、日本(66位)や米国(45位)を上回る。だが、4月15日の最高裁判決を受け、自宅を捜索された記者は「捜査は続いている。(判決は)小さな勝利で、問題の収束にはほど遠い」と述べた。

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